74 / 127
74
しおりを挟む
「な、何だこれは…………」
外出から帰ったヴェットは、我が家の惨状にそれ以上言葉が出てこなかった。
トラックが突っ込み壊された門扉。庭では死屍累々とばかりに警備ロボットや子飼いのチンピラどもが倒れている。
「ラッカス!」
さらに奥では自分の可愛い後継であるラッカスが取り巻き達とともに縛りあげられていた。
その横ではピグルやザッカ、異世界人達がコップを囲んで喜びあっている。その輪を遠巻きに見ていた少年がこちらに気づいて口を開いた。
「…おかえりなさい」
「「おかえりなさい」じゃない! 貴様らウチで何をやっとるんだ!」
激昂する地主がズンズンと音を立ててこちらに迫ってくる。そこで皆も地主が帰ってきたことに気づいたらしく、コップを隠すように、皆その前に立つ。
「今すぐラッカスを離せ! さもなくば…」
「さもなくば? 警察呼びます? いいですよこっちは。困るのはそっちでしょうから」
「なん…だとォ! ふざけるなよ小僧!」
ドシュッ
オレは警告だと言わんばかりに、レイピアガンを近づいてくる地主の横を掠めるように射つ。それだけで地主は腰を抜かしておとなしくなってしまった。
おとなしくなった地主に、オレ達はことの次第を話して聞かせた。
「バカな!? 嘘をつくな! この卑怯者どもめ! ラッカスがそんなことするわけないだろう! 出ていけ! 貴様ら全員この星から出ていけ!」
「…出ていくのはあんたらだ」
知らぬ存ぜぬを通すつもりらしいが、おもいっきり顔に出ている地主に、オレはそう言ってやった。
「な、ぬ、な、……」言葉が出てこない地主に対して、オレは満面の笑みで話を続ける。
「…取引をしようじゃないかヴェットさん」
「取引だと?」
怪訝な顔になる地主。
「…この星をオレに売ってくれないか? お代は……」
オレは地主の目の前で、影からとある原石の山を出してみせる。
「こ、これは…………」
「…JBストーンだよ」
「JBストーンだと? そんな高価なものがこの星で…」
「…さあ? オレはこの星で採れた何て一言も言ってないけど」
「うぐっ」
口をつぐんだ地主は今必死になって損得を考えていることだろう。
このアマルガムで採掘された物は、九対一で採掘者のものになり、残り一割が地主のものになる。つまりヴェットにはすでにこのJBストーンの山の一割の所有権があるわけだ。
地主としてこの一割の山で手を打つ選択もある。何せこの小惑星から出たJBストーンなのだから、もしかしたら探せばもっと出てくるかもしれない。
だが出てこなかったらどうだろう。採掘には人や物が必要で、人や物には金が掛かる。待っているのは借金地獄かもしれない。
ならば手っ取り早くこのJBストーンの山全部をもらってしまえば、一生遊んで暮らせるじゃないか。結論、
「いいだろう。この星、貴様に売ってやる」
外出から帰ったヴェットは、我が家の惨状にそれ以上言葉が出てこなかった。
トラックが突っ込み壊された門扉。庭では死屍累々とばかりに警備ロボットや子飼いのチンピラどもが倒れている。
「ラッカス!」
さらに奥では自分の可愛い後継であるラッカスが取り巻き達とともに縛りあげられていた。
その横ではピグルやザッカ、異世界人達がコップを囲んで喜びあっている。その輪を遠巻きに見ていた少年がこちらに気づいて口を開いた。
「…おかえりなさい」
「「おかえりなさい」じゃない! 貴様らウチで何をやっとるんだ!」
激昂する地主がズンズンと音を立ててこちらに迫ってくる。そこで皆も地主が帰ってきたことに気づいたらしく、コップを隠すように、皆その前に立つ。
「今すぐラッカスを離せ! さもなくば…」
「さもなくば? 警察呼びます? いいですよこっちは。困るのはそっちでしょうから」
「なん…だとォ! ふざけるなよ小僧!」
ドシュッ
オレは警告だと言わんばかりに、レイピアガンを近づいてくる地主の横を掠めるように射つ。それだけで地主は腰を抜かしておとなしくなってしまった。
おとなしくなった地主に、オレ達はことの次第を話して聞かせた。
「バカな!? 嘘をつくな! この卑怯者どもめ! ラッカスがそんなことするわけないだろう! 出ていけ! 貴様ら全員この星から出ていけ!」
「…出ていくのはあんたらだ」
知らぬ存ぜぬを通すつもりらしいが、おもいっきり顔に出ている地主に、オレはそう言ってやった。
「な、ぬ、な、……」言葉が出てこない地主に対して、オレは満面の笑みで話を続ける。
「…取引をしようじゃないかヴェットさん」
「取引だと?」
怪訝な顔になる地主。
「…この星をオレに売ってくれないか? お代は……」
オレは地主の目の前で、影からとある原石の山を出してみせる。
「こ、これは…………」
「…JBストーンだよ」
「JBストーンだと? そんな高価なものがこの星で…」
「…さあ? オレはこの星で採れた何て一言も言ってないけど」
「うぐっ」
口をつぐんだ地主は今必死になって損得を考えていることだろう。
このアマルガムで採掘された物は、九対一で採掘者のものになり、残り一割が地主のものになる。つまりヴェットにはすでにこのJBストーンの山の一割の所有権があるわけだ。
地主としてこの一割の山で手を打つ選択もある。何せこの小惑星から出たJBストーンなのだから、もしかしたら探せばもっと出てくるかもしれない。
だが出てこなかったらどうだろう。採掘には人や物が必要で、人や物には金が掛かる。待っているのは借金地獄かもしれない。
ならば手っ取り早くこのJBストーンの山全部をもらってしまえば、一生遊んで暮らせるじゃないか。結論、
「いいだろう。この星、貴様に売ってやる」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった
盛平
ファンタジー
パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。
パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
碧眼のマリオネット
ショー・ケン
ファンタジー
オートマタ技術、知識とその技師こそがもっともすぐれた地位を持つ世界。
それに疑いを持つある少年。復讐心にかられるプラグ、彼は幾度も更生しようとしたが、その力のむきどことは常に不安定だった。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
異世界帰りの俺は、スキル『ゲート』で現実世界を楽しむ
十本スイ
ファンタジー
ある日、唐突にバスジャック犯に殺されてしまった少年――同本日六(どうもとひろく)。しかし目が覚めると、目の前には神と名乗る男がいて、『日本に戻してもらう』ことを条件に、異世界を救うことになった。そして二年後、見事条件をクリアした日六は、神の力で日本への帰還を果たした。しかし目の前には、日六を殺そうとするバスジャック犯が。しかし異世界で培った尋常ではないハイスペックな身体のお蔭で、今度は難なく取り押さえることができたのである。そうして日六は、待ち望んでいた平和な世界を堪能するのだが……。それまで自分が生きていた世界と、この世界の概念がおかしいことに気づく。そのきっかけは、友人である夜疋(やびき)しおんと、二人で下校していた時だった。突如見知らぬ連中に拉致され、その行き先が何故かしおんの自宅。そこで明かされるしおんの……いや、夜疋家の正体。そしてこの世界には、俺が知らなかった真実があることを知った時、再び神が俺の前に降臨し、すべての謎を紐解いてくれたのである。ここは……この世界は――――並行世界(パラレルワールド)だったのだ。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
昔助けた弱々スライムが最強スライムになって僕に懐く件
なるとし
ファンタジー
最強スライムぷるんくんとお金を稼ぎ、美味しいものを食べ、王国を取り巻く問題を解決してスローライフを目指せ!
最強種が集うSSランクのダンジョンで、レオという平民の男の子は最弱と言われるスライム(ぷるんくん)を救った。
レオはぷるんくんを飼いたいと思ったが、テイムが使えないため、それは叶わなかった。
レオはぷるんくんと約束を交わし、別れる。
数年が過ぎた。
レオは両親を失い、魔法の才能もない最弱平民としてクラスの生徒たちにいじめられるハメになる。
身も心もボロボロになった彼はクラスのいじめっ子に煽られ再びSSランクのダンジョンへ向かう。
ぷるんくんに会えるという色褪せた夢を抱いて。
だが、レオを迎えたのは自分を倒そうとするSSランクの強力なモンスターだった。
もう死を受け入れようとしたが、
レオの前にちっこい何かが現れた。
それは自分が幼い頃救ったぷるんくんだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる