アルキオネウスの地より

社畜

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ファーストコンタクト

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『カウントダウン入ります3…2…1 降下艇パージ今、』

少しの振動が伝わり暫くして重力に引かれ大気圏へと艇が落ちて行く、ガタガタと大きく揺れ大気の摩擦に抗う。

「あがががっ 何時になっても慣れね~無事大気圏を越えてくれ!」

ふと、横に視線を向けると澪が鼻歌混じりにS&Wのシリンダーとバレルをガンオイルを含ませた布で磨いている。

《くっくく兄様の行く手を阻む者有れば兄様の崇高なる思想が理解出来る様にマグナム弾でおつむの風の通りを良くしてさしあげますわ!》

口角を上に歪ませ一人笑う澪を見て、コイツのAIはかなりヤバい思想に傾いているのではなかろうかと不安が過る。

自律思考AI本当に大丈夫なのバグってない、ねぇ桜?

そうこうしている間に地上のベースに降下艇が着陸してゲートが開く。

《さあ、兄様Go to hell(地獄)ですわ!》

スチャっと2丁の10.5インチ、リボルバーをホルスターから抜き背中のバレットM82を揺らしながら意気揚々と歩いて行く澪。

「何でhell(地獄)なんだよ!新しい新天地なんだぞ!Go to heaven(天国)だろ!」

突っ込みをかましながらゲートを潜るとそこには。

眩しい光、降下艇を降りた瞬間思わず惚けてしまう、燦々と輝く日の光、深緑と土の香り、まるで母なる地球に帰って来たのではと錯覚してしまう感覚。

『マスター、マスター』

インカムから桜より無線が入る。

「悪い、景色に感動して惚けていたようだスマン」

『ベースの位置はウンベラータ王国(森の小国)とガジュ帝国(覇権主義の大柄な人族)の国境付近になります、ベースより5km地点にウンベラータ人と思われる2体と住居、活動確認』

『その場所から10km先に王都があります』

「それで桜、言語の解析は?」

『この惑星に生息する人類タイプの言語を97%解析済み、会話に問題有りません』

「ヨシ!2人に接触するぞ、澪!光学迷彩を展開!極力戦闘は避けろ、ナビゲーション頼む」

《くっくく兄様、わたくしに任せるがよいですわ!、この全てを視通す神の眼をもってすれば造作も無い事、いずれ眼帯の封印も解き放ち、真の神たる力を全て魅せてくれようですわ》

「あぁ~ハイハイそうね、真の力とやらを魅せてくれ、取り敢えず今は、目的地までお願いね」

昔もこうだった、結愛が拗らせた厄介な病気、中二病。
真面に相手にしていると此方まで、おかしくなりそうになる。

でも、何だろうこの感じ、言葉のやり取り、面倒くさがりながらも妹と交わした支離滅裂な会話、遠い昔の忘れかけた記憶、澪は、俺の為にわざと中二病的
な会話をしてくれているのか?

もしAIが人の心を読み取り理解し自我を持っているとしたら…、だとしたら自律思考AIは機械の枠を飛び越えて機械型生命体と成り得るのではないだろうか?

あれこれ考えながらも日差しの射し込む森を歩く、どれ程歩いただろうか?

移動物体レーダーが生物の接近を知らせるそして、前方の開けた道から、ナニかに追われ息を切らせながら2人の子供が駆けてくる、その後ろから3mはあろうか、大きな猪が顔を覗かせる。

咄嗟に叫ぶ。

「澪!ウェポン、フリー殲滅しろ!」

《くくくっ!肉ごときが我に挑むとは愚かな、フルメタル・ジャケットの弾丸に貫かれ露と消えるがよいですわ》

10.5インチ、リボルバーの2つの銃口がターゲット頭部に向けられた瞬間

ドッゴーォ、ドッゴーォ大気を震わす2発の銃声と銃口からのマズルフラッシュ

猪が頭部の半分以上を消し飛ばされて血をばら撒きながら倒れる

《くくくっ肉ごときが、武を弁えるがよい、ですわ!》

2人の子供達がへなへなとその場に座り込む

「おい!大丈夫か?」

インカムの、言語変換装置をスイッチONにして2人に駆け寄る。

「レンカ私たち生きてる、よかった!」

「うん!ランカあたし達生きてる」

随分痩せてはいるが、見た感じ二人に怪我は無さそうだ。
当たり障りの無いところで2人に話しかける。

「俺は世界中の国を行商して回る旅の商人なんだが、この辺りの地理に疎くてな、イロイロ教えてくれないかい?」

「ひぃぃ」

「いゃー殺さないで!」

「えっ」「どして?」「なぜ?」

こんなにも怯えられる意味が解らない。
2人を落ち着かせようと奮闘するが、どうにもこうにも上手くいかない、ほとほと困り果て参っていると変な歌と独り言が耳にはいり後ろを振り返る。

《肉肉肉♪肉肉肉♪殺して焼いて、引き裂いて、ふんふんふん♪》

《貴様の臓物を引き摺りだし口に突っ込んで喰わせてやりますですわ》

《くっ、わたくしとしたことが、頭を吹き飛ばしてしまっては臓物を喰わせられませんでしたわ、てへぺろ》

わけの解らん歌と独りボケ突っ込みをしながら、猪の後ろ足首をワイヤーで縛り巨体を大木に吊し上げ、コンバットナイフの刀身を舐めあげてから、首を飛ばし血抜きして腹を割いて鼻歌まじりに内臓を引きずり出すサイコパスメイドがいた。

「お前が元凶か!澪!!」

《何かしら兄様???》

新たな大地での最悪なファーストコンタクトだった。




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