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33.上手くいかない(※sideダミアン)
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(……まったく…。先日のデートはろくなものじゃなかったな…)
クラウディアのヤツが当てつけのようにアーネスト・グレアム侯爵令息と親しくしはじめたもんだから、たまには少し機嫌でもとってやるかと思ってわざわざこっちから誘ってやったというのに。
女とはいつもベッドで怠惰に過ごすばかりの俺は、ただ一緒に外を出歩いても特に楽しいとも思えない。それでも我慢して付き合ってやっていたというのに、昼食をとっている最中にまで仕事の話など持ち出してきて不愉快極まりなかった。誰が食事中にわざわざそんな疲れる会話を好むものか。あいつは本当に生真面目過ぎて面白味がない女だ。顔と家柄しか取り柄がない。それでもあいつが妻だというだけで周りからは羨ましがられるから、そこがこの結婚の最大のメリットではあるがな。
しかしこのままではマズい気がする。一日一緒に出かけてやったというのに、やはりあいつの態度は素っ気ないままだ。むしろますますひどくなっている気さえする。…もう少しこちらから距離を縮めろということか。…ふん。冗談じゃない。これ以上俺に何をさせたいんだ。別々にしている寝室を共にするのが手っ取り早いのかもしれないが、昔からクラウディアに対してはずっと冷淡に接してきて俺だ。今さら下手に出てヘコヘコと「なぁ…、夫婦なんだし、やっぱり一緒に寝ようぜ」なんて口が裂けても言いたくない。
向こうから強請ってくればまだ可愛げがあるものを。「ダミアン様…。あなた様が同じ屋根の下にいるというのに、こんなにも長い間独り寝をするのは寂しくてたまらないのです…」ぐらい言ってきたらどうなんだ。そしたら俺は渋々といった体で同衾してやってもいいのに。
まったく……面白くない……!
クラウディアが思い通りに動かない苛立ちと、万が一にもグレアム侯爵令息に妻を寝取られてしまうのではないかという焦りでどうにも嫌な気分が続いていた。
(っ!…そうだ……。あいつを夜中に俺の部屋に来させるのはどうだ。何かしらの用事を作って…。そこでそういう雰囲気に持ち込む。なんだかんだ言っても、幼い頃から愛し続けた俺からちょっと誘われれば、あいつも喜びのあまり大人しくベッドを共にするだろう。そうすればアーネスト・グレアムのことなどすぐに忘れるはずだ)
一度その関係になってしまえば、女は従順なものだ。もう意地なんか張っていられなくなるだろう。俺はほくそ笑んだ。よし。早速今夜、あいつを部屋に呼ぶとするか。
ところが。
「っ?!……は?……ど、どういうことだ。何故お前らが来る?俺は妻に、背中に薬を塗りに来いと言ったのだぞ!こういうことは妻の役目だろうが!!」
背中が痛むから痛み止めの薬を塗りに来いと侍女に言づてを頼んでいたら、まさかの侍女3人だけが来た。クラウディアはいない。
「それが、奥様の方もかなり腰が痛むそうで…。起き上がれずにもうお休みになってございます。私たちでお手当てさせていただきますので…」
「な…………っ!!」
別の日には執事が来た。
「っ!!は?!何故お前が来る!俺は置いてあった書類の件で確認したいことがあるから来いとクラウディアに言ったんだぞ!」
「それが奥様は頭がひどく痛むそうで、もうお休みになられました。書類の件でしたら私めにも大概のことは分かります。ようやく目を通していただけたようで、ようございました。で、…どの部分になりますでしょうか、確認箇所は」
「~~~~~っ!!もういい!!下がれ!!」
よし分かった。そっちがその気なら、もういい。俺だって好きにしてやる。
当てつけのように冷たくなったクラウディアに当てつけ返すように、俺はあいつへの気遣いを一切やめてまた女たちと遊び始めたのだった。
そんなある日のことだった。
メラニー・ドノヴァンを屋敷に呼びつけて濃密な時を過ごしていた俺の部屋に、血相を変えた執事が飛び込むように入ってきた。
「失礼いたします、ダミアン様!」
「きゃあっ!ちょっとぉ!!」
「何だいきなり!失礼だろうが」
自分を睨みつけながらシーツを被るメラニーを無視して、執事は青い顔で俺に言った。
「お……大旦那様が…………ウィルコックス伯爵がお越しでございます……」
「……っ?!な、何だと?!おいっ!絶対にここに通すなよ!!居間に行かせろ居間に!!」
「は、もう居間にお通ししております」
「メラニー急げ!!早く服を着て出るんだ!!見られないうちに……!」
「ち、ちょっと待ってよ!!」
なんだ。何故いきなり父がここまでやって来る……?クソッ…、メラニーを連れ込んでいるのを見られたらマズい……。
俺は焦りながら自分も服を着ると鏡を見て髪を適当に撫でつけ、急いで部屋を飛び出した。
クラウディアのヤツが当てつけのようにアーネスト・グレアム侯爵令息と親しくしはじめたもんだから、たまには少し機嫌でもとってやるかと思ってわざわざこっちから誘ってやったというのに。
女とはいつもベッドで怠惰に過ごすばかりの俺は、ただ一緒に外を出歩いても特に楽しいとも思えない。それでも我慢して付き合ってやっていたというのに、昼食をとっている最中にまで仕事の話など持ち出してきて不愉快極まりなかった。誰が食事中にわざわざそんな疲れる会話を好むものか。あいつは本当に生真面目過ぎて面白味がない女だ。顔と家柄しか取り柄がない。それでもあいつが妻だというだけで周りからは羨ましがられるから、そこがこの結婚の最大のメリットではあるがな。
しかしこのままではマズい気がする。一日一緒に出かけてやったというのに、やはりあいつの態度は素っ気ないままだ。むしろますますひどくなっている気さえする。…もう少しこちらから距離を縮めろということか。…ふん。冗談じゃない。これ以上俺に何をさせたいんだ。別々にしている寝室を共にするのが手っ取り早いのかもしれないが、昔からクラウディアに対してはずっと冷淡に接してきて俺だ。今さら下手に出てヘコヘコと「なぁ…、夫婦なんだし、やっぱり一緒に寝ようぜ」なんて口が裂けても言いたくない。
向こうから強請ってくればまだ可愛げがあるものを。「ダミアン様…。あなた様が同じ屋根の下にいるというのに、こんなにも長い間独り寝をするのは寂しくてたまらないのです…」ぐらい言ってきたらどうなんだ。そしたら俺は渋々といった体で同衾してやってもいいのに。
まったく……面白くない……!
クラウディアが思い通りに動かない苛立ちと、万が一にもグレアム侯爵令息に妻を寝取られてしまうのではないかという焦りでどうにも嫌な気分が続いていた。
(っ!…そうだ……。あいつを夜中に俺の部屋に来させるのはどうだ。何かしらの用事を作って…。そこでそういう雰囲気に持ち込む。なんだかんだ言っても、幼い頃から愛し続けた俺からちょっと誘われれば、あいつも喜びのあまり大人しくベッドを共にするだろう。そうすればアーネスト・グレアムのことなどすぐに忘れるはずだ)
一度その関係になってしまえば、女は従順なものだ。もう意地なんか張っていられなくなるだろう。俺はほくそ笑んだ。よし。早速今夜、あいつを部屋に呼ぶとするか。
ところが。
「っ?!……は?……ど、どういうことだ。何故お前らが来る?俺は妻に、背中に薬を塗りに来いと言ったのだぞ!こういうことは妻の役目だろうが!!」
背中が痛むから痛み止めの薬を塗りに来いと侍女に言づてを頼んでいたら、まさかの侍女3人だけが来た。クラウディアはいない。
「それが、奥様の方もかなり腰が痛むそうで…。起き上がれずにもうお休みになってございます。私たちでお手当てさせていただきますので…」
「な…………っ!!」
別の日には執事が来た。
「っ!!は?!何故お前が来る!俺は置いてあった書類の件で確認したいことがあるから来いとクラウディアに言ったんだぞ!」
「それが奥様は頭がひどく痛むそうで、もうお休みになられました。書類の件でしたら私めにも大概のことは分かります。ようやく目を通していただけたようで、ようございました。で、…どの部分になりますでしょうか、確認箇所は」
「~~~~~っ!!もういい!!下がれ!!」
よし分かった。そっちがその気なら、もういい。俺だって好きにしてやる。
当てつけのように冷たくなったクラウディアに当てつけ返すように、俺はあいつへの気遣いを一切やめてまた女たちと遊び始めたのだった。
そんなある日のことだった。
メラニー・ドノヴァンを屋敷に呼びつけて濃密な時を過ごしていた俺の部屋に、血相を変えた執事が飛び込むように入ってきた。
「失礼いたします、ダミアン様!」
「きゃあっ!ちょっとぉ!!」
「何だいきなり!失礼だろうが」
自分を睨みつけながらシーツを被るメラニーを無視して、執事は青い顔で俺に言った。
「お……大旦那様が…………ウィルコックス伯爵がお越しでございます……」
「……っ?!な、何だと?!おいっ!絶対にここに通すなよ!!居間に行かせろ居間に!!」
「は、もう居間にお通ししております」
「メラニー急げ!!早く服を着て出るんだ!!見られないうちに……!」
「ち、ちょっと待ってよ!!」
なんだ。何故いきなり父がここまでやって来る……?クソッ…、メラニーを連れ込んでいるのを見られたらマズい……。
俺は焦りながら自分も服を着ると鏡を見て髪を適当に撫でつけ、急いで部屋を飛び出した。
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