「名建築で殺人を」アカンサス邸の殺人〜執筆者カトリーヌの事件簿

カトリーヌ・ドゥ・ウェルウッド

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警察の殿方を2階の部屋に案内し、とにかく誰も出さないように警備員に指示を出した。
しばらくすると呼んでいた警察が来て現場検証とやらが始まることになり、私は追い出されて控え室で待つことになった。

「で、なんでわたくしの控え室に皆さんいらっしゃるのかしら?」

控え室にはノリちゃん、小泉さん、ももちゃん、花梨さん、宮内さん、磯野さんがソファや椅子に座りさんざめいている。
何も知らなければ貴婦人の訪問会のように見えるかもしれない。
テーブルにはももちゃんが余ったクグロフやサンドイッチを並べ、私も紅茶を淹れて優雅なひととき、サロンの女王のような状態だ。

「だって他に行くとこないし、一人一人事情聴取とかするからみんなでいた方が安全よね、殺人鬼がうろついてるかも知れないじゃん」

花梨さんはそういうとウワバミのようにクグロフを飲み込んだ。

「日富姐さんから聞いたんだけど亡くなったのは隣住んでる高山康二さんよ、カトリーヌに話したお金持ちのイケオジ」

小泉さんはそういうと、どこかにお酒がないか探し出した。

「え?高山康二?うちの社長じゃん」

そう言ったのは磯野さんだった。

「え?今勤めてるIT系の?」

「そうそう、まぁ女癖悪いって評判だったわよ、社内でも」

磯野さんはそういうとタバコを吸いに行くと言い部屋を出て行った。

「園内禁煙なんだけど大丈夫かしら?とにかく事件を整理して考える必要があるわね、だってピースが揃ってないパズルみたいなんですもの」

私はそういうとマカロンを一口でいただいた。
フランボワーズと薔薇の香りが口の中に広がり、頭が冴えてくる気がした。

「Nous devrions penser aux cas de meurtre dès le début」

「飲み込んでから話しなさい」

すかさず宮内さんがツッコミを入れた。

「つまり、ことの始まりから整理して話しましょう、まず殺されたのはIT会社の社長である高山さん、お金持ちね、女癖も悪いということだから、ありがちなのは痴情の縺れかお金問題での殺人ってとこかしら」

私がそういうとみんなウンウンと頷いている。

「最初に塔で幽霊騒ぎがあったわけだけど、幽霊を見た人はここにはどれくらいいるのかしら?手を挙げて」

すると、全員が手を挙げた。

「あらまあ、みんな見たのね、じゃあむしろ幽霊じゃなさそうよね、真昼間に幽霊が出て沢山の人に見られたというより何らかのトリックがあったと考えるのが自然だと思うのよ」

「じゃあカトリーヌ、どんなトリックを何のために使ったというの?」

「今はまだはっきりしないけど、殺人のためでしょうね」

私の声はワニスによって艶やかに輝く腰壁に反響し、不思議な預言のように響いた。

トントン!!

何者がドアをノックしてきた、
私達はもしものために一斉に構えた。
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