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 それからは予想通り、ミッチェルが何かと理由をつけては私との夜を拒む日々が始まった。

「ごめんね、アミカ。また父から呼び出されてしまったんだ。あ、そうそう、仕事の件でバタついているから挨拶はまた後日でいいそうだよ。ちょっと、僕だけ行ってくるから。こんな夜更けに、困ったものだよ……」

「アミカ、悪いんだけど、ちょっと腹の調子が悪くてね……」

「あ、あいたたた……。こんなにひどく寝違えてしまうなんて……朝から夜までずっと腰が痛いんだよね……あいたたたたた…」

「今夜は学園時代の仲間が皆で集まってカードゲームをするそうなんだ。全く…新婚なんだから僕のことは放っておいてほしいんだけどね……仕方ない。呼ばれているから、行ってくるよ」



(……馬鹿じゃないのかしら、この人。何もかもバレバレなのに)


 マキシミリアーノ様がツテを使って手を回してくださったおかげで、ミッチェルの行動はあの翌日から全て調査されており、ポーラと度々密会していることはもう分かっていた。

 新婚初夜まではあんなに大好きだった人なのに、こんなに不実で嘘つきだったのかと分かった途端に、私の恋心はスーッと冷めてしまっていた。むしろ今は気が楽だ。
 そしてこうなってくると、頭の回転が早くて冷静な頼り甲斐のあるマキシミリアーノ様の方がはるかに素敵に思えてくる。

(はぁ……。私の旦那様があの方だったらよかったのに…)

 そんなことまで考える余裕が出てきたのだった。




 ポーラはポーラで、相変わらずだった。

「アミカ!先日うちまで会いに来てくれたそうね。ごめんなさいね、私ちょっと出かけていたから」
「…いいえ、いいのよポーラ。こうしていつでも会えるんだし」

(この子もどういう神経してるのかしら…)

 ポーラはまるで何事もないかのように度々私に会いに来るのだ。そして偶然ミッチェルと顔を合わせると、

「あら、お邪魔しておりますわ、ミッチェル様。ご無沙汰してます」
「やぁ、リヴィングストン子爵令嬢。結婚式以来だね。あの時はありがとう。相変わらず君らは仲良しだなぁ」

などと白々しい演技をするものだから、私は怒りのあまり顔が引き攣るのだった。

(信じられないわこの二人……!これでちゃっかり不倫してるんだから。この目で見てなかったら今でも完全に騙されていたわけよね、私……)

 ああ、本当に腹が立つ……!

 だけどせめて完璧に復讐してやるためにも、まだここで感情を露わにするわけにはいかない。私はそっと拳を握りしめて我慢するしかなかった。




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