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11. 王太子殿下との出会い
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(ど、どうしよう……。とんでもないことになってしまったわ……!!)
有無を言わせぬ雰囲気のジーンさんに逆らえず、王家の馬車に乗り込んだ私の心臓は激しく脈打ち続けていた。背中にじんわりと汗が浮かぶ。
どうしよう……。あ、あの子、王女様だったの……?!何も知らずに私ったら、「アリューシャさん」なんてくだけた呼び方をした挙げ句に、無茶はしちゃダメよ、なんて上から目線で説教めいたことを言い……、し、しかも、あろうことか、頭ナデナデまでしちゃったわ……!
あぁぁ……!!
ふかふかの座席の上で揺られながら、私は頭を抱えた。え?大丈夫?私。し……、処罰されない?不敬罪?不敬罪になる?ならない?
緊張のあまりワケの分からないことを延々と考えているうちに、馬車はついに王宮に着いてしまった。馬車を降り、その重厚かつ豪華な宮殿を目にした途端、クラァ……とめまいがした。
「こちらです。王太子殿下がお待ちです。私の後ろをついてきてください」
動揺し続ける私にジーンさんが淡々と言う。そして返事も聞かずにスタスタと歩きはじめてしまった。ああ……。こんな質素な身なりで……こんなゴージャスな王宮を歩くことになるなんて。場違いにも程があるわ……。
通りすぎるたびに使用人の方々にチラチラ見られる中を、ジーンさんに続いてひたすら歩き続ける私は、恥ずかしさと緊張で機械仕掛けの人形のようにぎこちない歩き方になっていた。
やがて奥まった部屋の大きな扉を開けると、ジーンさんが中に向かって凛とした声を上げる。
「失礼いたします。殿下、お連れいたしました」
「ご苦労」
すぐに返事が聞こえ、ジーンさんから促された私はおずおずと足を踏み入れた。
大きな部屋には美しい模様の絨毯が一面に敷かれており、その中央に一人の男性が進み出てきた。
「……っ、」
その方の姿を目にした途端、私は息を呑んだ。
プラチナブロンドの髪は繊細にきらめき、まるで美しい絹糸のよう。その深い海のような青い瞳は憂いを帯び、吸い込まれそうなほどに澄みきっている。スッと真っ直ぐに通った鼻梁。形の良い唇。……信じられないほどの美男子だったのだ。
(こ……この方が、王太子殿下……?)
その姿はまさしく、お伽噺に登場する王子様そのものだった。
(素敵な方……)
我知らず、見惚れてしまっていたらしい。目の前のその方も、私のことをじっと見つめている。
ふと我に返ったのは、左側から呼びかけてくる高い声が、小さく耳に届いたからだった。
「……ぇ、……ねぇってば。おーい!二人とも聞いてます?!」
「っ!!」
慌てて声のする方を向くと、そこには昨日出会ったアリューシャちゃん……、じゃなかった、アリューシャ王女殿下が立っていたのだ。
「あ、ああ。すまない。少しぼうっとしていた。……よく来てくれた、ミラベル嬢。昨日妹を助けてくれたこと、心から礼を言うよ。私はセレオン・レミーアレン。この国の王太子だ」
「は、はい……っ。は、はじめまし……」
「うふふっ!嬉しいわミラベルさんっ!またこうして会えるなんて!!」
王太子殿下からのご挨拶に、私は慌てて学園や母から学んだカーテシーをしようした。すると、横からアリューシャ王女殿下が私に飛びついてきた。バランスを崩して倒れそうになり、どうにか踏みとどまる。
「こら、アリューシャ。なんて行儀が悪いんだ。はしたない真似を」
「ごめんなさーい。だって私、もう嬉しくて嬉しくて……!ミラベルさんにどうしてもまた会いたかったのよ!」
「……アリューシャ……王女殿下……」
私の腕に抱きついたまま、ルビーのような瞳をキラキラと輝かせてこちらを見上げる王女殿下はとても愛らしく、ほんの少し緊張の糸が緩んだ。
「……私こそ、こうしてまたお会いできて嬉しゅうございます、アリューシャ王女殿下。何も知らずに昨日は失礼な態度をとり、誠に申し訳ございません。……改めまして、ミラベル・クルースと申します。王太子殿下、王女殿下、本日はお招きいただきありがとうございます」
左腕にはまだアリューシャ王女殿下が張り付いたままではあるけれど、私はできるだけカーテシーに近い姿勢をとり目の前のお二人に挨拶をした。
有無を言わせぬ雰囲気のジーンさんに逆らえず、王家の馬車に乗り込んだ私の心臓は激しく脈打ち続けていた。背中にじんわりと汗が浮かぶ。
どうしよう……。あ、あの子、王女様だったの……?!何も知らずに私ったら、「アリューシャさん」なんてくだけた呼び方をした挙げ句に、無茶はしちゃダメよ、なんて上から目線で説教めいたことを言い……、し、しかも、あろうことか、頭ナデナデまでしちゃったわ……!
あぁぁ……!!
ふかふかの座席の上で揺られながら、私は頭を抱えた。え?大丈夫?私。し……、処罰されない?不敬罪?不敬罪になる?ならない?
緊張のあまりワケの分からないことを延々と考えているうちに、馬車はついに王宮に着いてしまった。馬車を降り、その重厚かつ豪華な宮殿を目にした途端、クラァ……とめまいがした。
「こちらです。王太子殿下がお待ちです。私の後ろをついてきてください」
動揺し続ける私にジーンさんが淡々と言う。そして返事も聞かずにスタスタと歩きはじめてしまった。ああ……。こんな質素な身なりで……こんなゴージャスな王宮を歩くことになるなんて。場違いにも程があるわ……。
通りすぎるたびに使用人の方々にチラチラ見られる中を、ジーンさんに続いてひたすら歩き続ける私は、恥ずかしさと緊張で機械仕掛けの人形のようにぎこちない歩き方になっていた。
やがて奥まった部屋の大きな扉を開けると、ジーンさんが中に向かって凛とした声を上げる。
「失礼いたします。殿下、お連れいたしました」
「ご苦労」
すぐに返事が聞こえ、ジーンさんから促された私はおずおずと足を踏み入れた。
大きな部屋には美しい模様の絨毯が一面に敷かれており、その中央に一人の男性が進み出てきた。
「……っ、」
その方の姿を目にした途端、私は息を呑んだ。
プラチナブロンドの髪は繊細にきらめき、まるで美しい絹糸のよう。その深い海のような青い瞳は憂いを帯び、吸い込まれそうなほどに澄みきっている。スッと真っ直ぐに通った鼻梁。形の良い唇。……信じられないほどの美男子だったのだ。
(こ……この方が、王太子殿下……?)
その姿はまさしく、お伽噺に登場する王子様そのものだった。
(素敵な方……)
我知らず、見惚れてしまっていたらしい。目の前のその方も、私のことをじっと見つめている。
ふと我に返ったのは、左側から呼びかけてくる高い声が、小さく耳に届いたからだった。
「……ぇ、……ねぇってば。おーい!二人とも聞いてます?!」
「っ!!」
慌てて声のする方を向くと、そこには昨日出会ったアリューシャちゃん……、じゃなかった、アリューシャ王女殿下が立っていたのだ。
「あ、ああ。すまない。少しぼうっとしていた。……よく来てくれた、ミラベル嬢。昨日妹を助けてくれたこと、心から礼を言うよ。私はセレオン・レミーアレン。この国の王太子だ」
「は、はい……っ。は、はじめまし……」
「うふふっ!嬉しいわミラベルさんっ!またこうして会えるなんて!!」
王太子殿下からのご挨拶に、私は慌てて学園や母から学んだカーテシーをしようした。すると、横からアリューシャ王女殿下が私に飛びついてきた。バランスを崩して倒れそうになり、どうにか踏みとどまる。
「こら、アリューシャ。なんて行儀が悪いんだ。はしたない真似を」
「ごめんなさーい。だって私、もう嬉しくて嬉しくて……!ミラベルさんにどうしてもまた会いたかったのよ!」
「……アリューシャ……王女殿下……」
私の腕に抱きついたまま、ルビーのような瞳をキラキラと輝かせてこちらを見上げる王女殿下はとても愛らしく、ほんの少し緊張の糸が緩んだ。
「……私こそ、こうしてまたお会いできて嬉しゅうございます、アリューシャ王女殿下。何も知らずに昨日は失礼な態度をとり、誠に申し訳ございません。……改めまして、ミラベル・クルースと申します。王太子殿下、王女殿下、本日はお招きいただきありがとうございます」
左腕にはまだアリューシャ王女殿下が張り付いたままではあるけれど、私はできるだけカーテシーに近い姿勢をとり目の前のお二人に挨拶をした。
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