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29. 心地良い高揚
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(ああ、もう……突然感極まって瞳を潤ませてしまうだなんて……。しかも殿下の前で。何をしているのかしら。私もまだまだね……)
あちらの方へ行こうかと言って歩き出した殿下に付き従いながら、私は心の中で猛省していた。恥ずかしい。
砂浜に沿ってしばらく歩くと、一頭の美しい立派な白馬が目に留まる。そしてその周りには何人もの人たちが待機している。王家の使用人だろうか。見慣れた制服姿ではないけれど、目立たぬためだろう。
殿下は私の方を振り返り、この上なく楽しげな笑顔で言った。
「さて、苦手科目は克服したかな。“完全無欠の公爵令嬢”の乗馬のお手並み、拝見させていただこうか」
「…………。意地悪はお止めください、殿下」
思わず上目遣いに軽く睨むと、トラヴィス殿下は楽しそうにクックッと笑う。
「ひどいですわ。日々の王太子妃教育や勉強に必死で、もう乗馬を克服している余裕なんかございませんでしたのに。本当はお分かりでしょう?殿下」
私がそう言うと、殿下は優しく微笑みながら私を見つめる。……なぜこの方は時折、こんなにも優しい目をするのだろう。前からこんなだったっけ……?なんだかひどく、胸がざわめく。
「ああ。分かっているさもちろん。それでも君とここに来て、約束を果たしたかったんだ。俺がいるから大丈夫。付き合っておくれ」
「……は、はい……」
王子殿下にそうまで言われれば、とても嫌とは言えない。ああ、落馬して骨折などしなければいいのだけど……。
使用人たちに手伝われながら、白馬の鞍の上に跨る。わ、私から乗るのか……。やだなぁ。怖い。最初は誰か横で手綱を引いてゆっくり進んでくれるわよね……?
などと思ってビクビクしていると。
「……よっ、と。よし、行こうか」
「ひゃっ!!で……殿下っ!!」
なんと、気付けばあっという間にトラヴィス殿下が私の後ろに跨っていた。驚きすぎて思わず変な声を上げ、反射的に振り返ると、
「?……どうした?」
「……っ、」
ち……、近いです近いです殿下っ!!
殿下は私の背中に密着するほどの距離にいる。なのに、どうした?なんて後ろから私の顔を覗き込むようにするものだから、ま、ますますもって二人の距離が……っ!間近で見る黄金色をまとった深い栗色の瞳の美しさに、思わず息を呑んだ。
気品と色気を感じる質の良い香水の香りが、鼻腔をくすぐる。背中に感じる殿下の体温とともに、その香りが私の冷静な思考力を奪う。火照るあまり、頭がクラクラしてきた。心臓が口から飛び出しそう。
頭が真っ白になり、急いで前を向く。
「でっ、殿下、も、……ご、ご一緒に、乗られるのですか……っ?」
「当たり前だろう。慣れてない君を一人で馬に乗せるはずがない。怪我でもしたらどうする」
慌てふためき動揺する私とはうらはらに、トラヴィス殿下の声はしごく落ち着いていて、耳に心地良い。彼は後ろから守るように私の体を抱きすくめ、手綱を握り、もう一度囁くような声で言った。
「安心しろ。かすり傷一つ負わせはしないよ。……大切な、……は……」
(……え?)
何て言ったんだろう。よく聞こえなかった。
尋ねようとしたけれど、殿下は「さぁ、行こうか」などと言いそのまま馬の横腹をポン、と軽く蹴った。馬がゆっくりと動き出す。
(ひ、ひゃぁぁ~……!!)
その瞬間、緊張が最高潮に達した私は、もう殿下の言葉など気にする余裕もなく鞍を握りしめた。
(……気持ちいい……)
最初こそこのあり得ない状況にカチンコチンに固まっていた私だけれど、馬が進むに連れてだんだんと楽しくなってきた。左側に美しい水平線を眺めながら、どこまでも続く砂浜を一定のリズムでゆっくりと進んでいく。時折潮風がふわりと吹き抜け、馬上の揺れとともに私に最高の心地良さをもたらしてくれた。
「どうだ?久々の馬は。気分が変わっていいだろう」
……何より、殿下が後ろからしっかりと私のことを守ってくれているから少しも怖さを感じずに済んでいることが、一番心地良い。何年も前、どうしても上手く乗ることができずにどんどん乗馬が怖くなってしまいついに諦めた頃は、もう二度とこうして馬に乗る日など来ないと思っていた。
「……ええ、とても。殿下はお上手ですのね、馬の扱いが」
「まあな。俺の腕を信用してくれるか?」
「ふふ、もちろんですわ。馬もこんなに落ち着いていますもの」
……こんなにもすぐ近くで、殿下の低く甘やかな声が聞こえる。体もこんなに触れ合って、ほとんど後ろから抱きしめられているような格好なのに、少しも不快じゃない。ただとても楽しくて、どうしようもなく気分が高揚して、高鳴る自分の心臓の鼓動さえ愉快でならない。その一方で、不思議と心が落ち着く。ずっとこのままでいたいとさえ思ってしまう。
(……あれ、そういえば……)
すぐ耳元で聞こえる殿下の声が心地良いな、と思いながら、ふいに別のことが頭をよぎる。
先日のウィンズレット侯爵家での茶会から帰る時、侯爵家の次男、ジェセル・ウィンズレット様から声をかけられた。あの時、背後からすごく近い距離で呼び止められて……、一瞬にして鳥肌が立つほど気持ち悪くてならなかったっけ。
(……どうしてこんなに違うのかしら……)
「……。」
チラリ、と後ろを振り返る。
「……ん?」
トラヴィス殿下が少し首を傾げながら、どうした?という風に私を見つめて微笑む。
口角を上げながらニヤリと笑う、あのいつもの少し生意気そうな笑みとは違う。二人きりでいる時だけの、その甘く優しい笑顔。
また心臓が、大きく跳ねた。
あちらの方へ行こうかと言って歩き出した殿下に付き従いながら、私は心の中で猛省していた。恥ずかしい。
砂浜に沿ってしばらく歩くと、一頭の美しい立派な白馬が目に留まる。そしてその周りには何人もの人たちが待機している。王家の使用人だろうか。見慣れた制服姿ではないけれど、目立たぬためだろう。
殿下は私の方を振り返り、この上なく楽しげな笑顔で言った。
「さて、苦手科目は克服したかな。“完全無欠の公爵令嬢”の乗馬のお手並み、拝見させていただこうか」
「…………。意地悪はお止めください、殿下」
思わず上目遣いに軽く睨むと、トラヴィス殿下は楽しそうにクックッと笑う。
「ひどいですわ。日々の王太子妃教育や勉強に必死で、もう乗馬を克服している余裕なんかございませんでしたのに。本当はお分かりでしょう?殿下」
私がそう言うと、殿下は優しく微笑みながら私を見つめる。……なぜこの方は時折、こんなにも優しい目をするのだろう。前からこんなだったっけ……?なんだかひどく、胸がざわめく。
「ああ。分かっているさもちろん。それでも君とここに来て、約束を果たしたかったんだ。俺がいるから大丈夫。付き合っておくれ」
「……は、はい……」
王子殿下にそうまで言われれば、とても嫌とは言えない。ああ、落馬して骨折などしなければいいのだけど……。
使用人たちに手伝われながら、白馬の鞍の上に跨る。わ、私から乗るのか……。やだなぁ。怖い。最初は誰か横で手綱を引いてゆっくり進んでくれるわよね……?
などと思ってビクビクしていると。
「……よっ、と。よし、行こうか」
「ひゃっ!!で……殿下っ!!」
なんと、気付けばあっという間にトラヴィス殿下が私の後ろに跨っていた。驚きすぎて思わず変な声を上げ、反射的に振り返ると、
「?……どうした?」
「……っ、」
ち……、近いです近いです殿下っ!!
殿下は私の背中に密着するほどの距離にいる。なのに、どうした?なんて後ろから私の顔を覗き込むようにするものだから、ま、ますますもって二人の距離が……っ!間近で見る黄金色をまとった深い栗色の瞳の美しさに、思わず息を呑んだ。
気品と色気を感じる質の良い香水の香りが、鼻腔をくすぐる。背中に感じる殿下の体温とともに、その香りが私の冷静な思考力を奪う。火照るあまり、頭がクラクラしてきた。心臓が口から飛び出しそう。
頭が真っ白になり、急いで前を向く。
「でっ、殿下、も、……ご、ご一緒に、乗られるのですか……っ?」
「当たり前だろう。慣れてない君を一人で馬に乗せるはずがない。怪我でもしたらどうする」
慌てふためき動揺する私とはうらはらに、トラヴィス殿下の声はしごく落ち着いていて、耳に心地良い。彼は後ろから守るように私の体を抱きすくめ、手綱を握り、もう一度囁くような声で言った。
「安心しろ。かすり傷一つ負わせはしないよ。……大切な、……は……」
(……え?)
何て言ったんだろう。よく聞こえなかった。
尋ねようとしたけれど、殿下は「さぁ、行こうか」などと言いそのまま馬の横腹をポン、と軽く蹴った。馬がゆっくりと動き出す。
(ひ、ひゃぁぁ~……!!)
その瞬間、緊張が最高潮に達した私は、もう殿下の言葉など気にする余裕もなく鞍を握りしめた。
(……気持ちいい……)
最初こそこのあり得ない状況にカチンコチンに固まっていた私だけれど、馬が進むに連れてだんだんと楽しくなってきた。左側に美しい水平線を眺めながら、どこまでも続く砂浜を一定のリズムでゆっくりと進んでいく。時折潮風がふわりと吹き抜け、馬上の揺れとともに私に最高の心地良さをもたらしてくれた。
「どうだ?久々の馬は。気分が変わっていいだろう」
……何より、殿下が後ろからしっかりと私のことを守ってくれているから少しも怖さを感じずに済んでいることが、一番心地良い。何年も前、どうしても上手く乗ることができずにどんどん乗馬が怖くなってしまいついに諦めた頃は、もう二度とこうして馬に乗る日など来ないと思っていた。
「……ええ、とても。殿下はお上手ですのね、馬の扱いが」
「まあな。俺の腕を信用してくれるか?」
「ふふ、もちろんですわ。馬もこんなに落ち着いていますもの」
……こんなにもすぐ近くで、殿下の低く甘やかな声が聞こえる。体もこんなに触れ合って、ほとんど後ろから抱きしめられているような格好なのに、少しも不快じゃない。ただとても楽しくて、どうしようもなく気分が高揚して、高鳴る自分の心臓の鼓動さえ愉快でならない。その一方で、不思議と心が落ち着く。ずっとこのままでいたいとさえ思ってしまう。
(……あれ、そういえば……)
すぐ耳元で聞こえる殿下の声が心地良いな、と思いながら、ふいに別のことが頭をよぎる。
先日のウィンズレット侯爵家での茶会から帰る時、侯爵家の次男、ジェセル・ウィンズレット様から声をかけられた。あの時、背後からすごく近い距離で呼び止められて……、一瞬にして鳥肌が立つほど気持ち悪くてならなかったっけ。
(……どうしてこんなに違うのかしら……)
「……。」
チラリ、と後ろを振り返る。
「……ん?」
トラヴィス殿下が少し首を傾げながら、どうした?という風に私を見つめて微笑む。
口角を上げながらニヤリと笑う、あのいつもの少し生意気そうな笑みとは違う。二人きりでいる時だけの、その甘く優しい笑顔。
また心臓が、大きく跳ねた。
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