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「で、今後の私の予定についてですけれど、特に高位貴族夫人との面会以外に予定がないのですが、こちらは何か意図があるのでしょうか?」

私は気になっていたことを聞いた。

「ええ、宮廷の有力な貴婦人達と仲良くなっていただきたいのよ」

「表向きではなく裏向きには?」

そう聞くとゾフィー皇太后は真顔になった。

「表向きも裏向きもありませんよ、ハッキリ言うならあなたの地盤はまだ固まっていないから味方を増やして欲しいというところよ、殿方や平民はあなたの美しさで魅了できても貴婦人達は一筋縄ではいきませんからね」

「そう言うことでしたら納得ですわ、最初の子は女の子かも知れませんし」
 
「あなたのお父様であるマックス公がもっと何というか、そう、体面を重んじていたらもう少し違ったのですけどね」

ゾフィー皇太后は苦虫を噛み潰したような顔をした。
ヴィクトリア女王よろしくエレガントなレースを肩にかけて可愛らしい帽子を身につけている姿にはかなり不釣り合いだ。
私は想像しうる限りの気品と上品さを保って微笑んだ。

「私の身内のことはともかくサルディーニャに良くない虫がいるようですね、早いこと駆除すべきでは」

「理由や証拠がないことにはそうもいきませんよシシィ」

「まぁ、そういったものが手に入らないなら作ればよろしいのに」

私が優美な仕草でバターを塗りながらそう微笑むとそこにいた全員が食べるのをやめて固まった。

「だってそうでしょうお義母様、ハプスブルク家を潰そうとする輩に容赦しないのに何故躊躇われるのかしら、今まで武力で押さえてきた人には見えませんわ、さらにあちらはナポレオン三世に美女を仕掛けてイタリア統一にフランスを加勢させるつもりですよ、早く手を打たないと」

「シシィ、せっかくの新婚なのだから血生臭い話はやめよう、その件は進めておくから」

「フランツの言う通りよ、シシィ、あなたは少し頑張りすぎだからもう少し気を抜いても大丈夫ですよ、皆さまからあなたの評判ばすこぶる好評ですし、私にとってあなたは可愛い姪でもあるし、今は娘でもある訳だから気を張りすぎて体調崩したら大変だもの、朝ごはんが終わったらお庭を二人で散歩したらどうかしら?」

「ゾフィー、名案だと思うわ、シシィ、陛下と薔薇でも見てきたらどうかしら、あなたバイエルンの薔薇って言う渾名で呼ばれてるわよ」

「良かったわバイリッシュボイリッシュ(バイエルンの田舎娘の意味)って呼ばれてなくて」

私はそう言うと少し冷めたコーヒーを飲み干した。
生クリームが中途半端に足りなかったから明日からは増やして貰おう。
そんなこんなで私達は庭園を散歩することになりました。
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