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「また会えるかな?」
「絶対会いにくるよ」
首都惑星アマルガムの港。ペガサスくんとコップくんが涙の別れを経験している横で、何かオレはまた物凄い人数のアマルガム人に取り囲まれていた。
「数独くんバンザーイ! 数独くんバンザーイ!」
まさか自分が万歳三唱で見送られる日が来ようとは、夢にも思っていなかった。ヴェット一味の時とは違い、皆オレとの別れを惜しむように涙ぐんでいる。まあ、今日初めて会った人達なんだけど。
数独くんとオレを呼んでいることから分かるように、彼らはオレが作った数独サイトで数独のファンになった人達だ。何でもピグルさん経由の情報で、オレが今日アマルガムから出港すると知って、百人は裕に超える数の人達が、わざわざ見送りに来てくれたらしい。
しかしアマルガム人ってのは情に厚い人が多い。鉄のボディーに熱いハートだ。初めて会った人に対して涙流して別れを惜しむなんて、オレには意味わからんもん。
他の乗客達からジロジロ見られ、感動と言うより恥ずかしさが勝ってしまったが、お土産も沢山もらえて心の中はホクホクだった。後で入管の人にこれは何だかんだと説明するのが大変だったが。
レイピアガンについては結構あっさり船内に持ち込めた。取り上げられるかと思ったが、「岩に穴を空ける掘削用の道具です」で通った。
何であれオレ達はコップくん達をはじめ、多くのアマルガム人に見送られて、この世界を後にするのだった。
「仁さん、起きてますか?」
二段ベッドの上階で横になっているオレに、向かいの二段ベッドの上階にいたペガサスくんが声を掛けてきた。下段ベッドではそれぞれ椿さん、源さんが眠っている。
オレ達はまだ四人部屋にいた。BCジュエルを手に入れたのに、何故まだオレ達が四人部屋を使っているかというと、BCジュエルの加工、細工がまだ残っているのと、存外アマルガムからの乗客が多く、一人部屋が埋まってしまっていたのだ。
「…起きてるけど?」
オレはBCジュエルをどのように細工しようか考えていて、まだ眠っていなかった。
「仁さん、ボクを男にしてください」
「…えっ?」
ベッドの上で正座したペガサスくんが頭を下げる。
「ボク、もっと強くなりたいんです」
あ、そういうことね。男にしてくださいなんて言うから、変に勘繰ってしまったが、ペガサスくんはまだ十歳だ。そんな隠語使うはずなかった。
「ボク、アマルガムでコップくんを守れなくて、連れ去られちゃったじゃないですか。その時から思ってたんです。もっと強くなりたいって」
「…何でオレなの? 椿さんがいるじゃない。今まで通り椿さんと鍛錬すればいいんじゃない?」
「強さの方向性です。椿さんは確かに強いです。でも気づいたんです。ボクが求める強さは、椿さんのような戦闘に特化した強さじゃなくて、仁さんのように、どんな状況にも柔軟に対応できる強さ何だと」
真剣な眼差しのペガサスくん。真剣なのはいいが、こっちはいい迷惑だ。オレはのんびりゴロゴロしていたいのだ。
「…風のバフをものにしたら考えておくよ」
互いにそれ以上何も言わず、オレはなんとなくバツが悪くてペガサスくんに背を向けて寝入った。
「絶対会いにくるよ」
首都惑星アマルガムの港。ペガサスくんとコップくんが涙の別れを経験している横で、何かオレはまた物凄い人数のアマルガム人に取り囲まれていた。
「数独くんバンザーイ! 数独くんバンザーイ!」
まさか自分が万歳三唱で見送られる日が来ようとは、夢にも思っていなかった。ヴェット一味の時とは違い、皆オレとの別れを惜しむように涙ぐんでいる。まあ、今日初めて会った人達なんだけど。
数独くんとオレを呼んでいることから分かるように、彼らはオレが作った数独サイトで数独のファンになった人達だ。何でもピグルさん経由の情報で、オレが今日アマルガムから出港すると知って、百人は裕に超える数の人達が、わざわざ見送りに来てくれたらしい。
しかしアマルガム人ってのは情に厚い人が多い。鉄のボディーに熱いハートだ。初めて会った人に対して涙流して別れを惜しむなんて、オレには意味わからんもん。
他の乗客達からジロジロ見られ、感動と言うより恥ずかしさが勝ってしまったが、お土産も沢山もらえて心の中はホクホクだった。後で入管の人にこれは何だかんだと説明するのが大変だったが。
レイピアガンについては結構あっさり船内に持ち込めた。取り上げられるかと思ったが、「岩に穴を空ける掘削用の道具です」で通った。
何であれオレ達はコップくん達をはじめ、多くのアマルガム人に見送られて、この世界を後にするのだった。
「仁さん、起きてますか?」
二段ベッドの上階で横になっているオレに、向かいの二段ベッドの上階にいたペガサスくんが声を掛けてきた。下段ベッドではそれぞれ椿さん、源さんが眠っている。
オレ達はまだ四人部屋にいた。BCジュエルを手に入れたのに、何故まだオレ達が四人部屋を使っているかというと、BCジュエルの加工、細工がまだ残っているのと、存外アマルガムからの乗客が多く、一人部屋が埋まってしまっていたのだ。
「…起きてるけど?」
オレはBCジュエルをどのように細工しようか考えていて、まだ眠っていなかった。
「仁さん、ボクを男にしてください」
「…えっ?」
ベッドの上で正座したペガサスくんが頭を下げる。
「ボク、もっと強くなりたいんです」
あ、そういうことね。男にしてくださいなんて言うから、変に勘繰ってしまったが、ペガサスくんはまだ十歳だ。そんな隠語使うはずなかった。
「ボク、アマルガムでコップくんを守れなくて、連れ去られちゃったじゃないですか。その時から思ってたんです。もっと強くなりたいって」
「…何でオレなの? 椿さんがいるじゃない。今まで通り椿さんと鍛錬すればいいんじゃない?」
「強さの方向性です。椿さんは確かに強いです。でも気づいたんです。ボクが求める強さは、椿さんのような戦闘に特化した強さじゃなくて、仁さんのように、どんな状況にも柔軟に対応できる強さ何だと」
真剣な眼差しのペガサスくん。真剣なのはいいが、こっちはいい迷惑だ。オレはのんびりゴロゴロしていたいのだ。
「…風のバフをものにしたら考えておくよ」
互いにそれ以上何も言わず、オレはなんとなくバツが悪くてペガサスくんに背を向けて寝入った。
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