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部屋は一瞬、緊迫したが私が続けて紙とインクを出したので直ぐにガラスペンだとみんな気づいて空気は緩んだ。
簡易的に置かれた無機質テーブル、そう部屋に不釣り合いなシンプルなテーブルに紙とインクを置いて書き出したの。

書いたものを刑事さんに渡したわ。

「これはどういうことですか?」

「内密にしてください、でもそこから大分容疑者を絞れるはずですわね」

私はガラスペンの先を丁寧に紙で拭うとレティキュールにしまった。

「つまり、これが決めてだと思われるんですね」

「ええ、でも早かれ遅かれすぐに犯人はわかると思いますよ」

私は色々考えて刑事さんに伝えてお暇した。

「あら、あなたがカトリーヌさんかしら?」

書斎から出てきたのは比較的顔立ちの整った同じくらいの娘さんだった。
綺麗な顔立ちと言ってもよいですが個性の煌めきがなく影の薄い女だったわね。

「あなたは?」

「あらごめんなさい、渋谷です、前にカトリーヌさんはこちらで働いてらしたんですよね」

まったく悪そうに思ってないどころか薄ぼんやりした感じで聞いてきたわ。

「ええ、そうよ、取り調べ終わったの?」

「ちょうど今終わったんですけど……」

「けど?」

「事件には関係なさそうなんですけど、山白さんが今日お休みなのに来ていて、演奏中に洋館に入っていくのを見たんです」

「なんですって?」

私はびっくりして聞き返した。

「私、持ち場が離れのビリヤードルームだったんですけど皆さん中に入って見学はできないので暇していてぶらぶらしてたら裏口の窓から山白さんが庭から洋館の玄関にいくのを見たんです」

「それで?」

「それだけでしたわ、でもそのあとすぐに幽霊騒ぎがあって……」

「まぁ」

「幽霊が本当にいるのかしら怖いわ」

「それなら一度センターに戻った方がいいんじゃないかしら?」

そう促すと挨拶もなく渋谷さんはセンターに向かっていたの。
私は控え室に戻ると紅茶を淹れ直してゆっくり考え直すことにしたわ。
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