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目が覚めると、知らない場所にいた。当然か。そこは明るいようで暗いようで、白いようで黒いようで、広いようで狭いような、表現に困る場所だった。
(アニン)
腹をさする。しかしアニンからの返答はなく、その存在も感知出来なかった。
(一人か)
茫洋とした空間に一人で投げ出され、たまらず心細さを感じる。しかし、そんな事に囚われている場合ではない。七日の内に有頂天を修得しなければならないのだ。
「良し!」
気合いを入れ直し、両拳を握る。と、
『ようこそ、いらっしゃいませ』
いきなり、全方向から言葉が響いた。俺は、何事か!? と辺りを見回すも人影はない。などと思って首を戻したところで、俺の前方に濃紺のパンツスーツを着た女性が立っていた。腰まである髪はプラチナで緩く波打ち、顔立ちはゴージャスな美人。瞳の色は青緑だ。
「…………どちら様で?」
警戒して身構えるも、現在の俺は魔力を使い果たし、アニンもいない身だ。何が出来ると言う事もない。それでも警戒は解かなかった。
「この度は、Play The Philosopher 4Dの上位ユーザー様限定ショップをご利用頂き、ありがとうございます。私はこのショップのオーナーをさせて頂いている者でございます」
眼前の女性はそう言うと深々と頭を垂れた。
「…………はあ?」
Play The Philosopher 4D限定ショップ? 何かの冗談か? それにしては性質が悪い。本当だと言うなら更に性質が悪い。つまり俺たちがいる世界は、トモノリたちが遊んでいた Play The Philosopher の4D版だと言う事か。まあ、可能性としては考えていた事実だ。この世界がゲームの中だと言うなら、そのゲームにはタイトルが存在するはず。そしてそのタイトルで可能性があるのは、トモノリを魔王に変えたあのゲームが怪しいと。
「いくつか、質問させて頂いても良いですか?」
「もちろんです。なんなりと質問頂いて結構です。答えられる範囲でお答えします」
答えられる範囲、でね。
「ここはどこですか?」
「Play The Philosopher 4Dの上位ユーザー限定ショップです」
どこにあるか聞いたんだけど。まあ、俺たちがいる世界とは別の世界かなあ。
「その、上位ユーザーって言うのは?」
「Play The Philosopher には、各ユーザーにイベント達成度と言うものが存在しております。その達成度が上位2パーセントに入っている方を、上位ユーザーと呼ばせて頂いております」
はあ、イベント達成度? しかも上位2パーセントって、メンサかよ。それは何を持ってイベント達成としていると言うのか。まあ、ユーザーには知らされないだろうなあ。
「と言うか、俺はそちらが想定するユーザーではなく、どちらかと言うとNPCなのでは?」
「運営の意向で、プレイヤー、ノンプレイヤー関係なく、この世界に存在する知的生命体は、全てユーザーと言う事となっております」
ふーん。まあ、カロエルの塔でもそんな話をしたが、概ねその通りって事かな?
「で、あなたはこのショップの店員さん?」
「どのように捉えられましても構いません。この姿や行動はユーザー名、工藤春秋様のイメージを元に具現化されたものです」
こんなスーツを着た金髪女性を、なんで俺は想像したんだろう? スーツじゃなく、古代ギリシアのゆったりした服を着ていれば、女神と言っても差し支えないが。…………え?
「め、女神様?」
「そのように呼ばれる事もあります」
マジかー。え? マジで女神なのか?
「この世界って、女神が生み出したものなの?」
「そこはユーザー様のイメージによります。ハルアキ様の考えるイメージに引っ張られ、私はこのような姿形で具現化しておりますので」
成程。
「じゃあ、シンヤやリットーさんは、また別の姿をしたあなたに会っていると?」
「申し訳ありません。他ユーザー様の情報をお教えする事は、規約上許されておりません」
それはそうか。まあ、そこは向こうに戻った時に尋ねれば良いかな。
「で、限定ショップって事だけど、何を売っているんですか?」
って言うか、俺はここに有頂天を修得しにきたはずなんだけど。
「ギフト、スキル、プレイヤースキル、ステータス、種族、アイテム、様々です」
と女神の横に、ステータス画面のようなものが浮かび上がる。ステータス画面、初めて見たかも。
「へえ、色々あるんだなあ。って言うか多過ぎ。スクロールしてもしても終わらん。あ、『空識』がある。一つしかないレアスキルなんかも選べるのか」
「ここになくても、おっしゃって頂ければ、この場で作成してお渡しする事も可能です」
へえ。それは凄い。成程、ゼラン仙者が、有頂天に至れば何でも出来るようになる。と言っていたのも頷ける。
「えっと、有頂天? セクシーマン? ってありますか?」
「ございますよ」
女神が画面をスクロールすると、セクシーマン(有頂天)と言う項目が現れた。その横に、500000との数字が書かれている。値段だろうか? 単位が分からない。
「この、五十万って、単位はなんですか?」
「命秒です」
「メイビョウ?」
「命の時間です」
命の時間。五十万秒だと五日以上六日未満だな。成程、理解した。確かこの空間にいられるのが最大で七日。そのうちの秒数って事か。もしも人生の秒数から換算するなら、五十万秒は少な過ぎる。
「ここって、一つしか買えないんですか?」
「いいえ。複数お買い上げなさるユーザー様もおられます」
「ここへは一度しか来られないんですか?」
「いいえ。ですが同じ方法でお越し頂けるのは、一度だけです」
成程、これは本当に地仙法、天仙法がありそうだな。
「とりあえず、有頂天をください」
「お買い上げ、ありがとうございます。早速にインストールなされますか?」
「あ、はい」
答えた瞬間、俺の全身が光に包まれた。
(アニン)
腹をさする。しかしアニンからの返答はなく、その存在も感知出来なかった。
(一人か)
茫洋とした空間に一人で投げ出され、たまらず心細さを感じる。しかし、そんな事に囚われている場合ではない。七日の内に有頂天を修得しなければならないのだ。
「良し!」
気合いを入れ直し、両拳を握る。と、
『ようこそ、いらっしゃいませ』
いきなり、全方向から言葉が響いた。俺は、何事か!? と辺りを見回すも人影はない。などと思って首を戻したところで、俺の前方に濃紺のパンツスーツを着た女性が立っていた。腰まである髪はプラチナで緩く波打ち、顔立ちはゴージャスな美人。瞳の色は青緑だ。
「…………どちら様で?」
警戒して身構えるも、現在の俺は魔力を使い果たし、アニンもいない身だ。何が出来ると言う事もない。それでも警戒は解かなかった。
「この度は、Play The Philosopher 4Dの上位ユーザー様限定ショップをご利用頂き、ありがとうございます。私はこのショップのオーナーをさせて頂いている者でございます」
眼前の女性はそう言うと深々と頭を垂れた。
「…………はあ?」
Play The Philosopher 4D限定ショップ? 何かの冗談か? それにしては性質が悪い。本当だと言うなら更に性質が悪い。つまり俺たちがいる世界は、トモノリたちが遊んでいた Play The Philosopher の4D版だと言う事か。まあ、可能性としては考えていた事実だ。この世界がゲームの中だと言うなら、そのゲームにはタイトルが存在するはず。そしてそのタイトルで可能性があるのは、トモノリを魔王に変えたあのゲームが怪しいと。
「いくつか、質問させて頂いても良いですか?」
「もちろんです。なんなりと質問頂いて結構です。答えられる範囲でお答えします」
答えられる範囲、でね。
「ここはどこですか?」
「Play The Philosopher 4Dの上位ユーザー限定ショップです」
どこにあるか聞いたんだけど。まあ、俺たちがいる世界とは別の世界かなあ。
「その、上位ユーザーって言うのは?」
「Play The Philosopher には、各ユーザーにイベント達成度と言うものが存在しております。その達成度が上位2パーセントに入っている方を、上位ユーザーと呼ばせて頂いております」
はあ、イベント達成度? しかも上位2パーセントって、メンサかよ。それは何を持ってイベント達成としていると言うのか。まあ、ユーザーには知らされないだろうなあ。
「と言うか、俺はそちらが想定するユーザーではなく、どちらかと言うとNPCなのでは?」
「運営の意向で、プレイヤー、ノンプレイヤー関係なく、この世界に存在する知的生命体は、全てユーザーと言う事となっております」
ふーん。まあ、カロエルの塔でもそんな話をしたが、概ねその通りって事かな?
「で、あなたはこのショップの店員さん?」
「どのように捉えられましても構いません。この姿や行動はユーザー名、工藤春秋様のイメージを元に具現化されたものです」
こんなスーツを着た金髪女性を、なんで俺は想像したんだろう? スーツじゃなく、古代ギリシアのゆったりした服を着ていれば、女神と言っても差し支えないが。…………え?
「め、女神様?」
「そのように呼ばれる事もあります」
マジかー。え? マジで女神なのか?
「この世界って、女神が生み出したものなの?」
「そこはユーザー様のイメージによります。ハルアキ様の考えるイメージに引っ張られ、私はこのような姿形で具現化しておりますので」
成程。
「じゃあ、シンヤやリットーさんは、また別の姿をしたあなたに会っていると?」
「申し訳ありません。他ユーザー様の情報をお教えする事は、規約上許されておりません」
それはそうか。まあ、そこは向こうに戻った時に尋ねれば良いかな。
「で、限定ショップって事だけど、何を売っているんですか?」
って言うか、俺はここに有頂天を修得しにきたはずなんだけど。
「ギフト、スキル、プレイヤースキル、ステータス、種族、アイテム、様々です」
と女神の横に、ステータス画面のようなものが浮かび上がる。ステータス画面、初めて見たかも。
「へえ、色々あるんだなあ。って言うか多過ぎ。スクロールしてもしても終わらん。あ、『空識』がある。一つしかないレアスキルなんかも選べるのか」
「ここになくても、おっしゃって頂ければ、この場で作成してお渡しする事も可能です」
へえ。それは凄い。成程、ゼラン仙者が、有頂天に至れば何でも出来るようになる。と言っていたのも頷ける。
「えっと、有頂天? セクシーマン? ってありますか?」
「ございますよ」
女神が画面をスクロールすると、セクシーマン(有頂天)と言う項目が現れた。その横に、500000との数字が書かれている。値段だろうか? 単位が分からない。
「この、五十万って、単位はなんですか?」
「命秒です」
「メイビョウ?」
「命の時間です」
命の時間。五十万秒だと五日以上六日未満だな。成程、理解した。確かこの空間にいられるのが最大で七日。そのうちの秒数って事か。もしも人生の秒数から換算するなら、五十万秒は少な過ぎる。
「ここって、一つしか買えないんですか?」
「いいえ。複数お買い上げなさるユーザー様もおられます」
「ここへは一度しか来られないんですか?」
「いいえ。ですが同じ方法でお越し頂けるのは、一度だけです」
成程、これは本当に地仙法、天仙法がありそうだな。
「とりあえず、有頂天をください」
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