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1巻
1-1
しおりを挟む人生に二度目があるなんて
「シャンパンは唯一美しく酔える」
ポンパドゥール侯爵夫人の言葉だっただろうか?
あの女の名言はたいていクソよ。
二丁目でドンペリ、モエドシャンドンを飲みまくった私は美しくどころか醜態を晒しながら、ふらふら歩き、そのままトラックに撥ねられた。
一瞬の出来事だったわ。
言うなればシャンパン死というところかしら。
まぁ自業自得よね、自分が悪いんだから仕方ない、後悔なんかないわよ、やりたいように生きてきたんだから。
そう思い、私は意識を手放し天に召される(地獄なんかに落ちないわよ)はずだったのだ。
だから、目が覚めるという状況に、非常に困惑しております。
体はさして痛くない、なんか柔道で受身の練習したくらいの余韻だわ。私はゆっくりと目を開けた。
「目を覚まされましたぞ!」
渋いおっさんの声にびっくりして、目を見開くと美しい絹地に、細かな花刺繍がされた天蓋が目に入る。
私はベッドの中にいた。それも、旅行雑誌によくあるヨーロッパのホテルのスイートルームでしかお目にかからないようなお姫様ベッド。
薔薇模様の刺繍が施された絹の羽布団が私を包み込んでいる、贅沢極まりないベッドに寝ている状態……
「私に何があったのでしょうか?」
ん? 私の声、なんか変じゃない? 酒焼けしていない、すんだ美しい声……。私はとりあえず事情を知りたくて恐る恐るそばにいた外国人に尋ねた。
聴診器や薬瓶をもっておろおろしている医師らしいその人の顔を見るが、ヨーロッパ人‼ 周りはみんなヨーロッパ人。
やだわ、日本語通じるかしら? 理由はわからないけど、どこかヨーロッパ系の大使館に運ばれたの? なら思ったより軽傷だったのかも。
「お嬢様は修道院の帰りに馬車の事故にあわれて、意識がなかったのですよ」
「まぁ、そうなの……ん? 修道院? お嬢様?」
いや、今日は髭剃ってないから、どうみてもお嬢様顔ではないはず。それに修道院? 体を起こして顔をあげると視界に自分の髪が現れた。
そう、太陽の光と見間違えるような美しい黄金色の長い巻き髪が……
「……鏡はあるかしら?」
「はい、こちらを」
医師らしき人が手鏡を差し出したので、私は奪い取るようにして手鏡を覗き込んだ。
そこには金色の美しい髪に薔薇色の唇、青と紫の間のような美しい瞳を持つ絶世の美女が映っている。
少なくとも三十三歳の小太り短髪髭オネエではない。
「え! え‼ なんで!」
「落ち着いてください」
「あんた! 落ち着けるわけないでしょう!」
いやいや、誰でも小太り髭オネエがブロンドの美女になっていたら驚くにきまってるじゃない。
夢なんだろうか? なんで? なんで? なんで?
「お嬢様、失礼致しました。まだ意識を戻されてすぐでしたのに、配慮が足りませんでした。私達は退室致しますので、ゆっくりとお休みください」
そう医師は言ってみんなを促して出て行った。
が、状況はつかめない。
なぜか自分が絶世のブロンド美女になっていて、プリンセスみたいに扱われているなんて……
「はっ!」
大切なことに気づいて私は布団をめくりあげて確かめる。
「チ○コないじゃん!!!!!!」
見覚えのないものしか見えない……
「一体どういうこと⁉」
私の叫びは虚しく、華やかな部屋の壁に吸収された。
まぁ、当たり前だけど、叫んだとこで何も変わらないわけよ。
それから少しして、私はふかふかな布団の中で微睡んでいた。
きっと今は夢の中で、目覚めたら無機質な病院にいるのだろう。誰かが一一九番してくれて、救急搬送されて、私は助かったのね。
けれど、そう思ってしばらく寝ていたのに、目覚めても変わらず贅沢な天蓋付きのベッドの中だった。
仕方なく、私はベッドから出て、鏡を見つめる。そこに映るのは誰が見ても美女としか言えない、美貌の十六、十七歳くらいの若い乙女。
「やっぱり肌の美しさが違うわね……」
私は頬をパンパンと叩いてみる。きちんと痛いわ、嫌だわ、馬鹿みたいね。
ドッキリかしらと思ったけど、いくらなんでもいきなりこんなにウエストを細くするなんて無理だし、知らないうちに整形手術したって、残念ながらこんな顔にはならないわ……
何が起きたのかまったくわからないけど、酔っ払って車に轢かれたら絶世の美女になっているなんて。誰がそんなこと信じられるかしら? 少なくとも私は信じられないわ。
でも、私が信じようが信じまいが今そうなっている以上は受けいれるしかないわよね。
とりあえず私が誰で、どこにいるのか調べないといけないわ。
ベッドサイドテーブルに呼び鈴が置いてあるのに気づいて、私は鳴らしてみた。
チリリンと美しい音色が響く、なんとなくアルプスを思い出してしまうわ……牛とかヤギが来たらどうしようかしら?
「お嬢様、お呼びでしょうか」
ちゃんと召使いが来てくれて良かったわ。
「悪いけどお医者様を呼んでくださるかしら?」
「かしこまりました」
そう言って召使いが下がり、数分もしないうちに医師らしいダンディなおじさまがやってきた。
「先ほどは取り乱して失礼致しました、私はいったい何者なのでしょうか」
「……とても難しい質問ですな、何から話しましょう」
医師はそう言うと、顎髭を触りながら悩んでいるように見える。
「あなたさまはロートリング公爵家の御長女、マリー・エリザベート・ローズ・アントワネット・ドゥ・ロートリング様です」
「え?……何ですって? マリーエリザベート……長すぎるわ名前が!」
「修道院長との慈善事業についてのご会談に行かれており、こちらへ帰られる道の途中、目の前に突然現れた子供を轢かないように避けたため、馬車が横転することになったのです」
「だから少し頭が痛いのかしら。まあ痛みは大したことないけど記憶がありませんの。それが問題ですわ。とりあえずお聞きしたいのですが、ここは何という国なんでしょう? フランス? オーストリア?」
すると医師はキョトンとした顔で私を見つめている。
「フ……ランス? ……聞いたことがない国ですな」
聞いたことがない? フランスは他の言語でもフランス。もしくは近い発音じゃないかしら。
それなのになんで知らないの? 馬鹿なのかしら?
「ここはグランシュクリエ王国の首都、パギですよ」
医師は真面目な顔で言い放った。
グランシュクリエなんて知らないわ、響き的にはフランス語だわ、甘そうな名前ね。
「どの辺にある国なのかしら、地図はない?」
すると医師は壁に飾られていた地図を指差した。
見てみるけどなんかよくわからないわ、少なくとも私が知ってるのと違う。
アメリカ大陸もあるし、日本っぽい島国もあるけれど名前が全然違う……。
「わけがわからないわ……」
私がいるのはもしかして現実世界ではない架空の世界なんじゃないかしら?
名前や国名はフランス語風だわ、とりあえずフランス語を話してみて、通じたらフランス語通じる国だし、通じなければ今、日本語で話していることから推測して架空の世界にいるってわかるからとりあえず試してみましょう。
「Où est ma chatte?(私の猫はどこですか?)」
フランス語で医師に話しかけてみたけど、ぽかんとした顔で私を見ている。
「……? ……なんでしょうか?」
「なんでもないわ」
当たり前よね、フランスなんてないんだものフランス語がわかるわけないわ。
イギリスやフランスがない世界だなんて。
つまり、車に轢かれる前の私がいた世界とは違う、漫画や小説、映画なんかの世界なんじゃないかしら?
平たく言って架空の世界。
で、医師の言葉によると私は公爵夫人だか令嬢なのよね。
よくわからないけど神様が与えてくれたチャンスってことよね? セカンドライフ的な。
しかも、現世より遥かに恵まれてるわ! 明らかに裕福そうな地位ある公爵家の人間で、かつ、この美貌!
私の魂にまさにふさわしいと思わない?
なら、うだうだ悩むよりもこの素晴らしい状況を楽しむべきよね!
何をどうしたらいいかわからないけど、権力ある公爵家で財産があるとしたら、なんだって思いのままじゃない。
いっそのこと、あらゆるゴリマッチョイケメンを侍らせるハーレムを作ろうかしら!
そうと決まれば、都合が悪いところは事故の後遺症ということにしてやりすごして、お嬢様らしく振る舞えばいいのよ、得意分野じゃないの、だって前の私ったら大学で西洋文化史を教えてたんですもん。
「ありがとうございます、お医者様」
「やはり事故の後遺症で混乱なさっているようです。今はゆっくりとおやすみくださいませ」
医師はそういうと部屋から下がった。
私は呼び鈴を鳴らして侍女達を呼んだ。そして事故の後遺症で記憶が曖昧だということを伝えて、情報収集をする。
例えばこの国には絶対王政が敷かれていることや、美しく聡明な国王と王妃、三人の王子達がいること。
あやふやな多神教が国教だけど、聖職者の権威は強くないみたい。
部屋に置いてあった聖書みたいな本を読んだけど、ギリシャ神話みたいな多神教の話がつらつら書いてあったわ。
そして長い間戦争はなく、比較的安定した社会が続いているようだ。
で。私について改めて侍女達に聞いたら、ロートリング公爵家の令嬢だっていうじゃない。
マリー・エリザベート・ローズ・アントワネット・ドゥ・ロートリングという長い長い名前の公爵令嬢。
国内でも王家と並ぶ力のある貴族で、それゆえに王子の一人と婚約しているらしい。
まあまあすごい話よね、三十代のおっさんだった私が王子様と婚約なんて考えられる?
「エリザベート、お加減はいかがですか」
そんなふうに考えている時にやってきたのが、まさに私の婚約者。第一王位継承権を持つエドワード王子。
光り輝くようなブロンドにギリシャ彫刻のような彫りの深い美しい顔。
女の子なら喜ぶであろう夢の王子様らしい人物。
ええ、まったくタイプ外。
いや女子ならきっと好きなタイプよ?
でも私はやっぱりもっと男くさい、ガチムチとかゴリマッチョが好きなわけ。
だから鑑賞には良いけど、好きにはならないわね。
「エドワード殿下、このような場所にお忙しい中お越しいただき、ありがとう存じます」
王子様が見舞いにきたから、ベッドの上でだけれど、療養中の私もご挨拶をすることになった。
けど、普通は事前通達を出すわよね? 王室メンバーがくるなら。
まぁ王子様って、なんて不作法なのかしら。
「いや、婚約者を訪ねるのは重要なことですから」
「殿下のお優しい心に感謝致します」
「…………」
「…………」
話すことがなくて、無言の時間が流れる。
いやいや、何を話せというのよ?
見も知らぬ王子様と話したことある? 私は今、話してるけど。でも話のネタはないわよ、共通の話題なんてあるかしら? 私の大好物のイカの塩辛なんかぜったい食べなさそうだし。
「殿下、差し出がましいことではありますが、今の私は記憶が曖昧です。体調こそ改善してはおりますが、婚約を一度、考え直された方がよろしいかと存じ申し上げます」
王子様には悪いけど婚約破棄しないと。
だって、よくわからない世界で王子の婚約者になるなんてめんどくさいし、素敵なゴリマッチョに出会った時のためにも、泥沼みたいな関係は嫌だわ。
他人がそうなってるのをみるのは楽しいんだけど、自分がそんな目に合うのは嫌。
そう、私はこんなふうに自分勝手でわがままなの。
そんなことを考えて、ふと王子の顔を見てみたら、王子はさっきまでのお面みたいな作り笑顔ではなく、驚いた顔をして私を見つめていた。
そのまま王子が何にも言わないから、私は念には念をいれて話し出した。
「国外からどなたか良い姫君をもらわれた方が国益にもなるかと」
「え? あ?」
そんなキョドる内容?
あーた! 人の話きいてるのかしら! と、突っ込みたくなるわ。
普通、王族の結婚は国内よりも他国との結びつきを重要視していたから、国内貴族と結婚するのは結構レアなケースなのよね。
「国は安定していますが、和平を長く保つには周辺国との婚姻による同盟が有効です。国民もそれを知っていますから、強く反対はされないでしょう」
「君は、私と結婚したくないのか?」
「個人的な感情は不要です。今の私と結婚しても、国にとって利益はありません」
「エリザベート。君、どうしたんだ? まるで別人と話してるようだ、いつもならドレスや噂話くらいしかしなかったじゃないか」
「……頭をうってからすっかり考えや気持ちが変わったのです」
というか完全に別人なんだけどね。
「そうか……」
エドワード殿下は少し思案顔になる。
「君の言う通りにしようにも諸外国には適切な姫君がいない。ホーランド王国の王女は病弱でこの国に来ることすら難しいし、フロイセン王国の王女はまだ二歳だ」
「あらまあそうでしたのね、ほかにいませんの?」
「私は君に好かれていると思っていたのだが……」
「私には荷が重いかもしれないと考えるようになったのです。王太子の妻になる器ではないと」
「……私も以前はそう考えていた」
エドワード殿下はそう言うと顔をあげて、真面目な顔で見つめてきた。
「しかし今、君と話して、考えが変わった」
「え?」
「政治について話せるとは知らなかった」
「他の方もそうでしょう?」
私なんてこの世界のこと、今日産まれた赤子並みに何も知らないのよ? 比喩じゃなくてね?
ほんの少しの会話でそんなふうに思うなんて、この人馬鹿なんじゃないかしら?
「とにかく、婚約は解消しない」
エドワード殿下はそう言うと、私の手に口づけして去っていった。
思ったよりも平和ボケしてる国なのだろうか? もっと情報がないと何もわからないじゃない。
(そうだわ!)
思い至って、私は呼び鈴を鳴らした。
「お嬢様、お呼びでしょうか」
侍女が数名、すぐにやってきた。皆さん有能だわ。
「新聞を持ってきてくださる? 平民から貴族が読むものまで、とにかく全社分」
三十分も経たないうちに国中の新聞が部屋に集められてきた。
真面目な政治新聞から卑猥なエロ新聞までまぁ色々ありますこと。
とりあえず、すべて読みましょう……
幸運なことにこの国の文字や言語は日本語。
私の推測が正しいなら、ここは日本で制作された、あるいは翻訳されている小説や漫画、ゲームの世界なのかもしれない。
なぜなら新聞は十五種類もあったけど、その中身は無いに等しかった。
国民は不平もなく暮らし、貴族も政権争いらしいこともせず、文化水準は十九世紀のヨーロッパくらい、科学も同じくらいで止まっている。地図や地球儀もあり、地形もほとんど似ていて日本みたいな島国もあった、私がいるところは現実世界でいうフランスあたりだ。
そんなわけですべてが作り物の舞台のように不自然だ。
とりあえず状況を整理すると、おとぎ話みたいな平和な世界になぜか転生していて、名前がクソ長い上に、身分が高く、裕福で美女というチート級の公爵令嬢になっている。
世界観がしっかり作られていないことが幸いしてか、政治的な混乱は無に近く、絶対王政が敷かれているが不平は出ていない。
農業、工業、鉱業などバランスのよい国内環境、数年間戦争もなく平和な国。
そして私は、その王家の長男であるエドワード王子という金髪青い目のイケメンと婚約が結ばれている。
とりあえず状況はわかったわ、でもそれだけ。
私は再び呼び鈴を鳴らした。
「お嬢様、お呼びでしょうか」
やってきた侍女は速やかにお辞儀をする。
「お風呂の支度と、化粧品を見直したいから明日にでも商人を呼んでくださらない? 今までの方じゃなくてもいいから、評判のよい優秀な人にしてね」
「かしこまりました」
「あ、お風呂は水ではなくロバのミルクにしてちょうだい」
「ロ……ロバ⁉」
侍女は困惑している。あら、そんなに手に入りにくいのかしら?
「手に入らないなら牛乳で良いわ」
「かしこまりました……。至急ご用意致します」
侍女は慌てて出て行ったようだ。
ヨーロッパ系の世界なら硬水の可能性が高いから、肌荒れを避けるためにはミルクがよいだろうと思ったのよね。とくにロバのミルクはクレオパトラやポッペア、タリアン夫人などの歴史に名を残す美女達も実践してたから間違いないでしょ。
準備ができるまで、鏡に映る自分をゆっくり見ながらどんなドレスを買うのか考えようと思っていたら、侍女がお風呂の準備が出来たと告げに来た。早いわね。
やはりロバのミルクを使うという概念がないらしく、牛乳を温めたものがバスタブに入っていて、別の容器に身体を洗う用らしいお湯が用意されていた。
服を脱がされてバスタブに浸かり、海綿スポンジと石鹸で自分で身体を洗った。
シャンプーがないから、髪はお湯で洗うだけ。髪をミルクで洗うのは臭くなりそうだしね。
でも髪を洗うことに関しては改良する必要があるわね。
とりあえず湯浴みをしてさっぱりして、またフリルと造花だらけの、舞踏会にでも行くかのような華やかな部屋着に着替えると、ふと気になって大人が七人くらい入りそうな大きなクローゼットを開けた。
クリノリンというスカートの骨組みになる丸い輪っかが真っ先に見えた。クリノリンスタイルのドレスが流行したのは十九世紀頃のヨーロッパ。やっぱり十九世紀頃がこの世界のモデルなのかしら。
これも設定が甘いせいか、公爵家のクローゼットなのによくわからない収納をしているせいで、ドレスのデザインが中途半端にしかわからない。けれど、色使いとゴテゴテ度が酷いからすべて作り直させないといけないわね。酷いセンス。
何着か取り出してみると、面白いことに真新しい十八世紀のローブ・ア・ラ・フランセーズやシュミーズドレスなど、明らかに時代が異なるドレスが出てきて苦笑してしまったわ。
やっぱりあまり時代考証していない作品の世界にいるんだわ。
まさかと思い、下着がないか探してみると引き出しに収納されているのを見つけてドロワーズを広げてみた。
ああ、ドロワーズってアンクルパンツみたいなものでパンティがなかったからこれを穿いていたのよ。
「あらま、こんなとこは歴史に忠実なのね」
ドロワーズの股のところは縫われておらず開いていた。
どういうことかというと、ドレスを着た状態でトイレを済ませることができるようになっているの。
いちいち脱げないでしょ?こういうドレス着ていたら。
これじゃトイレも砂かけトイレかもしれないわ。
そんなことを考えていたら侍女達がやってきて、私はあっというまに侍女達にネグリジェに着替えさせられてベッドの中へ。
そのままぐっすり寝て、朝が来てベッドでまずいオートミールを食べて、ドレスに着替えさせられて髪を結ってもらう。
侍女達は手慣れたもので機械式人形みたいにテキパキ動いている。
どこかにゼンマイがついているんじゃないかしら?
そんなことを考えていると化粧品店の商人がやってきたと知らせが入る。私は部屋に通すように命令した。
これがまさか騒動の始まりになるなんて、私、この時は少しも思わなかったの。
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