「名建築で殺人を」アカンサス邸の殺人〜執筆者カトリーヌの事件簿

カトリーヌ・ドゥ・ウェルウッド

文字の大きさ
上 下
8 / 19

6

しおりを挟む
確かにいつものような和気藹々というより、何かギクシャクしてるようにも見えるけど、今日はイベントの日だから何かと緊張してるのでしょう。
小泉さんが大袈裟に話してるだけかも知れないわね。

「あらウェルウッドさん、お久しぶり、元気だった?」

「センター長お元気でしたか?」

「まぁ……なんとかやってます」

すこしセンター長が言い淀んだからやっぱりセンター内の人間関係が面倒くさい感じではあるのね。

「そしたら私、ももちゃんに会ってくるわ、庭にいるのかしら?あぁ、こちらみなさんで召し上がってね、ラデュレのマカロンは小泉さんが持ってるわ、あとマリアージュフレールのブランエローズとヒマラヤの薔薇ね、あとホテルリッツのコーヒー、それからスミレの佐藤漬け」

私は色々渡すものをテーブルに乗せていく。

「カトリーヌちゃんがいなくなってからセンターのエレガントさが欠けてしまって寂しかったのよ」

「当たり前ね、じゃあ皆さま今日はよろしくお願いします」

私はそう言ってセンターを出た。

「じゃあこのまま庭に抜けましょう」

小泉さんは私のドレスの裾裳を持ちながら言った。

「今日はどんなメニューなのかしらね?」

「聞いた話だとコーヒーと紅茶にフィンガーフード中心だと聞いてるけど」

「キャビアが食べたいわ」

「それはないと思うわ」

私達はそんな会話をしながら庭へと歩いていく。
立派なヒマラヤ杉の下を通りながら青々とした青葉の甘い香りに辺りが包まれ暖かな日差しが明るく照らしている。

「ちょうど良いお天気で良かったわ、暑くもなく寒くもなく……あら、ももちゃん!!」

私は庭で忙しそうにテーブルセッティングをしているももちゃんに声をかけた。

「あぁカトリーヌさん、素敵なべべ着てるじゃないの」

「ありがとう、素敵なのはドレスだけじゃないのもわかってるわ、さて今日のメニューは何かしら?」

「今日はね、りんごとスモークハムとカマンベールのオープンサンド、きゅうりとサーモンのサンドイッチ、パテドカンパーニュ、ケイジャンチキン、シューアラクレーム、ショコラエクレア、クグロフ、マカロンです、カトリーヌさんがくるからクグロフとマカロンは頑張って作りましたよ」

「まぁありがとうももちゃん、どれも美味しそうだわ」

「カトリーヌさんは今日は何を歌うんですか?」

「オペラからいくつか歌うわ、ヴェルディの運命の力からパーチェでしょ、あと18世紀の作品だけど19世紀にもよく演奏されたドン・ジョバンニからバッティを歌うわ、あとファウストの宝石の歌もね」

私はそこでリハーサルしなきゃと思い出して
控え室に戻って発声練習して、近くの音大の学生さんが伴奏をしてくれることになっていたからしっかり合わせをして準備万端にしていたって訳。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰色の世界の執行人~首斬りとホムンクルス~

きょろ
ファンタジー
貧乏商人アッシュは、金貸し屋のヴェロニカへの借金返済が迫っていた。 しかし、報酬を受け取る筈だった依頼人の男が死んでおり、アッシュの報酬は未払い状態。 返済の当てがなくなったアッシュであったが、ヴェロニカは死体の傍らにある「阿片」に金の匂いを嗅ぎつけた。 “元諜報員”のヴェロニカと“元死刑執行人”のアッシュ。 共に知られたくない過去を持つ二人が、灰色に染まった都市に潜む金、阿片、宗教派閥の闇へと巻き込まれていく――。 ミステリー✖サスペンス✖ダークファンタジーの新感覚ストーリー。

『沈黙するグラス』 ~5つの視点が交錯する伏線回収ミステリー~

Algo Lighter
ミステリー
その夜、雨は静かに降り続けていた。 高級レストラン「ル・ソレイユ」で、投資家・南條修司が毒殺される。 毒はワインに仕込まれたのか、それとも——? 事件の謎を追うのは、探偵・久瀬真人。 彼はオーナー・藤倉俊介の依頼を受け、捜査を開始する。 最初に疑われたのは、料理長の高梨孝之。 だが、事件を深掘りするにつれ、違和感が浮かび上がる。 「これは、単なる復讐劇なのか?」 5人の視点で描かれる物語が、点と点をつなぎ、やがて驚愕の真実が浮かび上がる。 沈黙する証拠、交錯する思惑。 そして、最後に暴かれる"最も疑われなかった者"の正体とは——? 伏線回収型ミステリーの真髄、ここに開幕。

白が嫌いな青~剣と密室の頭脳戦~

キルト
ミステリー
【決して瞳を合わせてはいけない】 『魔眼病』瞳を合わせただけで感染する奇病が蔓延する世界。 偶然出会った孤独な男女はある約束を交わした。 お互いに嘘をついたまま次第に惹かれ合う二人。 その幼い感情が恋と呼ばれ始めた頃……想いを伝えられないまま互いの記憶を失くし突然飛ばされた。 女は密室で『断罪ゲーム』と呼ばれる推理ゲームに巻き込まれ。 男は異世界で記憶を取り戻す戦いに巻き込まれる。 ミステリーとファンタジー。 人々の嘘と恋が交わる時、世界の謎が明かされる。 ※女主人公(サヤカ)の生き残り推理ゲームと  男主人公(優介)の記憶を取り戻す異世界バトルが交互に描かれています。  目次の最初に名前を記載しているので参考にして下さい。  全三十話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

失くした記憶

うた
ミステリー
ある事故がきっかけで記憶を失くしたトウゴ。記憶を取り戻そうと頑張ってはいるがかれこれ10年経った。 そんなある日1人の幼なじみと再会し、次第に記憶を取り戻していく。 思い出した記憶に隠された秘密を暴いていく。

転生って異世界じゃないの?!サスペンスドラマに転生だなんて誰得よ。

藤原遊
ミステリー
「ただのモブキャラのはずだった―― でも、物語が私を“主人公”に呼び込んだ」 転生先は、大好きだったサスペンスドラマの世界!? そこには、現代版“モリアーティ”と、 彼を追う刑事――“シャーロック”神崎の姿があった。 次々と起こる事件に巻き込まれる菜月は、 “観察者”として物語の結末を知っている――はず、だった。 しかし、ドラマの筋書きから外れた出来事が、 彼女を本当の物語の“創造者”へと変えていく。 「俺にとって、君は特別な存在だ―― ずっと、隣にいてほしい」 物語は、ドラマの“その先”へ―― 観るだけだった世界で、 “私”として生きるための新たな物語が始まる。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

処理中です...