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「遊ぶって、何するんだよ?」


 トランプでもするのだろうか? それならジョンポチ陛下たちでも出来る。城で遊んだからな。なんて思っていたのだが、部屋まで行ってカナが持ってきたのは、一抱えあるダンボールだった。


「これよ!」


 リビングのテーブルにダンボールをドンッと置くカナ。中を覗けば、ギアやらモーターやらバッテリーやら、赤外線センサーに駆動回路盤が、ごっちゃりどっさりだ。


「何でロボットなんだよ?」


 カナに理由を尋ねてはいるが、理由は知っている。カナが中学でロボット部に入っているからだ。


「何で? も何も、皆ロボット好きでしょ?」


 当然のように言うんじゃない。


「ロボット?」


 食い付いたのはジョンポチ陛下やディアンチュー嬢じゃなく、オルさんだった。まあ、研究者としては、未知の代物を見ればテンション上がるよね。


「はい。ここにロボットのパーツがあるので、適当に組み立ててくれれば、動きますよ!」


 とカナの言葉を俺が訳す。


「へえ、動くのかい? それは面白そうだねえ」


 言ってオルさんは缶ビールを一口飲むと、手に缶ビールを持ったままリビングまでやって来た。完全に酔っているなオルさん。


「ふむ? どうすれば良いのやら、さっぱり分からないなあ」


 と缶ビールをテーブルに置いて、オルさんはロボットのパーツを前に腕組みをする。


「あ、私が作ったロボット見ます?」


「手本があるのかい? それは是非見たいねえ」


 オルさんに請われたカナは、またもや自室にロボットを取りに行き、すぐに戻ってきた。手に持っていたのは二足歩行ロボットだ。


「ふむ。それがロボット? と言うやつかい?」


「ええ。見ててください」


 とカナはロボットのスイッチを入れテーブルに置き、タブレットで指示を出す。するとロボットが前進しだした。それだけで異世界集団から「おおっ」と声が上がる。そしてテーブルの上のロボットは、テーブルの上をぐるりと一周してみせた。


「凄いな。そのタブレットで操作しているのかい?」


 と尋ねるオルさんに、


「いえ、最初に動くように指示を出しただけで、あとはこのロボットが勝手に動いて、テーブルを一周したんです。そうプログラミングしてありますから」


「プログラミング?」


 尋ねるオルさんにカナが首肯し、タブレットをオルさんに見せる。


「これってピクト?」


 タブレットの画面を見て、尋ねたのは俺だ。


「そうだよう」


 とカナは首肯する。ピクトと言うのは、元は小中学生向けのプログラミング教育アプリだった。プログラミングと言うと、難しいプログラミング言語を覚える必要があるが、このピクトでは、それが絵文字ピクトグラムで表示され、それらを組み合わせる事でプログラムとして、ロボットやらゲームを起動させるのである。


 このピクト、元は小中学生向けだったのだが、プログラミングを感覚的に捉える面白さから、大人にもファンを獲得し、ピクトでプログラミングしたゲームやロボットなどの世界大会が開かれる程に盛況だ。


「まあ確かに、ピクトなら絵でどんな指示なのか分かるから、子供でも遊べるか」


「そう言う事」


 得意そうに手を腰に当てて答えるカナ。なんかちょっと腹が立つなあ。


 だがまあ、ピクトはジョンポチ陛下の心を掴んだらしく、カナの組み立てたロボットを、自分で組んだプログラムで動かそうと頑張っていた。


「ああ、それだと右足一歩しか動かないのよ。だから『左足一歩』と組み合わせて、それを『繰り返す』で囲ってあげるの。そうすれば繰り返し右左と歩くから。お兄ちゃん、ジョンポチくんに説明してあげて」


 それは良いけど、素性を知らないとは言え、陛下を『くん』付けで呼ぶ妹に、お兄ちゃん冷や冷やだよ。


 俺がジョンポチ陛下に色々説明している間、オルさんは集中してロボットを組み立てていた。そしてたまに「このパーツは何に使うんだい?」と尋ねてくる。


 オルさんやジョンポチ陛下とは対照的に、バヨネッタさんとディアンチュー嬢はそれをつまらなそうに見ていた。


「何かテレビ見ますか?」


「そうねえ」


 俺が尋ねてテレビリモコンを渡すと、それを受け取ったバヨネッタさんが、カチカチとテレビのチャンネルを変えていく。


「これってどれぐらいのものが観られるの?」


 とバヨネッタさんに尋ねられるが、返答に困る。昔は少ない番組数だったようだが、今はテレビはインターネットと繋がっているのが普通で、動画配信サービスのお陰で、昔のテレビ番組から最新の番組まで何でも観られるからだ。


「人間だと、一生かけても観きれないくらいですね」


「そんなに!?」


 バヨネッタさんだけでなく、それを聞いていたディアンチュー嬢やソダル翁まで驚いていた。


「何か、これが観たいと言ってくれれば、それを検索して観せられますよ」


 俺の言葉に思案した三人は、


「魔法」とバヨネッタさん。


「お化粧」とディアンチュー嬢。


「戦闘」とソダル翁が口にした。


 そのキーワードから検索かけて出てきたのが、変身して戦う魔法少女アニメだった事は言うまでもない。「おお!!」と盛り上がったので問題はなさそうだったが。


 バヨネッタさんは「成程、こう言う魔法もアリね」と感心し、ディアンチュー嬢は化粧をして変身する魔法少女たちに目を輝かせ、ソダル翁は「この戦闘、相当デキる者の動きだな」と考察していた。言葉が分からなくても、日本のアニメは通用するらしい。


 一方のオルさんとジョンポチ陛下の熱中っぷりも相当なもので、七町さんがマイクロバスで迎えにきても、帰りたがらなかった程だ。結果ジョンポチ陛下の為に七町さんがカナからロボットとタブレットを買い取り、オルさんに至っては、ビールを飲みながらロボットをいじっていた事もあって、眠ってしまったので、このままうちに泊まっていく事になったのだった。

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