幸せは食事の中に

やなぎ

文字の大きさ
上 下
12 / 14
第2話 おでん

調理2

しおりを挟む
 後必要なのは、卵の殻向きとちくわのカットぐらいだろう。

 卵の殻は冷水ですぐ冷やすと剥きやすいらしいのでまずは冷やすとしよう。

 そのうちにちくわをカット。

「しらたきとかどうするのー?」

「あー、袋開けて鍋に入れちゃおうか。あ、先に大根入れちゃって。」

「りょーかい!」

 さて俺は卵の殻を剥きますか。

 全体的にヒビを入れて、剥く。

 つるんっと簡単に剥けた。これは気持ちいいな。

 数がなかなかに多かったから最後の方は作業になってたけど、卵が意外に綺麗に剥けて楽しかった。

 鍋の中を覗く。

 現在は大根、卵、こんにゃく、しらたき、牛すじが中に入っている。

「あとは昆布を入れて一旦放置しようか。」

「残りはどうするの?」

「残りは俺が帰る1時間ほど前に入れてくれればいいよ!」

「わかった。」

 取り敢えず洗い物だな。洗い物ってマジで憂鬱だなぁ。

 でもやんないといけないから頑張る!

「あ、洗い物やってるー。」

 来たな!かまってちゃん!

 心の中でだけ叫んでおこう!

「あんまひっつくな。洗いづらい。」

「えー。凛くんもうちが洗い物やってる時、たまにこうやって後ろからぎゅってしてくれるじゃん。」

「自分からやるのはいいの!されるのは照れるからなんかやだ。」

「なんだその自分勝手!?でもなんか可愛い!」

 よし、やっと洗い物終わった。現在15時半。バイトは17時からなので微妙に時間がある。

 ふむ。もふもふの服を着た少女を撫で回すとしよう。

 ベッドに座り、奈々を呼ぶ。

 奈々は俺を背もたれに座る。

 身長差があまりないからバランスが悪いのは悲しい。

「なんでこういう座り方なんだ?」

 隣に座るように合図したつもりだったのだが……。

「え?だって正面向いて座るのは、流石に……恥ずかしい。」

「あ、俺の上に座るのは前提なのな。」

「え?座るように合図したじゃん。」

 あー。やっぱり勘違いしてた。

「きゃぁ。」

 俺は奈々を巻き込んで横に倒れる。そしてぎゅっと抱きしめた。

「どうしたの?」

 落ち着いた口調だが顔が少し赤い。

「ううん。なんかこうしたかった。」

 奈々は抱きしめる俺の腕を握る。

「なんか、こういうのっていいね。暖かい。」

「あぁ。確かにいい。このもふもふ気持ちいい。」

「え?あ、うん。そういう事……。」

「あ、いや。これは違くて!」

「知らない!もうこの服着ないからいいもん。」

「え、脱いじゃうのかよ。」

「なんで落胆してるの!?男なら喜んでよ!脱いでるんだから!」

「そんな自発的に脱がれてもなぁ。あと俺今怒られてんのに喜ぶって……。」

「もぅ。せっかく最初は良かったのに、服が気持ちいいとか言うから……。」

「悪かったって思ってるよ。」

 奈々はめちゃくちゃ泣きそうにしている。

 俺は肩に手を置く。

 あ、泣き出した。

 俺が悪いのかな。まぁ、悪いか。

「あ、やば!バイトの時間。行かなきゃ!ごめん!この事はまた後で!おでんの具材の残り後で入れといて!じゃ、行ってきます!」

 問題を先送りにしてバイトに向かう俺であった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

処理中です...