近頃よくある異世界紀行

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「もう無理じゃ~!」
 椿さんより先に源さんが爆発した。
 部屋に籠ってまだ一日である。源さんが駄々をこね始めた。全く、大人のくせに忍耐力の足りない人だ。オレなら一ヶ月でも二ヶ月でも部屋に籠っていられるぞ。
 これに呼応するようにチェスに集中していた椿さんもまた素振りを始めてしまった。オレはペガサスくんと顔を見合せ嘆息するしかない。
「…っで? 何がしたいんですか?」
「カジノじゃ」
 でしょうね。またペガサスくんと嘆息していると、源さんが否定する。
「違うぞ。ワシがカジノに行きたいからじゃないぞ。……いや、少しは行きたい気持ちもあるが」
「…じゃ、なんなんです?」
「カジノはイカサマ防止のために魔法封じの結界が施されておるじゃろう。あそこにおればあやつらも下手なことはできん」
 う~む。ただカジノで遊びたいだけのくせに、一理あるのが何かむかつく。だがここで行かないという選択をしても、源さんと椿さん二人だけで行ってしまいそうなんだよなぁ。しばし考え、四人でカジノに行くことに。ペガサスくんと一緒に嘆息する。何だかため息ばかりである。

 何をするか訊くまでもなく、椿さんはカジノに入ってすぐ、スロットマシンの前に行って座ってしまう。わき目もふらずというか、自分に正直というか、相も変わらず一直線な人である。
「…何をやります」
「ワシはルーレットでリベンジじゃ」
 そう言って源さんはルーレット台へ向かって行った。こちらも変わらずである。っていうかリベンジってことは負け越してるんだなぁ、源さん。
「…オレら何する?」
「何しましょう?」
 前回はカジノに来ても遊ばなかったからなぁ。ペガサスくんは優秀だから、教えれば何でもこなすだろうけど、カジノなんてカジノ側が勝つようにできてるし、ここのカジノは未成年者でも遊べるが、一日五百VCとホントにお遊び程度だからなぁ。
 カジノ内をペガサスくんとブラブラ歩いていると、他で見ないものを見かけた。
「…スライムメイズ?」
 何でもスライム十体が迷路をどれだけ速く出口にたどりつけるか競うレースらしい。
 迷路はかなりデカく、テニスコートぐらいある。入口が十ヶ所で出口が一ヶ所。迷路自体もかなり細かいといえばいいのか、かなり複雑に入り込んでいて、こんなの出口までたどり着けるか? と疑ってしまうレベルだ。
 少し見学していると、五十センチくらいはあるスライム達が、まるで出口の場所が分かっているかのように、身体を伸び縮みさせながらグングン進んで行く。スライム達が全員ゴールすると、迷路は形を変えて、今一等を獲ったスライムの入口が、必ずしもまた一等になるわけじゃなさそうだ。……ちょっと面白そう。
「…ペガサスくん。アレで負けた方が勝った方にジュースを奢るってのはどう?」
「面白そうですね」
 オレとペガサスくんの間で火花が散った。
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