7 / 27
7.
しおりを挟む
そんなある日、私はミッチェルと連れ立ってとある伯爵家の主催するパーティーに出席することとなった。いくらまっさらさらな白い結婚とはいえ、それはこちらの事情。夫婦は夫婦だ。同伴しないわけにはいかない。
そちらの伯爵家の広間で主催者と見知った方々に二人で挨拶をしてまわる。ひと段落ついたところで、一人の男性に声をかけられた。
「やあ、ミッチェル!結婚おめでとう」
「おお、久しぶりだなエイダン!留学から戻ったって?」
「ああ。…こちらが奥さんのアミカ嬢だよね?俺のことを覚えてくれているかな」
私は咄嗟に記憶を辿った。確か、…エイダン・ギャラガー子爵令息。数年前からあちこちの国へ精力的に勉強に行っていた方だわ。うん、間違いない。私はあまり会ったことはないけれど、ミッチェルとは幼なじみの方だ。
私は笑みを作って返事をした。
「ええ、覚えていますわ、もちろん。ご無沙汰しております、エイダン様」
「はは、覚えてくれていてよかった。嬉しいなぁ」
私たちはしばらく三人で歓談した。でもしばらくするとミッチェルが急に額を押さえて深く息をついた。
「……はぁ……」
「……?どうしたの?ミッチェル」
「……いや……、ちょっと飲み過ぎたかな……。少し目が回る気がするんだ。ちょっと、僕は外の風に当たって休んでくるよ」
「えっ、それなら私が付き添…」
「いや、大丈夫大丈夫。君はエイダンのお喋りの相手でもしててくれよ」
「はは!では奥様はお預かりしようかな」
二人で何やら目配せすると、ミッチェルがエイダン様の肩をポンと軽く叩いた。
「ああ。じゃあ、少しの間頼むよ、エイダン」
そう言ってミッチェルは本当に広間から出て行ってしまった。
(…………。……おかしい)
私は二人の間に一瞬流れた妙な空気を敏感に察した。何だか、変だ。今の、何か……
「さて、ミッチェルもああ言っていたことだし、もう少し俺の話し相手になってください、美しいアミカ嬢」
「え、ええ……」
それにこの人、何だか嫌だわ。と私は思った。何となく気持ち悪い。目つきがいやらしい感じがするというか……、雰囲気が妙になれなれしい。整った容姿なのに、蛇のようなねちっこさを感じる。
私は形容し難い薄気味悪さを感じながら、渋々エイダン様と二人の時間を過ごすことになった。
(まぁ、周りに歓談している方々はたくさんいらっしゃるし、別にいいわね。密室に二人きりってわけでもないんだから。早く戻ってこないかしら、ミッチェル…)
そちらの伯爵家の広間で主催者と見知った方々に二人で挨拶をしてまわる。ひと段落ついたところで、一人の男性に声をかけられた。
「やあ、ミッチェル!結婚おめでとう」
「おお、久しぶりだなエイダン!留学から戻ったって?」
「ああ。…こちらが奥さんのアミカ嬢だよね?俺のことを覚えてくれているかな」
私は咄嗟に記憶を辿った。確か、…エイダン・ギャラガー子爵令息。数年前からあちこちの国へ精力的に勉強に行っていた方だわ。うん、間違いない。私はあまり会ったことはないけれど、ミッチェルとは幼なじみの方だ。
私は笑みを作って返事をした。
「ええ、覚えていますわ、もちろん。ご無沙汰しております、エイダン様」
「はは、覚えてくれていてよかった。嬉しいなぁ」
私たちはしばらく三人で歓談した。でもしばらくするとミッチェルが急に額を押さえて深く息をついた。
「……はぁ……」
「……?どうしたの?ミッチェル」
「……いや……、ちょっと飲み過ぎたかな……。少し目が回る気がするんだ。ちょっと、僕は外の風に当たって休んでくるよ」
「えっ、それなら私が付き添…」
「いや、大丈夫大丈夫。君はエイダンのお喋りの相手でもしててくれよ」
「はは!では奥様はお預かりしようかな」
二人で何やら目配せすると、ミッチェルがエイダン様の肩をポンと軽く叩いた。
「ああ。じゃあ、少しの間頼むよ、エイダン」
そう言ってミッチェルは本当に広間から出て行ってしまった。
(…………。……おかしい)
私は二人の間に一瞬流れた妙な空気を敏感に察した。何だか、変だ。今の、何か……
「さて、ミッチェルもああ言っていたことだし、もう少し俺の話し相手になってください、美しいアミカ嬢」
「え、ええ……」
それにこの人、何だか嫌だわ。と私は思った。何となく気持ち悪い。目つきがいやらしい感じがするというか……、雰囲気が妙になれなれしい。整った容姿なのに、蛇のようなねちっこさを感じる。
私は形容し難い薄気味悪さを感じながら、渋々エイダン様と二人の時間を過ごすことになった。
(まぁ、周りに歓談している方々はたくさんいらっしゃるし、別にいいわね。密室に二人きりってわけでもないんだから。早く戻ってこないかしら、ミッチェル…)
153
お気に入りに追加
1,757
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたの破滅のはじまり
nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。
え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか?
あなたを待っているのは破滅ですよ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
幼馴染だけを優先するなら、婚約者はもう不要なのですね
新野乃花(大舟)
恋愛
アリシアと婚約関係を結んでいたグレイ男爵は、自身の幼馴染であるミラの事を常に優先していた。ある日、グレイは感情のままにアリシアにこう言ってしまう。「出て行ってくれないか」と。アリシアはそのままグレイの前から姿を消し、婚約関係は破棄されることとなってしまった。グレイとミラはその事を大いに喜んでいたが、アリシアがいなくなったことによる弊害を、二人は後に思い知ることとなり…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
彼と婚約破棄しろと言われましても困ります。なぜなら、彼は婚約者ではありませんから
水上
恋愛
「私は彼のことを心から愛しているの! 彼と婚約破棄して!」
「……はい?」
子爵令嬢である私、カトリー・ロンズデールは困惑していた。
だって、私と彼は婚約なんてしていないのだから。
「エリオット様と別れろって言っているの!」
彼女は下品に怒鳴りながら、ポケットから出したものを私に投げてきた。
そのせいで、私は怪我をしてしまった。
いきなり彼と別れろと言われても、それは無理な相談である。
だって、彼は──。
そして勘違いした彼女は、自身を破滅へと導く、とんでもない騒動を起こすのだった……。
※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もうあなた様の事は選びませんので
新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト男爵はエリクシアに対して思いを告げ、二人は婚約関係となった。しかし、ロベルトはその後幼馴染であるルアラの事ばかりを気にかけるようになり、エリクシアの事を放っておいてしまう。その後ルアラにたぶらかされる形でロベルトはエリクシアに婚約破棄を告げ、そのまま追放してしまう。…しかしそれから間もなくして、ロベルトはエリクシアに対して一通の手紙を送る。そこには、頼むから自分と復縁してほしい旨の言葉が記載されており…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義母様から「あなたは婚約相手として相応しくない」と言われたので、家出してあげました。
新野乃花(大舟)
恋愛
婚約関係にあったカーテル伯爵とアリスは、相思相愛の理想的な関係にあった。しかし、それを快く思わない伯爵の母が、アリスの事を執拗に口で攻撃する…。その行いがしばらく繰り返されたのち、アリスは自らその姿を消してしまうこととなる。それを知った伯爵は自らの母に対して怒りをあらわにし…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
離縁をさせて頂きます、なぜなら私は選ばれたので。
kanon
恋愛
「アリシア、お前はもうこの家に必要ない。ブライト家から追放する」
父からの予想外の言葉に、私は目を瞬かせる。
我が国でも名高いブライト伯爵家のだたっぴろい応接間。
用があると言われて足を踏み入れた途端に、父は私にそう言ったのだ。
困惑する私を楽しむように、姉のモンタナが薄ら笑いを浮かべる。
「あら、聞こえなかったのかしら? お父様は追放と言ったのよ。まさか追放の意味も知らないわけじゃないわよねぇ?」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる