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1.クラウディアの初恋
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マクラウド伯爵家の娘として生まれた私クラウディアが、婚約者のダミアン・ウィルコックス伯爵令息様に初めてお会いしたのはまだ5歳の頃のことだった。
それは母が主催し我が屋敷で開かれたある日のお茶会でのこと。侍女たちによっておめかしさせられていた私は、花々をあしらったデザインのふんわりとした桃色のワンピースに、同じ色のリボンを金色の巻き髪に飾っていた。
来客の方々が次々とやって来はじめてからしばらくすると、一人の美しいご婦人に手を引かれキョロキョロしながら屋敷の中に入ってきた男の子がいた。栗色の髪にはしばみ色の瞳の、勝ち気そうな男の子。それがダミアン様だった。
母親同士が楽しげに挨拶を交わしている間、私は母の隣で緊張して立っていた。目の前にいるダミアン様に挨拶をするべきかどうか、迷っていた。ダミアン様は相変わらずキョロキョロしながらうちの屋敷に飾られている絵画や置物などを物珍しそうに眺めている。
「こっ……、こんにちは……っ」
「……?」
同い年くらいに見えるその男の子とお友達になりたくて、私は心臓をバクバクさせながら勇気を出して声をかけてみた。
するとようやく私の存在に気付いた様子の彼が、私のことを初めてじっと見た。そして、
「わぁっ!かわいい~。君、お人形さんみたいだね!」
「…………っ?!」
ぱぁっと弾けるような笑顔で突然そんなことを言われ、私の頬は真っ赤に染まった。
「うちに君そっくりのお人形が置いてあるんだよ!お父様が外国に行った時にお土産で買ってきてくれたんだ。見たい?今度見においでよ」
「~~~~っ!!は…………はい……っ」
ひとたび言葉を交わすと、あとはダミアン様のペースだった。彼はとても明るくて溌剌としていて、内向的な私にはとても眩しく見えた。その日のお茶会には他にも数人の同じ年頃の子どもたちが来ていて、皆で楽しくお喋りをしたり遊んだりしたけれど、私の目は最初に言葉を交わしたダミアン様にずっと釘付けだった。
皆の中心となって楽しい雰囲気を作ってくれていた素敵なダミアン様。それから私たちは何度か互いの母親に連れられ、マクラウド家とウィルコックス家を訪問しあった。
「ほら!見てごらんクラウディア、前に言ってたの、このお人形だよ!君にそっくりでかわいいだろ?」
「……あ。…本当ですね、ダミアンさま。このお人形…」
ある日ウィルコックス伯爵家でそのお人形を見て私は驚いた。まるであの日の私とそっくり同じだったのだ。金色の巻き髪に桃色のリボンが結んであって、同じ色のドレスを着てちょこんと棚の上に座っていた。深緑色の瞳まで私にそっくりだった。
「…かわいい……」
(……あ)
思わずそう呟いてしまった私は真っ赤になった。そのお人形のお顔がとても可愛らしかったのでそう言っただけなのだが、「君にそっくり」と言われたあとに「可愛い」と言うなんて……、自分のことをそう思っているように聞こえてしまっただろうか。幼い私は気まずくてならなかった。
でもダミアン様はそんな私をじっと見つめて、
「うん。かわいい」
と言ったのだ。私は耳まで真っ赤になった。
「ねぇ、君はお母さまから聞いてる?クラウディア。ぼくたち大きくなったら結婚するんだよ」
「……え、…………えっ?!」
え?そうなの?
まだ母から何も聞いていなかった私はびっくりした。思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。ダミアン様は目を丸くして固まっている私の顔を覗き込むようにしてニコニコと笑って言った。
「うん。そうなんだよ、クラウディア。ねぇ、ぼくたちずっと一緒だね」
「………………は…………はい…………」
「ずーっと仲良しでいようね、クラウディア」
「……は、……は、はいっ」
心臓がドキドキと激しく脈打っていた。体中が熱くて、まるで体がふわふわと浮いているような気持ちだった。
私はこの人のお嫁さんになるんだ。
ダミアンさまの、お嫁さんに。
ずっと一緒……、ずーっと仲良し……。
その日から私にとって、ダミアン様はたった一人の特別な方になったのだった。
今思えば、彼はこの頃から天性の女たらしだったのかもしれない。
それは母が主催し我が屋敷で開かれたある日のお茶会でのこと。侍女たちによっておめかしさせられていた私は、花々をあしらったデザインのふんわりとした桃色のワンピースに、同じ色のリボンを金色の巻き髪に飾っていた。
来客の方々が次々とやって来はじめてからしばらくすると、一人の美しいご婦人に手を引かれキョロキョロしながら屋敷の中に入ってきた男の子がいた。栗色の髪にはしばみ色の瞳の、勝ち気そうな男の子。それがダミアン様だった。
母親同士が楽しげに挨拶を交わしている間、私は母の隣で緊張して立っていた。目の前にいるダミアン様に挨拶をするべきかどうか、迷っていた。ダミアン様は相変わらずキョロキョロしながらうちの屋敷に飾られている絵画や置物などを物珍しそうに眺めている。
「こっ……、こんにちは……っ」
「……?」
同い年くらいに見えるその男の子とお友達になりたくて、私は心臓をバクバクさせながら勇気を出して声をかけてみた。
するとようやく私の存在に気付いた様子の彼が、私のことを初めてじっと見た。そして、
「わぁっ!かわいい~。君、お人形さんみたいだね!」
「…………っ?!」
ぱぁっと弾けるような笑顔で突然そんなことを言われ、私の頬は真っ赤に染まった。
「うちに君そっくりのお人形が置いてあるんだよ!お父様が外国に行った時にお土産で買ってきてくれたんだ。見たい?今度見においでよ」
「~~~~っ!!は…………はい……っ」
ひとたび言葉を交わすと、あとはダミアン様のペースだった。彼はとても明るくて溌剌としていて、内向的な私にはとても眩しく見えた。その日のお茶会には他にも数人の同じ年頃の子どもたちが来ていて、皆で楽しくお喋りをしたり遊んだりしたけれど、私の目は最初に言葉を交わしたダミアン様にずっと釘付けだった。
皆の中心となって楽しい雰囲気を作ってくれていた素敵なダミアン様。それから私たちは何度か互いの母親に連れられ、マクラウド家とウィルコックス家を訪問しあった。
「ほら!見てごらんクラウディア、前に言ってたの、このお人形だよ!君にそっくりでかわいいだろ?」
「……あ。…本当ですね、ダミアンさま。このお人形…」
ある日ウィルコックス伯爵家でそのお人形を見て私は驚いた。まるであの日の私とそっくり同じだったのだ。金色の巻き髪に桃色のリボンが結んであって、同じ色のドレスを着てちょこんと棚の上に座っていた。深緑色の瞳まで私にそっくりだった。
「…かわいい……」
(……あ)
思わずそう呟いてしまった私は真っ赤になった。そのお人形のお顔がとても可愛らしかったのでそう言っただけなのだが、「君にそっくり」と言われたあとに「可愛い」と言うなんて……、自分のことをそう思っているように聞こえてしまっただろうか。幼い私は気まずくてならなかった。
でもダミアン様はそんな私をじっと見つめて、
「うん。かわいい」
と言ったのだ。私は耳まで真っ赤になった。
「ねぇ、君はお母さまから聞いてる?クラウディア。ぼくたち大きくなったら結婚するんだよ」
「……え、…………えっ?!」
え?そうなの?
まだ母から何も聞いていなかった私はびっくりした。思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。ダミアン様は目を丸くして固まっている私の顔を覗き込むようにしてニコニコと笑って言った。
「うん。そうなんだよ、クラウディア。ねぇ、ぼくたちずっと一緒だね」
「………………は…………はい…………」
「ずーっと仲良しでいようね、クラウディア」
「……は、……は、はいっ」
心臓がドキドキと激しく脈打っていた。体中が熱くて、まるで体がふわふわと浮いているような気持ちだった。
私はこの人のお嫁さんになるんだ。
ダミアンさまの、お嫁さんに。
ずっと一緒……、ずーっと仲良し……。
その日から私にとって、ダミアン様はたった一人の特別な方になったのだった。
今思えば、彼はこの頃から天性の女たらしだったのかもしれない。
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