206 / 642
平身低頭
しおりを挟む
「それで? 自決はいつするの?」
「いや、バヨネッタさん。いくら刀が欲しいからって、勇者に自決を迫らないでください」
初対面で自決を迫られ、シンヤが引いていた。大丈夫。怖くないからねえ。バヨネッタさんって、初対面だと当たりが強いんだよなあ。俺も殺されかけたし。
「冗談よ」
「…………」
「何よ? みんなして」
「何でもありません。それよりシンヤ、戦っていた時の記憶、あったんだな」
俺は話題を変える事にした。
「薄っすらだけどな。ところどころ途切れながら、ハルアキたちに刃を向けていたのは覚えているよ」
そう言ってシンヤは俺たちをぐるりと見回すと、平身低頭して、頭が床に付く程深々と頭を下げた。
「今回の事は僕の失態です。皆さんには償っても償いきれないようなご厄介をお掛けして、誠に申し訳ございません」
真面目なやつ。
「そんな、気にするなよ。さっきも言ったけど、悪いのはあのギリードって奴であって、シンヤじゃない」
「いや、そう言う訳にもいかないだろう」
と俺が、気にするな。と手を振るってもシンヤは食い下がる。
「全くもってその通りね。やはりここは、キュリエリーヴの一本でも貰っておかなきゃ、割りに合わないわ」
そこに悪乗りするバヨネッタさん。
「何言っているんですか。誰も死ななかったのに、そこまで要求します?」
「ハルアキは何も失っていないかも知れないけれど、私は銃砲類を結構な数失っているわ」
そう言えば、霊王剣の波動で銃砲類が結構斬られていたっけ。
「それにリットーは武具一式をやられているし、バンジョーやゼストルスだって、死にはしなかったけれど、死にかけてはいるのよ」
確かに。俺だってアニンと分離したり、左腕を斬り落とされているしな。
「…………それがなんでバヨネッタさん一人に対しての弁償になるんですか? 刀一本じゃあ、等分出来ないじゃないですか。売らないんでしょう?」
「ちっ」
うわあ、舌打ちしたよこの人。
「ははは。中々個性的な仲間だな」
シンヤ、気を使わなくても良いんだよ。
「キュリエリーヴはあげられませんが、相応の弁償はするつもりです」
「相応の弁償、ねえ? 大人に足先を踏み入れた程度のあなたに、何が出来るって言うのかしら?」
バヨネッタさんの言葉に苦笑いを浮かべるしかないシンヤ。
「手厳しいですね。でも、確かにそれは事実ですね。僕はまだ子供で、勇者と言う権威や、パジャンと言う大国の後ろ盾がなければ、何かを償うと言う事さえ満足に出来ない」
俺たちみたいな子供に出来る償いなんて、誠心誠意謝るくらいの事しかないもんなあ。
「一応、僕の師であり、リットー様の師でもあらせられる、ゼラン仙者様から、各地で暴れる魔物たちが持っていた、古代の宝なんかを集めるように指示されていまして、いくつか集めたものがありますので、そこからお譲り出来れば、と思っているのですが」
へえ。それは良いんじゃないかな。古代のお宝だなんて、バヨネッタさんがすぐに食いつきそう。
「…………」
食いつかないだと!? それどころか凄く嫌そうな顔をしている!
「どうかしたんですか?」
「あの外道仙者が、集めた宝を手放す訳ないでしょう」
「いやいや、集めたのはシンヤですよ? 弟子が集めたのを弟子が使って、何が不味いんですか? ねえ、リットーさん」
俺はゼラン仙者の事を良く知るリットーさんに話を振った。
「いや、あの方ならば、そう言う事もありえる」
ありえるんだ。どんな仙者なんだよ。言い出したシンヤもちょっと微妙な顔しているし、本当にそう言う人なのかも知れない。
「あの、今まで稼いだお金を、賠償金として支払いますので、勘弁してください」
本日二度目のシンヤによる平身低頭だった。
「へえ、勇者って結構稼げるものなのか?」
そこにバンジョーさんが入り込んできた。
「ええ。僕はパジャンに認められた正式な勇者ですから、国から一定の活動資金と、魔物の討伐や問題の解決など、その都度謝礼金が出ます。これでも小金持ちなんですよ」
小金持ち。大金持ちではないんだ。こっちが微妙な顔になってしまう。バヨネッタさんも、ちょっと同情したような顔しているし。
「それで? どれくらい支払えるのかしら?」
バヨネッタさんの、仕方ないからそれで手を打つ感じ満載の問い掛けに、
「あっ」
と声を漏らすシンヤ。
「どうかしたのか?」
「僕のお金、仲間に預けていたんでした。ごめんなさい。今持っていません」
シンヤを見る周りの視線が、完全に同情のそれに変わった。多分俺もそんな顔しているんだろうなあ。
「ああ、えっと~、シンヤ、俺が立て替えておいてやろうか?」
俺の言葉に、え? 良いの? と目を輝かせるシンヤ。まるで救世主登場のように見詰めないでくれ。
「ええ、皆さん、ここは俺が友人のケツを持つんで、勘弁してやってください」
俺までがシンヤの側に回って、シンヤ共々平身低頭していた。勇者って苦労しているんだなあ。
「いや、バヨネッタさん。いくら刀が欲しいからって、勇者に自決を迫らないでください」
初対面で自決を迫られ、シンヤが引いていた。大丈夫。怖くないからねえ。バヨネッタさんって、初対面だと当たりが強いんだよなあ。俺も殺されかけたし。
「冗談よ」
「…………」
「何よ? みんなして」
「何でもありません。それよりシンヤ、戦っていた時の記憶、あったんだな」
俺は話題を変える事にした。
「薄っすらだけどな。ところどころ途切れながら、ハルアキたちに刃を向けていたのは覚えているよ」
そう言ってシンヤは俺たちをぐるりと見回すと、平身低頭して、頭が床に付く程深々と頭を下げた。
「今回の事は僕の失態です。皆さんには償っても償いきれないようなご厄介をお掛けして、誠に申し訳ございません」
真面目なやつ。
「そんな、気にするなよ。さっきも言ったけど、悪いのはあのギリードって奴であって、シンヤじゃない」
「いや、そう言う訳にもいかないだろう」
と俺が、気にするな。と手を振るってもシンヤは食い下がる。
「全くもってその通りね。やはりここは、キュリエリーヴの一本でも貰っておかなきゃ、割りに合わないわ」
そこに悪乗りするバヨネッタさん。
「何言っているんですか。誰も死ななかったのに、そこまで要求します?」
「ハルアキは何も失っていないかも知れないけれど、私は銃砲類を結構な数失っているわ」
そう言えば、霊王剣の波動で銃砲類が結構斬られていたっけ。
「それにリットーは武具一式をやられているし、バンジョーやゼストルスだって、死にはしなかったけれど、死にかけてはいるのよ」
確かに。俺だってアニンと分離したり、左腕を斬り落とされているしな。
「…………それがなんでバヨネッタさん一人に対しての弁償になるんですか? 刀一本じゃあ、等分出来ないじゃないですか。売らないんでしょう?」
「ちっ」
うわあ、舌打ちしたよこの人。
「ははは。中々個性的な仲間だな」
シンヤ、気を使わなくても良いんだよ。
「キュリエリーヴはあげられませんが、相応の弁償はするつもりです」
「相応の弁償、ねえ? 大人に足先を踏み入れた程度のあなたに、何が出来るって言うのかしら?」
バヨネッタさんの言葉に苦笑いを浮かべるしかないシンヤ。
「手厳しいですね。でも、確かにそれは事実ですね。僕はまだ子供で、勇者と言う権威や、パジャンと言う大国の後ろ盾がなければ、何かを償うと言う事さえ満足に出来ない」
俺たちみたいな子供に出来る償いなんて、誠心誠意謝るくらいの事しかないもんなあ。
「一応、僕の師であり、リットー様の師でもあらせられる、ゼラン仙者様から、各地で暴れる魔物たちが持っていた、古代の宝なんかを集めるように指示されていまして、いくつか集めたものがありますので、そこからお譲り出来れば、と思っているのですが」
へえ。それは良いんじゃないかな。古代のお宝だなんて、バヨネッタさんがすぐに食いつきそう。
「…………」
食いつかないだと!? それどころか凄く嫌そうな顔をしている!
「どうかしたんですか?」
「あの外道仙者が、集めた宝を手放す訳ないでしょう」
「いやいや、集めたのはシンヤですよ? 弟子が集めたのを弟子が使って、何が不味いんですか? ねえ、リットーさん」
俺はゼラン仙者の事を良く知るリットーさんに話を振った。
「いや、あの方ならば、そう言う事もありえる」
ありえるんだ。どんな仙者なんだよ。言い出したシンヤもちょっと微妙な顔しているし、本当にそう言う人なのかも知れない。
「あの、今まで稼いだお金を、賠償金として支払いますので、勘弁してください」
本日二度目のシンヤによる平身低頭だった。
「へえ、勇者って結構稼げるものなのか?」
そこにバンジョーさんが入り込んできた。
「ええ。僕はパジャンに認められた正式な勇者ですから、国から一定の活動資金と、魔物の討伐や問題の解決など、その都度謝礼金が出ます。これでも小金持ちなんですよ」
小金持ち。大金持ちではないんだ。こっちが微妙な顔になってしまう。バヨネッタさんも、ちょっと同情したような顔しているし。
「それで? どれくらい支払えるのかしら?」
バヨネッタさんの、仕方ないからそれで手を打つ感じ満載の問い掛けに、
「あっ」
と声を漏らすシンヤ。
「どうかしたのか?」
「僕のお金、仲間に預けていたんでした。ごめんなさい。今持っていません」
シンヤを見る周りの視線が、完全に同情のそれに変わった。多分俺もそんな顔しているんだろうなあ。
「ああ、えっと~、シンヤ、俺が立て替えておいてやろうか?」
俺の言葉に、え? 良いの? と目を輝かせるシンヤ。まるで救世主登場のように見詰めないでくれ。
「ええ、皆さん、ここは俺が友人のケツを持つんで、勘弁してやってください」
俺までがシンヤの側に回って、シンヤ共々平身低頭していた。勇者って苦労しているんだなあ。
1
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる