410 / 642
ショップ
しおりを挟む
目が覚めると、知らない場所にいた。当然か。そこは明るいようで暗いようで、白いようで黒いようで、広いようで狭いような、表現に困る場所だった。
(アニン)
腹をさする。しかしアニンからの返答はなく、その存在も感知出来なかった。
(一人か)
茫洋とした空間に一人で投げ出され、たまらず心細さを感じる。しかし、そんな事に囚われている場合ではない。七日の内に有頂天を修得しなければならないのだ。
「良し!」
気合いを入れ直し、両拳を握る。と、
『ようこそ、いらっしゃいませ』
いきなり、全方向から言葉が響いた。俺は、何事か!? と辺りを見回すも人影はない。などと思って首を戻したところで、俺の前方に濃紺のパンツスーツを着た女性が立っていた。腰まである髪はプラチナで緩く波打ち、顔立ちはゴージャスな美人。瞳の色は青緑だ。
「…………どちら様で?」
警戒して身構えるも、現在の俺は魔力を使い果たし、アニンもいない身だ。何が出来ると言う事もない。それでも警戒は解かなかった。
「この度は、Play The Philosopher 4Dの上位ユーザー様限定ショップをご利用頂き、ありがとうございます。私はこのショップのオーナーをさせて頂いている者でございます」
眼前の女性はそう言うと深々と頭を垂れた。
「…………はあ?」
Play The Philosopher 4D限定ショップ? 何かの冗談か? それにしては性質が悪い。本当だと言うなら更に性質が悪い。つまり俺たちがいる世界は、トモノリたちが遊んでいた Play The Philosopher の4D版だと言う事か。まあ、可能性としては考えていた事実だ。この世界がゲームの中だと言うなら、そのゲームにはタイトルが存在するはず。そしてそのタイトルで可能性があるのは、トモノリを魔王に変えたあのゲームが怪しいと。
「いくつか、質問させて頂いても良いですか?」
「もちろんです。なんなりと質問頂いて結構です。答えられる範囲でお答えします」
答えられる範囲、でね。
「ここはどこですか?」
「Play The Philosopher 4Dの上位ユーザー限定ショップです」
どこにあるか聞いたんだけど。まあ、俺たちがいる世界とは別の世界かなあ。
「その、上位ユーザーって言うのは?」
「Play The Philosopher には、各ユーザーにイベント達成度と言うものが存在しております。その達成度が上位2パーセントに入っている方を、上位ユーザーと呼ばせて頂いております」
はあ、イベント達成度? しかも上位2パーセントって、メンサかよ。それは何を持ってイベント達成としていると言うのか。まあ、ユーザーには知らされないだろうなあ。
「と言うか、俺はそちらが想定するユーザーではなく、どちらかと言うとNPCなのでは?」
「運営の意向で、プレイヤー、ノンプレイヤー関係なく、この世界に存在する知的生命体は、全てユーザーと言う事となっております」
ふーん。まあ、カロエルの塔でもそんな話をしたが、概ねその通りって事かな?
「で、あなたはこのショップの店員さん?」
「どのように捉えられましても構いません。この姿や行動はユーザー名、工藤春秋様のイメージを元に具現化されたものです」
こんなスーツを着た金髪女性を、なんで俺は想像したんだろう? スーツじゃなく、古代ギリシアのゆったりした服を着ていれば、女神と言っても差し支えないが。…………え?
「め、女神様?」
「そのように呼ばれる事もあります」
マジかー。え? マジで女神なのか?
「この世界って、女神が生み出したものなの?」
「そこはユーザー様のイメージによります。ハルアキ様の考えるイメージに引っ張られ、私はこのような姿形で具現化しておりますので」
成程。
「じゃあ、シンヤやリットーさんは、また別の姿をしたあなたに会っていると?」
「申し訳ありません。他ユーザー様の情報をお教えする事は、規約上許されておりません」
それはそうか。まあ、そこは向こうに戻った時に尋ねれば良いかな。
「で、限定ショップって事だけど、何を売っているんですか?」
って言うか、俺はここに有頂天を修得しにきたはずなんだけど。
「ギフト、スキル、プレイヤースキル、ステータス、種族、アイテム、様々です」
と女神の横に、ステータス画面のようなものが浮かび上がる。ステータス画面、初めて見たかも。
「へえ、色々あるんだなあ。って言うか多過ぎ。スクロールしてもしても終わらん。あ、『空識』がある。一つしかないレアスキルなんかも選べるのか」
「ここになくても、おっしゃって頂ければ、この場で作成してお渡しする事も可能です」
へえ。それは凄い。成程、ゼラン仙者が、有頂天に至れば何でも出来るようになる。と言っていたのも頷ける。
「えっと、有頂天? セクシーマン? ってありますか?」
「ございますよ」
女神が画面をスクロールすると、セクシーマン(有頂天)と言う項目が現れた。その横に、500000との数字が書かれている。値段だろうか? 単位が分からない。
「この、五十万って、単位はなんですか?」
「命秒です」
「メイビョウ?」
「命の時間です」
命の時間。五十万秒だと五日以上六日未満だな。成程、理解した。確かこの空間にいられるのが最大で七日。そのうちの秒数って事か。もしも人生の秒数から換算するなら、五十万秒は少な過ぎる。
「ここって、一つしか買えないんですか?」
「いいえ。複数お買い上げなさるユーザー様もおられます」
「ここへは一度しか来られないんですか?」
「いいえ。ですが同じ方法でお越し頂けるのは、一度だけです」
成程、これは本当に地仙法、天仙法がありそうだな。
「とりあえず、有頂天をください」
「お買い上げ、ありがとうございます。早速にインストールなされますか?」
「あ、はい」
答えた瞬間、俺の全身が光に包まれた。
(アニン)
腹をさする。しかしアニンからの返答はなく、その存在も感知出来なかった。
(一人か)
茫洋とした空間に一人で投げ出され、たまらず心細さを感じる。しかし、そんな事に囚われている場合ではない。七日の内に有頂天を修得しなければならないのだ。
「良し!」
気合いを入れ直し、両拳を握る。と、
『ようこそ、いらっしゃいませ』
いきなり、全方向から言葉が響いた。俺は、何事か!? と辺りを見回すも人影はない。などと思って首を戻したところで、俺の前方に濃紺のパンツスーツを着た女性が立っていた。腰まである髪はプラチナで緩く波打ち、顔立ちはゴージャスな美人。瞳の色は青緑だ。
「…………どちら様で?」
警戒して身構えるも、現在の俺は魔力を使い果たし、アニンもいない身だ。何が出来ると言う事もない。それでも警戒は解かなかった。
「この度は、Play The Philosopher 4Dの上位ユーザー様限定ショップをご利用頂き、ありがとうございます。私はこのショップのオーナーをさせて頂いている者でございます」
眼前の女性はそう言うと深々と頭を垂れた。
「…………はあ?」
Play The Philosopher 4D限定ショップ? 何かの冗談か? それにしては性質が悪い。本当だと言うなら更に性質が悪い。つまり俺たちがいる世界は、トモノリたちが遊んでいた Play The Philosopher の4D版だと言う事か。まあ、可能性としては考えていた事実だ。この世界がゲームの中だと言うなら、そのゲームにはタイトルが存在するはず。そしてそのタイトルで可能性があるのは、トモノリを魔王に変えたあのゲームが怪しいと。
「いくつか、質問させて頂いても良いですか?」
「もちろんです。なんなりと質問頂いて結構です。答えられる範囲でお答えします」
答えられる範囲、でね。
「ここはどこですか?」
「Play The Philosopher 4Dの上位ユーザー限定ショップです」
どこにあるか聞いたんだけど。まあ、俺たちがいる世界とは別の世界かなあ。
「その、上位ユーザーって言うのは?」
「Play The Philosopher には、各ユーザーにイベント達成度と言うものが存在しております。その達成度が上位2パーセントに入っている方を、上位ユーザーと呼ばせて頂いております」
はあ、イベント達成度? しかも上位2パーセントって、メンサかよ。それは何を持ってイベント達成としていると言うのか。まあ、ユーザーには知らされないだろうなあ。
「と言うか、俺はそちらが想定するユーザーではなく、どちらかと言うとNPCなのでは?」
「運営の意向で、プレイヤー、ノンプレイヤー関係なく、この世界に存在する知的生命体は、全てユーザーと言う事となっております」
ふーん。まあ、カロエルの塔でもそんな話をしたが、概ねその通りって事かな?
「で、あなたはこのショップの店員さん?」
「どのように捉えられましても構いません。この姿や行動はユーザー名、工藤春秋様のイメージを元に具現化されたものです」
こんなスーツを着た金髪女性を、なんで俺は想像したんだろう? スーツじゃなく、古代ギリシアのゆったりした服を着ていれば、女神と言っても差し支えないが。…………え?
「め、女神様?」
「そのように呼ばれる事もあります」
マジかー。え? マジで女神なのか?
「この世界って、女神が生み出したものなの?」
「そこはユーザー様のイメージによります。ハルアキ様の考えるイメージに引っ張られ、私はこのような姿形で具現化しておりますので」
成程。
「じゃあ、シンヤやリットーさんは、また別の姿をしたあなたに会っていると?」
「申し訳ありません。他ユーザー様の情報をお教えする事は、規約上許されておりません」
それはそうか。まあ、そこは向こうに戻った時に尋ねれば良いかな。
「で、限定ショップって事だけど、何を売っているんですか?」
って言うか、俺はここに有頂天を修得しにきたはずなんだけど。
「ギフト、スキル、プレイヤースキル、ステータス、種族、アイテム、様々です」
と女神の横に、ステータス画面のようなものが浮かび上がる。ステータス画面、初めて見たかも。
「へえ、色々あるんだなあ。って言うか多過ぎ。スクロールしてもしても終わらん。あ、『空識』がある。一つしかないレアスキルなんかも選べるのか」
「ここになくても、おっしゃって頂ければ、この場で作成してお渡しする事も可能です」
へえ。それは凄い。成程、ゼラン仙者が、有頂天に至れば何でも出来るようになる。と言っていたのも頷ける。
「えっと、有頂天? セクシーマン? ってありますか?」
「ございますよ」
女神が画面をスクロールすると、セクシーマン(有頂天)と言う項目が現れた。その横に、500000との数字が書かれている。値段だろうか? 単位が分からない。
「この、五十万って、単位はなんですか?」
「命秒です」
「メイビョウ?」
「命の時間です」
命の時間。五十万秒だと五日以上六日未満だな。成程、理解した。確かこの空間にいられるのが最大で七日。そのうちの秒数って事か。もしも人生の秒数から換算するなら、五十万秒は少な過ぎる。
「ここって、一つしか買えないんですか?」
「いいえ。複数お買い上げなさるユーザー様もおられます」
「ここへは一度しか来られないんですか?」
「いいえ。ですが同じ方法でお越し頂けるのは、一度だけです」
成程、これは本当に地仙法、天仙法がありそうだな。
「とりあえず、有頂天をください」
「お買い上げ、ありがとうございます。早速にインストールなされますか?」
「あ、はい」
答えた瞬間、俺の全身が光に包まれた。
0
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる