近頃よくある異世界紀行

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「な、何だこれは…………」
 外出から帰ったヴェットは、我が家の惨状にそれ以上言葉が出てこなかった。
 トラックが突っ込み壊された門扉。庭では死屍累々とばかりに警備ロボットや子飼いのチンピラどもが倒れている。
「ラッカス!」
 さらに奥では自分の可愛い後継であるラッカスが取り巻き達とともに縛りあげられていた。
 その横ではピグルやザッカ、異世界人達がコップを囲んで喜びあっている。その輪を遠巻きに見ていた少年がこちらに気づいて口を開いた。
「…おかえりなさい」

「「おかえりなさい」じゃない! 貴様らウチで何をやっとるんだ!」
 激昂する地主がズンズンと音を立ててこちらに迫ってくる。そこで皆も地主が帰ってきたことに気づいたらしく、コップを隠すように、皆その前に立つ。
「今すぐラッカスを離せ! さもなくば…」
「さもなくば? 警察呼びます? いいですよこっちは。困るのはそっちでしょうから」
「なん…だとォ! ふざけるなよ小僧!」
 ドシュッ
 オレは警告だと言わんばかりに、レイピアガンを近づいてくる地主の横を掠めるように射つ。それだけで地主は腰を抜かしておとなしくなってしまった。
 おとなしくなった地主に、オレ達はことの次第を話して聞かせた。
「バカな!? 嘘をつくな! この卑怯者どもめ! ラッカスがそんなことするわけないだろう! 出ていけ! 貴様ら全員この星から出ていけ!」
「…出ていくのはあんたらだ」
 知らぬ存ぜぬを通すつもりらしいが、おもいっきり顔に出ている地主に、オレはそう言ってやった。
「な、ぬ、な、……」言葉が出てこない地主に対して、オレは満面の笑みで話を続ける。
「…取引をしようじゃないかヴェットさん」
「取引だと?」
 怪訝な顔になる地主。
「…この星をオレに売ってくれないか? お代は……」
 オレは地主の目の前で、影からとある原石の山を出してみせる。
「こ、これは…………」
「…JBストーンだよ」
「JBストーンだと? そんな高価なものがこの星で…」
「…さあ? オレはこの星で採れた何て一言も言ってないけど」
「うぐっ」
 口をつぐんだ地主は今必死になって損得を考えていることだろう。
 このアマルガムで採掘された物は、九対一で採掘者のものになり、残り一割が地主のものになる。つまりヴェットにはすでにこのJBストーンの山の一割の所有権があるわけだ。
 地主としてこの一割の山で手を打つ選択もある。何せこの小惑星から出たJBストーンなのだから、もしかしたら探せばもっと出てくるかもしれない。
 だが出てこなかったらどうだろう。採掘には人や物が必要で、人や物には金が掛かる。待っているのは借金地獄かもしれない。
 ならば手っ取り早くこのJBストーンの山全部をもらってしまえば、一生遊んで暮らせるじゃないか。結論、
「いいだろう。この星、貴様に売ってやる」
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