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 様子を見てから声をかけようと、私たちは奥の二人に気付かれないように慎重に近付いていった。幸い背の高い棚が並んでいる場所の近くにいてこちらが死角になっているからか、向こうはこちらを気にする様子もない。ミッチェルが何やら必死になってポーラに弁明しているように見える。

「……だから……っ!…………って。……信じて……よ…」
「…………うせ…………んでしょ?信じられないわよ!」

(……っ?)

 ところどころしかはっきりと声は聞こえないけれど、揉めているのはもう間違いない。というか……、

「あの二人、随分気さくな仲なんだね。知らなかったよ……」

 一緒に隠れてくれているマキシミリアーノ様も私と同じことを思ったらしい。

「ほん…………って!君以外に……わけ、…いじゃないか」
「嘘っ!一つ屋根の下に住……で、……も……いわけが……」
「僕には君だけだよ……ーラ」


(……………………え?)


 ドク、ドク、ドク……、と、だんだん心臓の音が嫌な感じに大きく響きはじめた。指先がすうっ…と冷たくなっていく。
 聞きたくない言葉を……言っている気がしてならない……。でも、まさかね。まさか……

 だって二人は私の…………


「愛しているのは君だけだよ、ポーラ」


(…………っ!!)



 はっきりと聞こえてしまった夫の声に、目の前が真っ暗になる。信じられない。聞きたくなかった。耳を塞ぎたいのに、身動き一つとれない。次々と二人の言葉が突き刺さってくる。

「……本当に?……あの子を抱かない?」
「…たり前だろう!ずっと君に約束してる…………いか!」
「……よ……ね?……白い結婚……て」
「ああ!……うだよ!……おね……から、もう少し、辛抱…………れ」
「……離婚してくれるの?!」
「するに決まってる!…………」





「……アミカ嬢!」

 気が付くと、私は尻もちをついた状態でマキシミリアーノ様に後ろから抱きかかえられていた。

「……一旦出よう、アミカ嬢」
「………………っ、……あ……」

 頭の中がグラグラと揺れている。私はマキシミリアーノ様に支えられながら、その宝石店から逃げるように立ち去ったのだった。
 



 
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