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召喚されたスライムから見た世界
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我が名は『スラっち』。偉大なる我の召喚主であるミーナ・ブラッドリー様によって召喚された、一匹のスライムである。
ミーナ様はまだ14歳と幼いが、既に親元を離れて冒険者をしている立派なお方だ。
この世界では神に祈りを捧げ、それが一定ポイントを超えると、神よりの恩寵『ギフト』が与えられる。その『ギフト』がどのようなものになるかは、神のみぞ知るものであり、ミーナ様に授けられた『ギフト』が『召喚』であった為、我がその召喚に応じてここにいる。
◯ ◯ ◯
ミーナ様は今日も、冒険者ギルドで常設依頼である薬草採取を黙々と行われていた。何と健気で立派な事だろう。
「はあ。今日もパーティ組むの断られちゃったな」
薬草をむしりながら、独り言を呟くミーナ様。冒険者となり、一人で働く事に限界を感じてきているのか、パーティを組みたいと言うのが最近のミーナ様のお悩みだ。しかしまだ年若く冒険者としてランクも低いミーナ様を、パーティメンバーにしてくれるパーティは無く、そのランクを上げる為にも、こうして常設依頼をこなしているのだが、常設依頼はランクポイントが低い為に、中々ランクを上げられない。と言う悪循環に陥っていた。
こんな時こそ、我の出番だ。スライムである我に、薬草をむしる手は無いが、溶解液で根本をジュッとやれば、採取だって可能なのだ。我はこれを体内に吸収してミーナ様の所まで持っていく。
「薬草採ってきてくれたの? ありがとうスラっち」
そう言って我をギュッと抱きしめてくれるミーナ様は、やはりお優しい方だ。全く、こんなに優しいミーナ様とパーティを組まないなんて、なんと不敬な人間たちであろうか。ミーナ様がいなければ、我が天誅を下してやる所だ。
◯ ◯ ◯
「パーティに入りたい? そりゃ大歓迎……え? 召喚師? 召喚したのは? そのスライム? …………ええっと、いや、今は間に合っているかなあ。ごめんなさい、すみません」
また今日も、ミーナ様が決死の思いでパーティに入りたいとお願いしたのに、このパーティも断りよった。これで何パーティ目であろうか。両手で足りない数のパーティに断られても、ミーナ様はパーティを組もうとする。
「私のお父さんとお母さんも昔冒険者をやっていてね、パーティを組んで冒険をしていたの。その頃の事を、良く聞かせて貰っていたからかな。パーティを組んで冒険をする事に憧れがあるんだ。あ、スラっちに不満がある訳じゃないんだよ。スラっちのお陰で、一人でも寂しくないし。って二人だね」
宿屋の部屋でそう言って、ミーナ様は我の身体をギュッと抱き締めて今日も眠りに就くのだった。ああ、なんと健気でお優しいミーナ様なのだろう。人間め、何故ミーナ様を認めないのだ。
◯ ◯ ◯
今朝も信心深いミーナ様は、神殿で神に祈りを捧げておられる。自然と帯同する我もいつの間にやら神に祈りを捧げるのが日課となっていた。これが終われば、冒険者ギルドに行ってパーティ探し、それが見付からなければ、ミーナ様一人で薬草採取だ。
「はあ? スライム一匹しか召喚出来ないような、へっぽこ召喚師、誰が仲間にするかってんだよ。俺たちの仲間になりたかったら、そのスライムとの契約を破棄して、もっと強い魔物を召喚してから、出直してきな」
ミーナ様が頭を下げてパーティに入りたいと申し込んだ男の言葉に、我は愕然としてしまった。我に力が無いから、我がスライムだから、ミーナ様にパーティが出来なかったのだ。何と言う悲しい現実だ。
「すみません! こいつ酔っ払っているだけなんで、気にしないでください!」
男の仲間は男を庇うが、それが男の本音である事は疑いようが無かった。悲しみに打ちひしがれるミーナ様は、いつもの薬草採取場所に、我を抱き締めながらとぼとぼと向かっていった。
◯ ◯ ◯
何と悲しい事であろう。まさか我を召喚した事が、ミーナ様のパーティ加入の足枷になっていたとは。
我に居場所は無い。ミーナ様が薬草採取に集中している間に、我はどこへなり旅へ出よう。さすればいずれミーナ様との契約も切れ、新たに強い魔物を召喚したミーナ様が、晴れてパーティと一緒に冒険が出来る事だろう。
こうして旅に出た我であったが、まさか初手で詰むとは思っていなかった。今我の前に立ち塞がるのは、周囲の木々より背の高いドラゴンである。それが我を見下ろし、路傍の石を蹴飛ばすかのように、我を踏み潰そうとしている。
「スラっち!!」
そんなただ死を待つのみであった我を救ってくださったのは、他の誰でもない、ミーナ様であった。
ドラゴンに踏み潰されようとしていた我を抱きかかえて転がり、間一髪で我を救い出してくださったミーナ様。そのミーナ様の全身から、怒気が漏れ出していた。あの健気で優しいミーナ様が、我を踏み潰そうとしたドラゴンに怒っているのだ。
「良くもスラっちに酷い事を! 絶対許さない!」
そう宣言すると、拳を構えるミーナ様。そんなミーナ様の闘気に、ドラゴンも身構える。
それからのミーナ様とドラゴンとの攻防は一進一退であった。ミーナ様のブラッドリー流拳法が、ドラゴンの硬い鱗を粉々に粉砕していく一方、ドラゴンの鋭い牙と爪が、ミーナ様の肉を削りえぐる。
そんな戦いがどれ程の間続いただろうか。戦局は徐々にドラゴン優勢へと傾いていっていた。ドラゴンが、我を狙えばミーナ様が庇うと理解したからだ。これによってミーナ様は防戦一方となり、最後とばかりにドラゴンの口から吐き出された火炎によって、ミーナ様は倒れ伏してしまわれた。
ああ、何と言う事だ。我を庇うなんて事をしなければ、ミーナ様がドラゴンに負ける事も無かっただろうに。やはり優しいミーナ様。
方や勝鬨の咆哮を上げるドラゴンは、トドメとばかりにミーナ様を踏み潰そうとする。それを助ける為に、我はミーナ様に覆い被さった。そして神に祈った。「神様、どうか、どうかミーナ様をお救いください」と。
するとどうであろうか、我が眩しい光に包まれたではないか。この光を我は知っている。人間が神から『ギフト』を授かった時に光るのと同じ現象だ。まさか、我に『ギフト』をくださると言うのか、神よ!
しかし我が授かった『ギフト』がどんな『ギフト』かは分からない。どうすれば良い? 何をすれば良い? そう思っていたら、がばりで半死半生であったはずのミーナ様が起き上がったではないか。これに驚く我とドラゴン。
しかもミーナ様は我を抱えて、今にも自分を踏み潰そうとするドラゴンから飛び退いた。見ればミーナ様の傷は綺麗さっぱり無くなっている。これがミーナ様の『ギフト』でない事は我でも分かる。と言う事は、『治癒』させる事が、我が神より授かった『ギフト』なのだろう。
「なんだか分からないけど、これってスラっちのお陰だよね? ありがとう!」
言ってミーナ様は我をドラゴンから離れた場所に我を置くと、
「これで形勢逆転! やられて貰うよ、ドラゴンさん!」
こうしてミーナ様の、ブラッドリー流拳法奥義『天地滅殺覇轟陣』によって、ドラゴンの命は天に召されたのだった。
◯ ◯ ◯
ドラゴンをソロで討伐した事により、ミーナ様は冒険者ギルドでランクが急上昇し、一気に注目の的に。今までミーナ様にそっぽを向いていたパーティまでも、「入ってください」と土下座で頼んでくる始末だ。
そんな中でミーナ様が選んだパーティは、女戦士シェリーと女魔法使いカーシャの新人二人組だった。理由は我を「可愛い」と撫でてきたからである。ふふ。我の可愛さに気付くとは、二人とも見所があるぞ。
こうして女三人に我を加えたパーティが、後に魔王を倒す事となるのは、もう少し先の話である。
ミーナ様はまだ14歳と幼いが、既に親元を離れて冒険者をしている立派なお方だ。
この世界では神に祈りを捧げ、それが一定ポイントを超えると、神よりの恩寵『ギフト』が与えられる。その『ギフト』がどのようなものになるかは、神のみぞ知るものであり、ミーナ様に授けられた『ギフト』が『召喚』であった為、我がその召喚に応じてここにいる。
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ミーナ様は今日も、冒険者ギルドで常設依頼である薬草採取を黙々と行われていた。何と健気で立派な事だろう。
「はあ。今日もパーティ組むの断られちゃったな」
薬草をむしりながら、独り言を呟くミーナ様。冒険者となり、一人で働く事に限界を感じてきているのか、パーティを組みたいと言うのが最近のミーナ様のお悩みだ。しかしまだ年若く冒険者としてランクも低いミーナ様を、パーティメンバーにしてくれるパーティは無く、そのランクを上げる為にも、こうして常設依頼をこなしているのだが、常設依頼はランクポイントが低い為に、中々ランクを上げられない。と言う悪循環に陥っていた。
こんな時こそ、我の出番だ。スライムである我に、薬草をむしる手は無いが、溶解液で根本をジュッとやれば、採取だって可能なのだ。我はこれを体内に吸収してミーナ様の所まで持っていく。
「薬草採ってきてくれたの? ありがとうスラっち」
そう言って我をギュッと抱きしめてくれるミーナ様は、やはりお優しい方だ。全く、こんなに優しいミーナ様とパーティを組まないなんて、なんと不敬な人間たちであろうか。ミーナ様がいなければ、我が天誅を下してやる所だ。
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「パーティに入りたい? そりゃ大歓迎……え? 召喚師? 召喚したのは? そのスライム? …………ええっと、いや、今は間に合っているかなあ。ごめんなさい、すみません」
また今日も、ミーナ様が決死の思いでパーティに入りたいとお願いしたのに、このパーティも断りよった。これで何パーティ目であろうか。両手で足りない数のパーティに断られても、ミーナ様はパーティを組もうとする。
「私のお父さんとお母さんも昔冒険者をやっていてね、パーティを組んで冒険をしていたの。その頃の事を、良く聞かせて貰っていたからかな。パーティを組んで冒険をする事に憧れがあるんだ。あ、スラっちに不満がある訳じゃないんだよ。スラっちのお陰で、一人でも寂しくないし。って二人だね」
宿屋の部屋でそう言って、ミーナ様は我の身体をギュッと抱き締めて今日も眠りに就くのだった。ああ、なんと健気でお優しいミーナ様なのだろう。人間め、何故ミーナ様を認めないのだ。
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今朝も信心深いミーナ様は、神殿で神に祈りを捧げておられる。自然と帯同する我もいつの間にやら神に祈りを捧げるのが日課となっていた。これが終われば、冒険者ギルドに行ってパーティ探し、それが見付からなければ、ミーナ様一人で薬草採取だ。
「はあ? スライム一匹しか召喚出来ないような、へっぽこ召喚師、誰が仲間にするかってんだよ。俺たちの仲間になりたかったら、そのスライムとの契約を破棄して、もっと強い魔物を召喚してから、出直してきな」
ミーナ様が頭を下げてパーティに入りたいと申し込んだ男の言葉に、我は愕然としてしまった。我に力が無いから、我がスライムだから、ミーナ様にパーティが出来なかったのだ。何と言う悲しい現実だ。
「すみません! こいつ酔っ払っているだけなんで、気にしないでください!」
男の仲間は男を庇うが、それが男の本音である事は疑いようが無かった。悲しみに打ちひしがれるミーナ様は、いつもの薬草採取場所に、我を抱き締めながらとぼとぼと向かっていった。
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何と悲しい事であろう。まさか我を召喚した事が、ミーナ様のパーティ加入の足枷になっていたとは。
我に居場所は無い。ミーナ様が薬草採取に集中している間に、我はどこへなり旅へ出よう。さすればいずれミーナ様との契約も切れ、新たに強い魔物を召喚したミーナ様が、晴れてパーティと一緒に冒険が出来る事だろう。
こうして旅に出た我であったが、まさか初手で詰むとは思っていなかった。今我の前に立ち塞がるのは、周囲の木々より背の高いドラゴンである。それが我を見下ろし、路傍の石を蹴飛ばすかのように、我を踏み潰そうとしている。
「スラっち!!」
そんなただ死を待つのみであった我を救ってくださったのは、他の誰でもない、ミーナ様であった。
ドラゴンに踏み潰されようとしていた我を抱きかかえて転がり、間一髪で我を救い出してくださったミーナ様。そのミーナ様の全身から、怒気が漏れ出していた。あの健気で優しいミーナ様が、我を踏み潰そうとしたドラゴンに怒っているのだ。
「良くもスラっちに酷い事を! 絶対許さない!」
そう宣言すると、拳を構えるミーナ様。そんなミーナ様の闘気に、ドラゴンも身構える。
それからのミーナ様とドラゴンとの攻防は一進一退であった。ミーナ様のブラッドリー流拳法が、ドラゴンの硬い鱗を粉々に粉砕していく一方、ドラゴンの鋭い牙と爪が、ミーナ様の肉を削りえぐる。
そんな戦いがどれ程の間続いただろうか。戦局は徐々にドラゴン優勢へと傾いていっていた。ドラゴンが、我を狙えばミーナ様が庇うと理解したからだ。これによってミーナ様は防戦一方となり、最後とばかりにドラゴンの口から吐き出された火炎によって、ミーナ様は倒れ伏してしまわれた。
ああ、何と言う事だ。我を庇うなんて事をしなければ、ミーナ様がドラゴンに負ける事も無かっただろうに。やはり優しいミーナ様。
方や勝鬨の咆哮を上げるドラゴンは、トドメとばかりにミーナ様を踏み潰そうとする。それを助ける為に、我はミーナ様に覆い被さった。そして神に祈った。「神様、どうか、どうかミーナ様をお救いください」と。
するとどうであろうか、我が眩しい光に包まれたではないか。この光を我は知っている。人間が神から『ギフト』を授かった時に光るのと同じ現象だ。まさか、我に『ギフト』をくださると言うのか、神よ!
しかし我が授かった『ギフト』がどんな『ギフト』かは分からない。どうすれば良い? 何をすれば良い? そう思っていたら、がばりで半死半生であったはずのミーナ様が起き上がったではないか。これに驚く我とドラゴン。
しかもミーナ様は我を抱えて、今にも自分を踏み潰そうとするドラゴンから飛び退いた。見ればミーナ様の傷は綺麗さっぱり無くなっている。これがミーナ様の『ギフト』でない事は我でも分かる。と言う事は、『治癒』させる事が、我が神より授かった『ギフト』なのだろう。
「なんだか分からないけど、これってスラっちのお陰だよね? ありがとう!」
言ってミーナ様は我をドラゴンから離れた場所に我を置くと、
「これで形勢逆転! やられて貰うよ、ドラゴンさん!」
こうしてミーナ様の、ブラッドリー流拳法奥義『天地滅殺覇轟陣』によって、ドラゴンの命は天に召されたのだった。
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ドラゴンをソロで討伐した事により、ミーナ様は冒険者ギルドでランクが急上昇し、一気に注目の的に。今までミーナ様にそっぽを向いていたパーティまでも、「入ってください」と土下座で頼んでくる始末だ。
そんな中でミーナ様が選んだパーティは、女戦士シェリーと女魔法使いカーシャの新人二人組だった。理由は我を「可愛い」と撫でてきたからである。ふふ。我の可愛さに気付くとは、二人とも見所があるぞ。
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