上 下
2 / 62

1

しおりを挟む
しかし私は目がしっかりと開いて、部屋にいることに気づいた。
一命を取り留めた感じか……。
海外旅行保険、医療保険入っていて良かった。
私は身体に力を入れて起き上がってみたがどこもいたくない。
目の前のお部屋は可愛らしいインテリアで病院というよりはエレガントな子ども部屋という雰囲気で本やら積み木、ぬいぐるみが散らかっている。
とりあえず誰かに何がどうなってるか聞かないといけないわね。
私はベッドから降りた。
その時、この目で自分の足が見えて、すぐ二度見することになった。
毛深く、筋肉質だった私の足は、ツルツル美肌で小さくなっているの、子供みたいに。
恐る恐る大きな鏡に自分の姿を映してみると13歳くらいの可憐な乙女、美少女がそこにいた。

「ちょっと!!どういうことっ!! 」

自分の叫びに二重に驚くことになる。

「私、ドイツ語喋ってる……いや日本語で話してるつもりなのになんで?なんでよ」

そう、私の話す言葉が話すつもりはないのにどう考えてもドイツ語という事態にとりあえず冷静になろうとベッドに腰掛けた。

いったい私に何が起きてるの?ドッキリ?いや違う、ドッキリならいきなりドイツ語私自身が話出したりしないわ。
そうよ、そうだわ、きっと今流行りの悪役令嬢とか聖女とか恋愛ゲームのヒロインとか小説の主人公に転生したに違いにないわ!! 
そういうの読んだことあるもの。
なら、この姿、環境も納得できるわ。
フィクションの世界ね、ある意味死ぬ時の夢みたいなものかしら。

私が痛めたのは頭じゃなくて胸だったんだから、頭がおかしくなったんじゃないだろうし。
とにかく今はドイツ人のかわいい女の子よ私。
私はもう一度鏡の前に立ってみた。
栗色の長い髪に可愛いドレスが似合っている。
これでブロンドだったら不思議の国のアリスみたいだったのに。
でもピーターパンのウェンディみたいだわ服も。
すると、ガチャって扉が開く音がして私は振り返った。

「シシィ!! 大丈夫なの?」

ドイツ人のおばさんが大きな声で映画『風と共に去りぬ』のエキストラです!みたいな服装で話しかけてきた。

「ごきげんよう……」

とりあえず挨拶をしてみた、だって誰なのかわからないんだもの。

「どこも痛くない?まぁ、大丈夫そうね、木登りは二度としてはいけないわよ、いいわね?しばらくは部屋から出ないように」

そう言いつつ、このおばさんは私を優しく抱きしめてきた。

「あぁ、まだ意識がはっきりしてないのね、まだ寝てなさい」

そう言われたので私はベッドに強制的に戻らされて眠ることになった。
おばさんは部屋から出ると

「へレーネ、シシィは無事よ、マックスったら肝心な時にいないんだから!! 」

とベッドで寝てる私に配慮皆無な音量で喋っているのが聞こえる。
いや、いいんだけど私、一体誰なのよ?
もうっ誰よ、不幸になると自分が何者かわかるなんてほざいた人は。
私、不幸になったとたんに自分が誰かわからなくなったんですけども。
私はそんなことを思いながら寝返りをうつと、ふと、おばさんの言ったことがリフレインしてきた。
シシィ!!大丈夫なの?という私への呼びかけ、
それにへレーネやマックスという名前。
まさか、そんなはずは。
自分が思い浮かんだ仮説を打ち消そうと思ったがあまりにも似ている。

そう、私はシシィなのかもしれない。
へレーネという姉がいて、変わりものの父親マックス、
そして皇太后の姉妹である母。
私はその娘であるシシィ、つまりエリーザベト・アマーリエ・オイゲーニエ・フォン・ヴィッテルスバッハ、ヘルツォーギン・イン・バイエルン、のちに悲劇の皇妃と呼ばれるエリザベート皇后に。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

処理中です...