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爽やかな朝というにはまだ早い時間。
掛け布団が動いてフランツが起きたんだなぁと思うがこちらは体のリカバリーが追いついていないのでまだ寝てるフリをすることに決めた。

「シシィ、大丈夫かい」

しかし声をかけられてしまっては起きるほかないだろう。
私はめんどくさいと思いながらもゆっくりと眠そうに、実際に眠いのだが起きることになった。

「おはよう、フランツ、今日の公務って朝早かったのかしら?」

「いや、でも今起きないと二人きりの時間が取れないから」

フランツは頬を少しばかり赤くして私に言う。
まぁかわいいところあるじゃない?

「あらフランツったら顔が赤いわよ、二人っきりなのはベッドでも一緒でしょ、でも私も起きたいわ、身支度をしてしまいたいのよ」

「あぁ、ごめん気づかなくて」

するとフランツは女官を呼び私の着替えやら身支度を行うように指示した。
そしてその間に朝食を用意するよう命令している。
やるじゃない、朝からお腹空いたわ。
私はその場で下着やら何やらを脱ぎ、ローズウォーターに浸した布で身体を拭き、最後にスミレのコロンを仕上げとして纏った。
スッキリしたわ。
お風呂に入りたいとこだけどそれは後にして下着を取り替え、朝食用のドレスに着替えた。

「シシィ、そのなんて言うか……」

「美しい?ありがとう」

「も、もちろんそうなんだけどもう少し恥じらいがあっても」

「フランツ何言ってるのよ、昨日充分見たんだから恥ずかしがらないでちょうだい、さぁ一緒に朝食を食べましょうよ」

私達は席について、美味しそうな朝食を二人きりでいただくことにした。

「いつも思うけど、宮廷のパン美味しいわよね」

「そう?ならよかった」

「あら、ソーセージがあるわ、フランツ食べる?」

「食べないなら貰うよ、嫌いだった?」

「いえ、昨日充分似たようなものはいただきましたからね」

「ぶほぉっ」

フランツはなぜかむせてしまったようで、慌てて背中をポンポンしてあげました。
新妻らしいでしょう。

「シシィ、そう言うジョークは……」

「このハム美味しいわ、あなたも召し上がった?」

「僕の話聞いてる?」

「ええ、聞いてますわ、でも本当のことだからいいじゃないの、今日も朝から仕事じゃないの?何を今してるの?」

「いや、ハネムーン中だから朝から取り掛かるような仕事はないよ」

おや、実史と違うわ、なぜかしら。
あっ、クリミア戦争が早期に終わったからだわ。

「シシィと結婚する前にパリ条約を結んでクリミア戦争は終わってるし、今回の結婚で民族独立運動も一時的とは言え、下火になってるからね」

「良かったわ、それじゃ……」

ドアをノックする音についで女官から

「ゾフィー皇太后とルドヴィカ王女がご挨拶にいらっしゃいました」

「お通しして」

私がそう言うや否や扉が開き、二人が入ってきた。

「まぁ、なんて美しく幸せそうなカップルなのかしら」

「皇太后様、お母様、ごきげんよう、これも全て采配していただきました皇太后様の心配りによるもの、深く感謝致します」

私の丁寧な挨拶に気を良くしたのか邪魔したら悪いから失礼しましょうとおっしゃるので引き留めて一緒に朝ごはんを食べないかお誘いしてみた。
すると二人ともご一緒したいとのことで席を増やすことになった。

「お義母様に謝らなくてはいけないことがありましたし」

私は席の準備中にゾフィー皇太后に小声で告げた。

「あらなんでしょうシシィ?」

「せっかく選んでいただいたベッドのシーツ、マットレスが一晩で台無しになりましたの、フランツと私からお詫びしますわ」

「素晴らしいわ」

ゾフィー皇太后が知りたかったことを遠回しに申し上げて好奇心を満足させてあげましたが、素晴らしいわはないと思うわ。
でも、結婚が正式に結ばれた証に高額のお金が私に授かれることやゾフィー皇太后が2万グルテンなのに私が10万グルテンという高額な予算をもらうことからも重要なことなので気持ちはわかるわ。
そんなこんなで用意が出来て私達は席について食事を始めた。

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