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14.誘われた!!
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私は一旦友人たちから離れて、セレスティア様の元へ行く。オリバー殿下がいない、と思ったら、向こうで生徒会の伯爵令息方とお話している。
「どう?楽しんでる?」
「ええ、ありがとうございますセレスティア様。ふふ、休暇中にこうして友人たちと会ってお喋りできるなんて。とても楽しいですわ」
「……それならいいのだけど。あ、お食事もしてね。遠慮せず。これ美味しいわよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
セレスティア様は私を椅子に座らせ、ローストビーフを勧めてくれる。……うん、美味しい。最高。
「……ごめんなさいね、グレースさん」
「……?はい?」
もぐもぐやっていると、セレスティア様が困り果てたような顔で謝ってくる。一体何事だろうか。
「いつも弁えなさいと口酸っぱく言っているのだけど。あの子、昔からずっとあんな感じで……。我が儘で気が強くて、困ってしまうわ。あなたに不愉快な思いばかりさせていると思うと、本当に申し訳なくて。今日だって、ベイツ公爵令息を独り占めでしょう?」
「……ああ、……いえ」
ミランダ嬢のことかと気付いた私は、慌てて返事をする。セレスティア様は、私が婚約者のレイと一緒にいないものだから気に病んでくださっていたのだ。ミランダ嬢のせいなのは、まぁ半分以上その通りではあるけれど。
「今日だってあのドレス……はぁ……。もう溜息しか出ないわ。姉として本当恥ずかしい。私だけじゃなくてね、両親も一応苦言は呈したのよ。本当よ。夜会じゃあるまいし、その格好はよしなさいって。でも家族全員で非難したものだから、もう癇癪を起こしちゃって大変で……」
「……ま、まぁ……。それは……」
……注意されて、癇癪……?子どもか。あの人、本当に大丈夫なの?
だけど私の立場で「大変ですねぇあんなに非常識で我が儘な妹さんで」なんて言うわけにもいかないから、曖昧な相槌を打つ。たしかに今日のミランダ嬢は、この中庭の中ですさまじく浮いていた。隣にいる美麗な男も霞んで見えるくらいだ。
「あなたがいつもミランダに気を遣って一歩引いてくれているから、本当に申し訳なく思っているのよ。本当はあなただって、ベイツ公爵令息と一緒にいたいわよね」
いえ、別に。
「そんなにお気遣いいただいたら、逆に恐縮してしまいますわ、セレスティア様。私は少しも気にしておりません。今日だって、セレスティア様や友人たちと会えて本当にとても楽しいですし。私のことは気になさらないでください」
「……グレースさん……。はぁ……、ミランダがあなたのようだったら……」
「……。」
たしかに、あんな人を隣国ロゼルア王国の王子の元へ嫁がせなければならないなんて、セレスティア様も不安で仕方ないだろう。私が同じ立場だったら胃に穴があいてしまう。
「……さ、行きましょう、グレースさん」
「?……え?」
ローストビーフをナイフでキコキコやっている私の手首を、突如セレスティア様がガシッと握った。え?行くって、どこへ?もう食べちゃダメなの?ローストビーフ……。
セレスティア様に導かれるがままについていくと……、
(……いや、だからいいって言ってるのにぃー!!)
私はそのまま、レイたちのテーブルのところへ来させられてしまったのだ。
「さぁ、もう終わりよミランダ。婚約者様をグレースさんにお返ししてちょうだい」
「えぇ?!」
私たちを見上げたミランダ嬢が、露骨に不満そうな顔をする。
「嫌よ!ちょっと待ってよ!今音楽祭の話をしてたところなんだからぁ!レイに連れて行ってもらいたいの。ねーぇ、お願いよレイ」
……え?
(……この人……、本気で……?)
さすがの私も呆然とした。
嘘でしょう?恋人たちの一大イベントよ?いや、もちろんそれだけじゃないけど。国中から音楽祭を楽しみにたくさんの人が街に集まるわけだから、別に恋人だけのイベントじゃないけどさ。家族連れでも友達同士でも、そりゃオッケーよ。それでも、婚約者がいる男を、誘う?その婚約者の前で?
「あっははは。いや~俺がその日空いてたらなぁ~。喜んでミランダ嬢をお連れしたんだけどなぁ。もう他の子と約束しちゃってるもんだからさぁ」
バーンズ侯爵令息が、フォローなのか何なのか分からない横やりを入れてくる。
セレスティア様から冷気が漂いはじめた、その時だった。
「申し訳ない、ミランダ嬢。一応、先に婚約者を誘わせてくれないかな。フラれたら考えるからさ」
「……。……んっ?!」
何て?
今何て言った?
レイはまとわりつくミランダ嬢の両手をそっと自分の腕から外し、ゆっくりと立ち上がると、そのまま私の前に立つ。
「……グレース、一緒に行かないか?音楽祭」
「…………。さ、」
誘われた!!
「どう?楽しんでる?」
「ええ、ありがとうございますセレスティア様。ふふ、休暇中にこうして友人たちと会ってお喋りできるなんて。とても楽しいですわ」
「……それならいいのだけど。あ、お食事もしてね。遠慮せず。これ美味しいわよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
セレスティア様は私を椅子に座らせ、ローストビーフを勧めてくれる。……うん、美味しい。最高。
「……ごめんなさいね、グレースさん」
「……?はい?」
もぐもぐやっていると、セレスティア様が困り果てたような顔で謝ってくる。一体何事だろうか。
「いつも弁えなさいと口酸っぱく言っているのだけど。あの子、昔からずっとあんな感じで……。我が儘で気が強くて、困ってしまうわ。あなたに不愉快な思いばかりさせていると思うと、本当に申し訳なくて。今日だって、ベイツ公爵令息を独り占めでしょう?」
「……ああ、……いえ」
ミランダ嬢のことかと気付いた私は、慌てて返事をする。セレスティア様は、私が婚約者のレイと一緒にいないものだから気に病んでくださっていたのだ。ミランダ嬢のせいなのは、まぁ半分以上その通りではあるけれど。
「今日だってあのドレス……はぁ……。もう溜息しか出ないわ。姉として本当恥ずかしい。私だけじゃなくてね、両親も一応苦言は呈したのよ。本当よ。夜会じゃあるまいし、その格好はよしなさいって。でも家族全員で非難したものだから、もう癇癪を起こしちゃって大変で……」
「……ま、まぁ……。それは……」
……注意されて、癇癪……?子どもか。あの人、本当に大丈夫なの?
だけど私の立場で「大変ですねぇあんなに非常識で我が儘な妹さんで」なんて言うわけにもいかないから、曖昧な相槌を打つ。たしかに今日のミランダ嬢は、この中庭の中ですさまじく浮いていた。隣にいる美麗な男も霞んで見えるくらいだ。
「あなたがいつもミランダに気を遣って一歩引いてくれているから、本当に申し訳なく思っているのよ。本当はあなただって、ベイツ公爵令息と一緒にいたいわよね」
いえ、別に。
「そんなにお気遣いいただいたら、逆に恐縮してしまいますわ、セレスティア様。私は少しも気にしておりません。今日だって、セレスティア様や友人たちと会えて本当にとても楽しいですし。私のことは気になさらないでください」
「……グレースさん……。はぁ……、ミランダがあなたのようだったら……」
「……。」
たしかに、あんな人を隣国ロゼルア王国の王子の元へ嫁がせなければならないなんて、セレスティア様も不安で仕方ないだろう。私が同じ立場だったら胃に穴があいてしまう。
「……さ、行きましょう、グレースさん」
「?……え?」
ローストビーフをナイフでキコキコやっている私の手首を、突如セレスティア様がガシッと握った。え?行くって、どこへ?もう食べちゃダメなの?ローストビーフ……。
セレスティア様に導かれるがままについていくと……、
(……いや、だからいいって言ってるのにぃー!!)
私はそのまま、レイたちのテーブルのところへ来させられてしまったのだ。
「さぁ、もう終わりよミランダ。婚約者様をグレースさんにお返ししてちょうだい」
「えぇ?!」
私たちを見上げたミランダ嬢が、露骨に不満そうな顔をする。
「嫌よ!ちょっと待ってよ!今音楽祭の話をしてたところなんだからぁ!レイに連れて行ってもらいたいの。ねーぇ、お願いよレイ」
……え?
(……この人……、本気で……?)
さすがの私も呆然とした。
嘘でしょう?恋人たちの一大イベントよ?いや、もちろんそれだけじゃないけど。国中から音楽祭を楽しみにたくさんの人が街に集まるわけだから、別に恋人だけのイベントじゃないけどさ。家族連れでも友達同士でも、そりゃオッケーよ。それでも、婚約者がいる男を、誘う?その婚約者の前で?
「あっははは。いや~俺がその日空いてたらなぁ~。喜んでミランダ嬢をお連れしたんだけどなぁ。もう他の子と約束しちゃってるもんだからさぁ」
バーンズ侯爵令息が、フォローなのか何なのか分からない横やりを入れてくる。
セレスティア様から冷気が漂いはじめた、その時だった。
「申し訳ない、ミランダ嬢。一応、先に婚約者を誘わせてくれないかな。フラれたら考えるからさ」
「……。……んっ?!」
何て?
今何て言った?
レイはまとわりつくミランダ嬢の両手をそっと自分の腕から外し、ゆっくりと立ち上がると、そのまま私の前に立つ。
「……グレース、一緒に行かないか?音楽祭」
「…………。さ、」
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