「名建築で殺人を」アカンサス邸の殺人〜執筆者カトリーヌの事件簿

カトリーヌ・ドゥ・ウェルウッド

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「最初はバッスルスタイルにしようと思ったのだけど、ここの通路、パーテーションで区切ってるから狭くて歩きにくいだろうと思ってクリノレットにしたのよ」

「なんかすごい発色の緑ね」

「あぁ、19世紀に流行したパリスグリーンと同じ緑にしたのよ、今じゃパリスグリーンは使えないから」

「使えない?」

「ヒ素化合物なのよ、このグリーンは」

「なんでそうな物騒なものが流行ったの?」

「こういう鮮やかな緑は出せなかったのよ」

私は鏡に映る緑色のドレスを見て微笑んでみた。

「もちろんこれは違うわ、安全なものよ、さぁエメラルドを身につけたからこれで完成ね」

私はネックレス、イヤリング、指輪、髪飾りのパリュールケースを閉じる。
どこからどう見ても麗しい貴婦人、いえ、姫君に見えるに違いないわ。
私はレティキュールと日傘を持ち、帽子を最後髪飾りが乱れないように注意しながら被り、サービスセンターに挨拶に向かった。

「他にも、新しくはいったおっさんは日和見的で隙あらば庭で居眠りしてるし、何かと問題だらけなのよ」

小泉さんはそういうと私のドレスの裾を持ってくれた。
長い裾裳なのでそうしないと人間クイックルワイパーになってしまうからだ。

「まあまあ、そんな気に病むことないわ、いつものことよ平井さんがいた時もそうだったじゃないの、丘田さんも平井さんとくっつけば良かったのに、鎌倉に屋敷を持ってる社長の御曹司なんだから」

私はそう言い放つとサービスセンターのドアをノックした。

「みんな、ごきげんよう」

私がそう言って入ると日富副センター長がすぐにきてくれて

「お嬢!元気そうやね、入って入って今日さ、ももちゃんもケータリングで来るねん」

「ももちゃんから聞いたわ、楽しみよ、まぁ丘田さんお変わりなさそうね」

私はチケット販売窓口に座っている丘田さんに話しかけた。
いつみても若々しいのは頭が空っぽだからかしら?
黒々とした髪や丸い顔立ちで、若い頃からずっと何も変わらず年齢を重ねた人特有の幼さが滲み溢れている。


「カトリーヌちゃんありがとう、ドレス素敵ね、舞台に出てた時のなの?」

「そうよ、これは確かフェドーラというオペラの時の衣装よ」

「どんな話なの?」

「くだらない殺人と恋愛の話よ、あら、安堂さんじゃない?元気だった?いつ見てもお綺麗でうらやましいわ」

私は丘田さんの隣にすわる安堂さんに話しかけた。
こちらもスポーツをしてるから年齢を聞くという不作法をしない限り確実に30代くらいに見え、きっと重大の頃はさぞかしブイブイ言わせていただろうなという鱗片が見える。

「あら、カトリーヌちゃんこそ女王様みたいに美しいじゃない」

「知ってるわ、でもありがとう」

私は言いながらみんなの様子をよく見てみた。
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