「名建築で殺人を」アカンサス邸の殺人〜執筆者カトリーヌの事件簿

カトリーヌ・ドゥ・ウェルウッド

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え?私の歌?
大好評に決まってるじゃない?
音大卒よ私。
美しいタイルとコリント式の柱が並ぶベランダで
私が歌うとみんな静まりかえっていたわね。
歌い終われば大喝采だったわ。
歌ってるときに今日おやすみの窓口さんの山白さんがいたし、あと中学の同級生の花梨さんに宮内さん、磯野さんがいたのが見えたわ。
あと高校の同級生で今は歯科助手のノリちゃんも来てくれてるわね、ありがたいけど全身ディオールなのは悪趣味じゃないかしら?
みんな拍手してくれて、アンコールも歌ったのよ。
プッチーニの私のお父さんを歌ったの。
チャリティーだからかなり募金も集まったみたい。
で、歌い終わればすぐに写真撮影を頼まれたからそのまま外履きに履き替えて写真に応じたの。
やっとこさ解放されたから、ももちゃんのケータリングテーブルに直行して紅茶をいただきながらサンドイッチとマカロンをつまむことができたわ。

「一体、どこからあんな声が出るの?」

小泉さんが無線機を持ちながら私のとこまで来て話しかけてきた。

「声帯からよバカね、それよりみんな監視に回ってるの?」

「そう、私は庭、丘田さんだけセンターでみんな配置についてる、日富姐さんは一階、安堂さんは和館、ニ階は封鎖してるからいないわ、警備さんにも庭に来てもらってるし、離れのビリヤードルームはあの新しくきた渋谷さんがいるはず」

「ニ階封鎖してるの?」

「ええ、あなたがバルコニーで歌っている間、上のバルコニーに人がいたら台無しだから閉鎖してるのよ、2階を開けるのはそう、今からやる学生だけの四重奏が終わってからの予定よ」

「そうなのね、あら、小泉さんあそこにいるニヤニヤこっち見てるスケベそうな男はどなた?まるで私の下着姿でも見てるみたいな顔だわ」  

私を見てニヤニヤしてるその男は見上げるくらい背が高く体も大きく見事な逆三角形の体型をしていた。
日に焼けていて何かスポーツをしている、そんな感じだったわ。

「あら知らないのカトリーヌ、ラグビーの選手よ、隣の大学で将来有望でTVにも出てたわ」

「そうなの、それよりあそこに座ってる人は?」

私がふと気になったのは椅子に座って紅茶を飲んでるスーツの男性。
特徴はそれしかないんだけどなんだか奇妙な感じがする。

「あの人?知らないけど何か?あんまり特徴がない人だけど」

「こんなに特徴がある人だらけなのに特徴がないなんて変よね」

「カトリーヌさん、小泉さん食べてますか?」

「あら、ももちゃんじゃないの、私はマカロンを食べてるわ、クリームじゃなくてコンフィチュールを挟んでるのが良いわね果汁感あるわ」

私はももちゃんに薔薇のように微笑んでみせた。

「ももちゃん、私は監視中だからカトリーヌみたいには食べれないわ」

「演奏始まれば誰もこちらは見ないですから食べましょうよ、私も食べようと思って持ってきました」

「さすがももちゃんね、小泉さんも座って食べましょうよ、どうせ何も起きないわよ」

私がそういうと小泉さんも観念して座り、みんなでももちゃんが持ってきたクグロフに生クリームをつけながらパクパク食べ出したの。
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