【完結済】結婚式の翌日、私はこの結婚が白い結婚であることを知りました。

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22.(※ポーラside)

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「……。」
「……。」
「…………。」
「…………。…………ねぇ!!」

 事が済んだ途端、甘い愛の言葉の一つも囁くことなくあらぬ方向を向いてボーッとベッドに横たわったままのミッチェルを見ているうちに、無性に苛立たしい思いが込み上げてくる。私はミッチェルの顎を掴んで強引にこちらを向かせた。

「いぎっ!い、痛いよポーラ!首からゴキッて変な音がしたじゃないか…」
「そんなことぐらいで何よ!あなた最近私に対して手を抜きすぎじゃない?!」
「……へっ?」
「最初の頃はこんなじゃなかったわ。私を抱くたびに綺麗だ女神だと褒めそやして、終われば私を抱きしめてずっと愛を囁いていた……真実の愛について、あんなに語り合ったのに……!今のあなたからはまるで情熱を感じられないわ!」
「……そ、そんなことないだろう。疑いすぎだよポーラ」
「じゃあ考えたの?!」
「……何を?」
「次の計画よ!」
「…………け、……計画って…………何のだい?」
「~~~っ!あ……あなたねぇ……!」

 思わず引っ叩きたくなるが、ここで怒りを爆発させるわけにはいかない。結婚にこぎつける前にこの男に逃げられるわけにはいかないのだ。可愛げを見せなければ、アミカのようにしおらしく、猫を被ってみせなければと思うのに、あまりの苛立ちについ素の自分が出てしまう。

「離婚に向けての次の作戦よ!!エイダンの件が失敗したんだから、次の計画をちゃんと考えるってあなた先日私に言ったばかりよ?!どうなってるのよ!!まさか……アミカと離婚する気がなくなったなんて言わないでしょうねぇ?!」
「っ!!いっ!…言うわけないじゃないか!分かってるってば。い、今ちゃんと考えてるところだよ」
「本当にぃ?!」
「本当だよ!!たった今もそのことについて真剣に頭を巡らせていたところだったのに……!君が僕の首をゴキッと……」
「……。…ごめんなさいね、ミッチェル」

 私は自分を抑えつつ、素肌のままでミッチェルにピタリと寄り添った。しっかりと念を押しておかなければ。ここまで来て気が変わったなんて言われたらたまったものじゃない。

「…不安でたまらないの、私…。愛するあなたのそばにいられない日々が苦しくて…。アミカは毎晩あなたと同じ屋敷で過ごしているでしょう?もしも……あなたの気持ちが揺らいでしまったらと思うと……わ……私……っ、……う゛ぅぅ……っ」
「…………。」
「……うぅっ…………お……乙女の純潔を……あなたに捧げたの……!あなたが全てだから……!真実の愛の相手だからぁ……っ!」
「……分かってるよ、ポーラ。大丈夫だから……」

 肩を震わせながらヒシとしがみつき、私が得意の泣きまねをしてみせると、ミッチェルが私に腕をまわしてくる。

「……君を見捨てたりしないよ……。大事に思っているからこそ、今日も無理して丸一日時間をとったんだ。君が一日中二人きりで過ごしたいというから……全ては君のためだよ」
「本当ね?私が一番大事なのね?ちゃんと結婚してくれるのよね?あなたを信じていいのよね?!」
「ああ、ああ。大丈夫だって」
「じゃあ、もう一度私に愛を示してちょうだい」
「う、うん」

 いそいそと覆い被さってくるミッチェル自身には元々興味なんてない。私は伯爵夫人になりたいの。アミカを蹴落としてね。私よりも全てにおいて恵まれているあの子を負かして、悔しさに歪む顔が見たいの。




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