【完結済】結婚式の翌日、私はこの結婚が白い結婚であることを知りました。

鳴宮野々花@書籍2冊発売中

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21.(※マキシミリアーノside)

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 本当はその場について行きたいぐらいだった。

 彼女のことが、心配でたまらなくて。彼女が窮地の時には私がずっと傍についていてあげたい。

 だがこれはオルブライト伯爵家とベルナップ伯爵家の問題だ。家の恥となる修羅場を部外者の貴族に見せたい人間などいない。さすがに私が現場にまでついて行くのは無作法が過ぎるというものだ。



 元々、彼女に対しては良き友人として好感は持っていた。

 アミカ・オルブライト伯爵令嬢は、知的で品行方正、貴族学園では友人も多く、いつも朗らかに微笑んでいた。美しい人だな、と思っていた。

 あの日、ベルナップ伯爵令息と彼女の友人であるリヴィングストン子爵令嬢の不貞を知ってしまった時、衝撃のあまり崩れ落ちてしまったアミカ嬢が哀れで、我が屋敷まで連れて帰ってきてしまった。とても放ってはおけなかったのだ。
 かつての自分を見ているようだった。
 私で助けになれることがあるなら、何かしてあげたい。友人として。その時は本気でそう思っていた。

 だが、こうして密に連絡を取り合い何度も繰り返し会っているうちに、私の中で彼女に対して別の感情が芽生え始めた。
 
 私に全幅の信頼を寄せてくれるひたむきな瞳を、可愛らしいと感じるようになった。彼女の私に対するその素直な態度は庇護欲をそそり、頼りにされているのだと思うとますます守ってあげたいと思うようになった。

(素直で愛らしい人だな…)

 だんだんと私の中で、彼女が特別な人になっていった。



 ベルナップ伯爵令息が夜を求めてきたと彼女から相談された時には、激しい怒りを表に出さないようにするのに苦心した。
 ふざけるな。何を今さら。この清純な人に指一本でも触れようものなら、私がこの手で裁きを与えてやる。そんなことが頭をよぎったほどだった。

 心配で心配で、もう一晩たりともあの男と屋敷で暮らして欲しくはなかった。誰にも触れさせたくない。あの可愛い人を私のものにしてしまいたい。そんな狂おしい思いで夜も眠れないほどだった。



(……いつの間に、こんなに好きになってしまっていたんだろうか)

 今頃もう、アミカは現場に着いた頃だろうか。どうか何事もなく、早く無事に戻ってきておくれ。
 彼女がこれ以上辛い思いをせずに済むよう、私は心の底から祈りながら時が過ぎるのを待っていた。


(……全てが終わったら、彼女に打ち明けよう。私のこの想いを)



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