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『晴美ばぁちゃんの口癖』
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長い人生を歩んできた。
晴美ばぁちゃんは、
毎日「もったいない
もったいない」と言うのが口癖だった。
「ばぁちゃん、それってどういう意味なの?」
孫の花が尋ねると、晴美ばぁちゃんは優しく微笑んで答えた。
「ほれ、茶ぁーでも飲んでからお話しようねぇ」
健やかな98歳のばぁちゃんは、いつもそうしていた。
花が、静かにとなりに座る。
歴史漂わせる湯のみから、
和やかな茶の香り。
安らぎにも似た茶を口にすると、
ゆっくりと、
話しはじめた、、、。
それはまだ、
晴美ばぁちゃんが、若かりし頃のこと。
「ほほぅ。...
私の家は貧しくてねぇ。
ご飯でも、何でも、
それはそれは
大切に、、、
大切に食べなきゃならんかった。
一粒でも残しちゃあ、
それこそ勿体無いわね。
『もったいない』ってのは、そういうことさね!」
それは、
戦時中の苦しい思い出から、始まっていった。
食べ物が無駄にできない時代を生き抜いてきたのだ。
「そうしてるうちに、食べ物だけでなくて、人の心や、
そんな行いにも、気づくようになったわ。
ほれぇ~、花も、、、
いつかわかるときがくるでぇ、、、」
花は、
ばぁちゃんの言葉が、
ちょっとばかし、
わかったような気がした。
気がした、だけかも? しれない。
でも、たくさんお金を持っている家は、
たくさんの大切な物が、いっぱいある。
毎日、色んな物を買って、
大切な物がどんどん増えていく、、、。
でも、せっかく買ったのに、、、
それを、すぐに捨てている。
大切な物なのに、、、もう、いらないと言う。
そしてまた、新しい物を買ったりを、繰り返す。
花は、大切な物を、
すぐに捨てている事が、すごい!
ことのように思えた。
それは、また、とても、
もったいない事のようにも
感じた。
花は、お母さんに、
やっと買ってもらった、
たった一つの人形を、もう何年も使っている。
ボロボロで、、、
色も形も変わってしまった。
そして、晴美ばぁちゃんは、
続けた。
「ほんでもな、一番もったいないのは自分の命さねぇ。
この世に一度しかない、
大切な命は、無駄にしちゃいかんよ。」
晴美ばぁちゃんは今度は、戦地で命を落とした旦那さんの話をしてくれた。
身を粉にして働きながら、
子育てに尽力した。
「この世に生を受けた以上は、しっかりと生きねばならぬわ。
自分の夢を追い求め、人のために、
精一杯力を尽くすこと。
そうでなくちゃ、
この命は無駄になるわけよ。
ほんで、まぁ、愚痴は言わんほうがええ。」
人生の知恵を伝授されていくような。
花は、、、
徐々にその言葉の意味が分かってきたような気がする。
ばぁちゃんは、愚痴ひとつ言わずに前向きに生きてきた。
大切にするものを見つめ直し、命を捧げる何かを探し求めること。
そしてそれを全うするのが、何よりも大切だということを。
「ありがとう。
ばぁちゃん。
大切な人のため、
そして自分の夢のため
に、一生懸命生きる
ね。」
花はそう心に決め、優しく
ばぁちゃんと、手を握りあった。
その笑顔を見ると、晴美ばぁちゃんも嬉しそうだった。
「それでいい。
そうするのが一番よ。
十人十色。
人それぞれに色んな人生があるわねぇ。
だけんど、
命というものは限られている。
一生懸命、
後悔のない人生を歩む
ことよねぇ」
命ある限り、晴美ばぁちゃんは、この言葉を胸に大切にしみこませている。
限りある時間を無駄にせず、大事に生きていくことが、
何より重要だということを。
この日からも、
ばぁちゃんは、いつものように、
「もったいない、もったいない」
と口ずさんだ。
しかし、そこには深い
意味と、命への尊厳が
込められている
ようだった。
それは、、、
生きることへの知恵に
満ちた、とても大切な
宝物だったのである。
晴美ばぁちゃんは、
毎日「もったいない
もったいない」と言うのが口癖だった。
「ばぁちゃん、それってどういう意味なの?」
孫の花が尋ねると、晴美ばぁちゃんは優しく微笑んで答えた。
「ほれ、茶ぁーでも飲んでからお話しようねぇ」
健やかな98歳のばぁちゃんは、いつもそうしていた。
花が、静かにとなりに座る。
歴史漂わせる湯のみから、
和やかな茶の香り。
安らぎにも似た茶を口にすると、
ゆっくりと、
話しはじめた、、、。
それはまだ、
晴美ばぁちゃんが、若かりし頃のこと。
「ほほぅ。...
私の家は貧しくてねぇ。
ご飯でも、何でも、
それはそれは
大切に、、、
大切に食べなきゃならんかった。
一粒でも残しちゃあ、
それこそ勿体無いわね。
『もったいない』ってのは、そういうことさね!」
それは、
戦時中の苦しい思い出から、始まっていった。
食べ物が無駄にできない時代を生き抜いてきたのだ。
「そうしてるうちに、食べ物だけでなくて、人の心や、
そんな行いにも、気づくようになったわ。
ほれぇ~、花も、、、
いつかわかるときがくるでぇ、、、」
花は、
ばぁちゃんの言葉が、
ちょっとばかし、
わかったような気がした。
気がした、だけかも? しれない。
でも、たくさんお金を持っている家は、
たくさんの大切な物が、いっぱいある。
毎日、色んな物を買って、
大切な物がどんどん増えていく、、、。
でも、せっかく買ったのに、、、
それを、すぐに捨てている。
大切な物なのに、、、もう、いらないと言う。
そしてまた、新しい物を買ったりを、繰り返す。
花は、大切な物を、
すぐに捨てている事が、すごい!
ことのように思えた。
それは、また、とても、
もったいない事のようにも
感じた。
花は、お母さんに、
やっと買ってもらった、
たった一つの人形を、もう何年も使っている。
ボロボロで、、、
色も形も変わってしまった。
そして、晴美ばぁちゃんは、
続けた。
「ほんでもな、一番もったいないのは自分の命さねぇ。
この世に一度しかない、
大切な命は、無駄にしちゃいかんよ。」
晴美ばぁちゃんは今度は、戦地で命を落とした旦那さんの話をしてくれた。
身を粉にして働きながら、
子育てに尽力した。
「この世に生を受けた以上は、しっかりと生きねばならぬわ。
自分の夢を追い求め、人のために、
精一杯力を尽くすこと。
そうでなくちゃ、
この命は無駄になるわけよ。
ほんで、まぁ、愚痴は言わんほうがええ。」
人生の知恵を伝授されていくような。
花は、、、
徐々にその言葉の意味が分かってきたような気がする。
ばぁちゃんは、愚痴ひとつ言わずに前向きに生きてきた。
大切にするものを見つめ直し、命を捧げる何かを探し求めること。
そしてそれを全うするのが、何よりも大切だということを。
「ありがとう。
ばぁちゃん。
大切な人のため、
そして自分の夢のため
に、一生懸命生きる
ね。」
花はそう心に決め、優しく
ばぁちゃんと、手を握りあった。
その笑顔を見ると、晴美ばぁちゃんも嬉しそうだった。
「それでいい。
そうするのが一番よ。
十人十色。
人それぞれに色んな人生があるわねぇ。
だけんど、
命というものは限られている。
一生懸命、
後悔のない人生を歩む
ことよねぇ」
命ある限り、晴美ばぁちゃんは、この言葉を胸に大切にしみこませている。
限りある時間を無駄にせず、大事に生きていくことが、
何より重要だということを。
この日からも、
ばぁちゃんは、いつものように、
「もったいない、もったいない」
と口ずさんだ。
しかし、そこには深い
意味と、命への尊厳が
込められている
ようだった。
それは、、、
生きることへの知恵に
満ちた、とても大切な
宝物だったのである。
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