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出来る事と出来ない事
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「あら、もう戻ってしまったのね」
バヨネッタさんは、周囲の風景が真っ白に戻った事を残念がるように、辺りを見渡しているが、
「勘弁してください。これ以上は本当に死ぬので」
俺は『有頂天』も解除して、へとへとで地面に突っ伏している。
「流石にあの規模を、個人で長時間維持するのは、無理があるか」
とバヨネッタさんも納得してくれた。
『何があったんですか?』
そこに天からオルさんの声が降ってきた。
「そちらからは観測出来なかったの?」
とバヨネッタさんは何もない空を見上げながら、オルさんに尋ねる。
『こちらからは、『清浄星』が光を発したと思ったら、光に包まれた二人の姿が消えて、後には『清浄星』だけが浮かんでいました』
オルさんの答えに、バヨネッタさんが、どう言う事? とこちらを見遣る。
「実際に俺たちは『清浄星』と言う別空間に入り込んでいた。と言うのがゼラン仙者の見解です」
「あの外道仙者の」
俺はうつ伏せのまま返事をする。
「はい。どうやら『聖結界』の上位版のようなもののようです。『絶結界』に近いと言った方が良いでしょうか。結界の内外を完全に隔てるので、どうやっても干渉出来なくなるようですね」
「ふ~ん。規模の大きな『絶結界』と捉えた方が良いのかしら。でも無防備過ぎない? 『清浄星』はハルアキの命と同義なのでしょう? それなのに、能力使用中は結界の外に無防備にその姿を晒したままになるのよ?」
「多分、問題ありません。この『清浄星』の内部に降り立つ能力を使用中は、外の『清浄星』には触れる事が出来なかった。と皆が証言していますから」
納得してくれたのか、バヨネッタさんは何度か頷いている。
『ハルアキくん、質問して良いかな?』
「はい、なんでしょう? オルさん」
俺は仰向けになってオルさんに応える。
『『清浄星』には、外の人間や物を、その中に取り込む能力があるようだけど、逆に、『清浄星』の中の物を外に出す事って可能なのかな?』
「言いたい事は分かります。どうやら俺の『清塩』は、この『清浄星』から取り出されているらしいです」
『やっぱりか』
オルさんもその可能性に気付いていたようだ。
「他にも、聖属性の付与されている水や土なんかも取り出せます」
「ずいぶん便利な能力ね」
バヨネッタさんが呆れたようにそう口にする。
「ははは。水やら塩程度なら、『有頂天』状態じゃなくても難なく取り出せるんですけど、比重なのか何なのか、貴金属なんかは相当魔力使うんですよ。多分、バヨネッタさんの『金剛』や『黄金化』の方が、魔力の使用量は少ないと思います」
「何でも出来る分、特化しているものと比べて、コストが掛かるのね」
俺はバヨネッタさんの意見に首肯で返した。
『星なら、その中で植物や動物を育てたり出来ないのかい?』
オルさんの期待のこもった声に、しかし俺は首を横に振るう。
「現状では難しいですね。まだ出来たての星ですから。生命を育むには、俺のレベルが低過ぎるみたいで」
『そうかい』
オルさんの声が残念さを物語っていた。
「そもそも、三分しかいられないのなら、その中で生物を育てられないでしょう」
そうなのだ。でも、
「空気のある惑星ですし、地形を変える事が出来ますから、内部の時間を加速させたり、逆に停止させたりして、一定の生育環境を維持出来るようになる可能性はあるかも。とはシンヤと話していました」
「可能性、ねえ。なくはない。くらいでしょうけど。それにしても、良くその中に飛び込もうと考えたわね?」
「あはは。元々、ゼラン仙者のところで、罠魔導具に聖属性を付与していた時に色々やっていて気付いたんです。どうやらこのギフトはとんでもない。と」
「そうね。人類が生存可能な世界を生み出せるのだとしたら、それは私たちが相対する今世の魔王たちが欲する能力だもの」
きっとバヨネッタさんが言う通りなのだろう。が、
「魔王たちでも扱いきれるものではないでしょうけど」
俺は上半身を起こして答えた。
「何故? 『清浄星』が聖属性だから?」
「それもありますけど、コストの問題です。今みたいに小さな状態の『清浄星』は、出していてもそれ程コストは掛かりません。ですが、中に居続けるには相当なLPを消費するんです。聖属性の特性なのか、異物を外に弾き飛ばす性質があるらしく、魔王たちだって中に居続けるのは難しいと思いますよ。それこそ、世界人口全てを使い潰すくらい魔力を消費する事になるんじゃないかと」
「成程」
と俺の説明に腕を組むバヨネッタさん。
「と言う事は、ハルアキのお友達であるトモノリが説明した、二つの世界の人類を新世界へ連れて行く。と言う話の方が、魔王が採用する方向性としては妥当なのね」
「ですねえ。向こうは勇者のコンソールを使う訳ですし、二つの世界を統合する訳ですから、使える魔力量も二倍です。それなら俺の『清浄星』をどうにかするより、世界運営もし易いでしょう」
首肯するバヨネッタさん。
「にしても、面白い能力ね。瞬間的な能力の上限は、私が用意したサングリッター・スローンを超えていると言っても過言じゃないわ」
バヨネッタさんは、俺の頭上でふよふよ浮かんでいる『清浄星』を、しげしげと見詰めていた。
「ははは。俺のレベルが低くて、まだまだ燃費悪いんですけどね。可能性は感じています」
と俺は『空間庫』からポーションを取り出して呷った。『有頂天』を解除してあるので、LPはHPとMPに戻っている。この場合、減ったLPは等分されてHPとMPに分けられるのだが、俺の場合は『魔力回復』のスキルがあるので、MPの回復が早く、HPは自然回復しないので、ポーションが重要になってくる。ああ、『回復』があった頃が懐かしい。
「ポーションもそうだけど、有事に備えてマナポーションも用意しておけば良かったかなあ」
俺がそんな事をポロッと口にすると、バヨネッタさんが目を見開いて固まっている。
「ハルアキ、その名前をどこで?」
「その名前? マナポーションの事ですか?」
「そうよ! まさか持っているの!?」
「いえ」
と俺が頭を横に振るうと、バヨネッタさんがガックリと項垂れる。
「そんなに欲しかったんですか?」
「欲しいとか欲しくないとかの話じゃないの! 伝説の代物なのよ! この世に存在しないのよ!」
え? そうだったの?
バヨネッタさんは、周囲の風景が真っ白に戻った事を残念がるように、辺りを見渡しているが、
「勘弁してください。これ以上は本当に死ぬので」
俺は『有頂天』も解除して、へとへとで地面に突っ伏している。
「流石にあの規模を、個人で長時間維持するのは、無理があるか」
とバヨネッタさんも納得してくれた。
『何があったんですか?』
そこに天からオルさんの声が降ってきた。
「そちらからは観測出来なかったの?」
とバヨネッタさんは何もない空を見上げながら、オルさんに尋ねる。
『こちらからは、『清浄星』が光を発したと思ったら、光に包まれた二人の姿が消えて、後には『清浄星』だけが浮かんでいました』
オルさんの答えに、バヨネッタさんが、どう言う事? とこちらを見遣る。
「実際に俺たちは『清浄星』と言う別空間に入り込んでいた。と言うのがゼラン仙者の見解です」
「あの外道仙者の」
俺はうつ伏せのまま返事をする。
「はい。どうやら『聖結界』の上位版のようなもののようです。『絶結界』に近いと言った方が良いでしょうか。結界の内外を完全に隔てるので、どうやっても干渉出来なくなるようですね」
「ふ~ん。規模の大きな『絶結界』と捉えた方が良いのかしら。でも無防備過ぎない? 『清浄星』はハルアキの命と同義なのでしょう? それなのに、能力使用中は結界の外に無防備にその姿を晒したままになるのよ?」
「多分、問題ありません。この『清浄星』の内部に降り立つ能力を使用中は、外の『清浄星』には触れる事が出来なかった。と皆が証言していますから」
納得してくれたのか、バヨネッタさんは何度か頷いている。
『ハルアキくん、質問して良いかな?』
「はい、なんでしょう? オルさん」
俺は仰向けになってオルさんに応える。
『『清浄星』には、外の人間や物を、その中に取り込む能力があるようだけど、逆に、『清浄星』の中の物を外に出す事って可能なのかな?』
「言いたい事は分かります。どうやら俺の『清塩』は、この『清浄星』から取り出されているらしいです」
『やっぱりか』
オルさんもその可能性に気付いていたようだ。
「他にも、聖属性の付与されている水や土なんかも取り出せます」
「ずいぶん便利な能力ね」
バヨネッタさんが呆れたようにそう口にする。
「ははは。水やら塩程度なら、『有頂天』状態じゃなくても難なく取り出せるんですけど、比重なのか何なのか、貴金属なんかは相当魔力使うんですよ。多分、バヨネッタさんの『金剛』や『黄金化』の方が、魔力の使用量は少ないと思います」
「何でも出来る分、特化しているものと比べて、コストが掛かるのね」
俺はバヨネッタさんの意見に首肯で返した。
『星なら、その中で植物や動物を育てたり出来ないのかい?』
オルさんの期待のこもった声に、しかし俺は首を横に振るう。
「現状では難しいですね。まだ出来たての星ですから。生命を育むには、俺のレベルが低過ぎるみたいで」
『そうかい』
オルさんの声が残念さを物語っていた。
「そもそも、三分しかいられないのなら、その中で生物を育てられないでしょう」
そうなのだ。でも、
「空気のある惑星ですし、地形を変える事が出来ますから、内部の時間を加速させたり、逆に停止させたりして、一定の生育環境を維持出来るようになる可能性はあるかも。とはシンヤと話していました」
「可能性、ねえ。なくはない。くらいでしょうけど。それにしても、良くその中に飛び込もうと考えたわね?」
「あはは。元々、ゼラン仙者のところで、罠魔導具に聖属性を付与していた時に色々やっていて気付いたんです。どうやらこのギフトはとんでもない。と」
「そうね。人類が生存可能な世界を生み出せるのだとしたら、それは私たちが相対する今世の魔王たちが欲する能力だもの」
きっとバヨネッタさんが言う通りなのだろう。が、
「魔王たちでも扱いきれるものではないでしょうけど」
俺は上半身を起こして答えた。
「何故? 『清浄星』が聖属性だから?」
「それもありますけど、コストの問題です。今みたいに小さな状態の『清浄星』は、出していてもそれ程コストは掛かりません。ですが、中に居続けるには相当なLPを消費するんです。聖属性の特性なのか、異物を外に弾き飛ばす性質があるらしく、魔王たちだって中に居続けるのは難しいと思いますよ。それこそ、世界人口全てを使い潰すくらい魔力を消費する事になるんじゃないかと」
「成程」
と俺の説明に腕を組むバヨネッタさん。
「と言う事は、ハルアキのお友達であるトモノリが説明した、二つの世界の人類を新世界へ連れて行く。と言う話の方が、魔王が採用する方向性としては妥当なのね」
「ですねえ。向こうは勇者のコンソールを使う訳ですし、二つの世界を統合する訳ですから、使える魔力量も二倍です。それなら俺の『清浄星』をどうにかするより、世界運営もし易いでしょう」
首肯するバヨネッタさん。
「にしても、面白い能力ね。瞬間的な能力の上限は、私が用意したサングリッター・スローンを超えていると言っても過言じゃないわ」
バヨネッタさんは、俺の頭上でふよふよ浮かんでいる『清浄星』を、しげしげと見詰めていた。
「ははは。俺のレベルが低くて、まだまだ燃費悪いんですけどね。可能性は感じています」
と俺は『空間庫』からポーションを取り出して呷った。『有頂天』を解除してあるので、LPはHPとMPに戻っている。この場合、減ったLPは等分されてHPとMPに分けられるのだが、俺の場合は『魔力回復』のスキルがあるので、MPの回復が早く、HPは自然回復しないので、ポーションが重要になってくる。ああ、『回復』があった頃が懐かしい。
「ポーションもそうだけど、有事に備えてマナポーションも用意しておけば良かったかなあ」
俺がそんな事をポロッと口にすると、バヨネッタさんが目を見開いて固まっている。
「ハルアキ、その名前をどこで?」
「その名前? マナポーションの事ですか?」
「そうよ! まさか持っているの!?」
「いえ」
と俺が頭を横に振るうと、バヨネッタさんがガックリと項垂れる。
「そんなに欲しかったんですか?」
「欲しいとか欲しくないとかの話じゃないの! 伝説の代物なのよ! この世に存在しないのよ!」
え? そうだったの?
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