世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順

文字の大きさ
上 下
24 / 636

島の東へ

しおりを挟む
 俺は今、ヌーサンス島を南の港跡からぐるりと島の東に向かって探索している。崖下の湖と繋がっているであろう川か湖を発見する為だ。


 探索の邪魔をし、襲い来るのは数々の魔物や野生動物たち。ベナ草がみっちり生えて、足元の視界が悪いのを良い事に、トカゲや角ウサギ、ヤギが草陰から襲い掛かってくる。


 しかし俺には通用しない。大トカゲ戦以来、野生の勘を鍛えに鍛えまくったお陰で、俺は360度どこから攻撃を受けようと、対処出来るようになっていた。今後の課題はこの探知範囲をどこまで拡張していけるかだ。


 何故なら、俺の探知範囲の外から、一気に急襲してくる輩がいるからだ。それは鳥。


 鳥のスピードと言うものは馬鹿に出来ない。何でも、鷹の仲間であるハヤブサは獲物を狩る時、上空からの急降下により、時速四百キロ近く出すのだそうだ。この島の鳥がどれ程俺にとって脅威か、理解いただけただろうか? いや、流石に四百キロは出ていないだろうけど。


 そして鳥は今日も上空から急襲を仕掛けてくる。


 鳴きながら上空を旋回していたかと思ったら、あっという間に急降下して俺の前に現れる。正にハヤブサの如しだ。


 俺だってやられてばっかりではない。鳴き声が聞こえたらすぐに臨戦態勢を取り、どこから鳥が襲ってこようと、大丈夫なように黒剣を構える。やられるより速く剣を打ち込む為だ。


 しかし鳥は一瞬の内に俺の探知範囲に入ったかと思ったら、死角から一撃食らわせて戦線から華麗に離脱を繰り返し、俺を苦しめてくるのだ。これが一羽ならまだしも、三羽四羽と徒党を組んで時間差で攻撃してくるのでたちが悪い。


 それでも俺のプレイヤースキルが向上したからだろう。四羽のうち、二羽までは返り討ちに出来るようになってきた。


「ムカつく。何が頭にくるって、あれで魔物じゃないってんだから、この世界の生き物はどうなってるんだ?」


『魔物なんてのは、生物の分類の一部でしかないからな』


「そうなの?」


『生物の中で、体内に魔石を有するようになったものを魔物と呼ぶのだ』


「有するようになった? まるでどの魔物も初めは魔物じゃなかったかのような口振りだな?」


『うむ。生物が魔物へと変貌するのは、食の好みや環境の変化など様々だが、初めから魔物として世に産み落とされた生物と言うものは、人工物以外にはおるまい』


 成程。魔物にも色々あるんだねえ。まあ、それを知ったからって鳥の強さは変わらないんだけど。


『まあ、ハルアキの技量も上がってきている。ここらでレベルが上がれば、技量の分上乗せされて鳥にも対応出来るようになるだろう』


 そう。俺がプレイヤースキルを磨いているのは、これが理由でもある。同レベル帯でどれだけプレイヤースキルを上げているかで、次のレベルにレベルアップした時の上乗せ分が違ってくるのだ。知ってたらもっとプレイヤースキル磨いてきてたのに。


 だが考えてみれば当然だろう。俺たちの世界ではレベルアップはない。プレイヤースキルが全てだ。プレイヤースキルをどれだけ磨き、どれだけ向上させていけるか、の世界なのだ。


 そして、もし俺たちの世界にレベルアップの仕組みが導入されたら? プレイヤースキルを磨いてきた者と、そうでなかった者が、等しくレベルアップするのは、俺から見ても不条理である。


 なのでこの世界でのレベルアップには、プレイヤースキル、技量の向上、努力の結果による上乗せが発生する仕組みだ。良い仕組みだと思う。神様グッジョブ。



 東の山のたもとには小さな滝があった。着地点は滝壺になっていて、そこから東の海へ小川が流れている。


 滝を見上げて、ああ成程。と俺は得心した。この滝、恐らく山の中腹にある村の水路と繋がっている。


 山頂の湖から水路で中腹の村を通った水は、ここの滝へと流れ落ちていたのだ。そしてこの滝の滝壺が、崖下の湖と地下で繋がっているのだ。


 何故分かるのかって? だって滝壺の周り、カエルだらけだからな。え? 何これ? 大量発生? 百匹以上なんて言葉が生易しい。


『この量のカエルは初めて見るな』


 マジかー。


 襲って来るカエルたちを、俺は黒剣でぶった斬って回った。黒い刃の波動でもって、数匹を一度にぶった斬る。一度に十匹以上が襲い掛かり、それを横に一閃するのだ。


 それでも止まらない怒涛のカエル攻勢。俺に覆い被さり、引っ掻き噛み付いてくる。


「どぅああああッ!!」


 カエルが近過ぎて剣なんて振るっていられない。俺はアニンをグローブに変化させ、殴る。殴る。殴る。蹴りも加えて格闘戦だ。


 飛びかかってくるカエルを殴り、引っ掴まったカエルを引き剥がして地面に叩き付ける。足に噛み付いた奴はそのまま蹴り上げてやった。格闘戦は格好付け過ぎだった。ただ暴れただけだ。


 気付けば動くカエルの姿は見えず、辺りを埋め尽くすカエルの死屍累々。小川はカエルの血で赤く染まり、小川に落ちたカエルを、魚たちが我先に貪り食っていた。


 そして俺は、こんなアホみたいなカエルたちとの血闘によって、レベルを上げたのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

おじさんが異世界転移してしまった。

月見ひろっさん
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...