転生オネエ令嬢による貴婦人指南〜オネエが脇役令嬢に転生しても主役ですが何か?

カトリーヌ・ドゥ・ウェルウッド

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眠りに入って夢を見ずに目覚めるまでのあの無の中に落ちていたはずなのに、人が話す声や布が擦れる音に呼び起こされ、甘酸っぱい香りや絹のように滑らかで柔らかなものが肌に触れる感覚が意識の中に入ってくる。
きっと私は病院に運ばれて助かったのかもしれない、そう思ってゆっくり目を開けたわ。
そして、素早く閉じたの。
ええ、私の目に入ってきたのは高い天井、シャンデリア、水色と緑の間のような鮮やかな壁紙だった。
きっとまだ熱で夢の中にいるに違いないわ。
私はそう思って今度こそ目覚めると決めて目を開いたわ。
目を改めて開くと高い天井にキラキラと輝くシャンデリアが見える。
病院の貴賓室かしら?にしては天井が高くないかしら?
病院の貴賓室に入った経験がないからわからないけど。

「お嬢様が目をお覚ましになりました!!」

私を見た人がそう叫ぶや否や扉が閉まる音がした。
私はまだ頭がしっかり働いてないがマキシ丈の黒いワンピースドレスという看護師らしからぬ服装だったように思えたが、そんなことより少し起き上がって部屋の様子を見ることにした。
まず目に入ったのは立派な暖炉で、火が焚かれていて本物の暖炉で間違いなさそうだがさほど暖かい室温だとは思えなかった。
広々とした部屋には絨毯が敷いてあり、ドレッサーと立派なクローゼットがある。
病院では無さそう、大使館とかホテルに運ばれたのだろうか。
私はそう思いながら起き上がろうとしたが、なんかすごい違和感を感じる。
まず、私の肩に何か重みがあり、触ってみると栗色の美しい髪だ。
手で辿れば私の頭にたどり着く、おかしい。
私は短髪髭面のイケメンガチムチなんだがと思い、顔を触るがこれまたおかしい、ジョリジョリしないんですが。
でも肌スベスベだし、夏に焼いた肌が雪のように真っ白。
私はベッドから抜け出してドレッサー横のデカい姿見に自分をうつすことにしたわけよ。

「うん、何がどうなってんのよ」

思わず口に出てしまったわ、だって鏡に映る姿はどう見てもアラフォーイケメンガチムチではない、十五、六の乙女だ。
しかもただの乙女ではない、長い栗色の艶やかな髪に空を閉じ込めたような青い瞳、薔薇色の頬にさくらんぼのようなくちびる、これ以上の美少女を探そうにも探せないんじゃないかしら?
ほっぺを叩くが痛い、夢じゃないのかしら。
待って、私もしかして……。

「ない、棒も玉もない!!でもおっぱいはある!!」

アデュー、私のチ◯◯、こんにちはおっぱい。
そんなふうに黄昏ていると廊下からドタバタと足音が聞こえる。
火事かしら?そんなに慌てて……。
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