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その後のお話. 幸せ満喫中・後編(※sideエルド)
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灯りを少し落として暗くするから、絶対にそっちを見ないからと宥めすかし、俺は先に湯船に入ってアリアが来るのを待った。
しばらくすると、ようやくアリアが入ってきた気配がした。
「……まだ振り返らないで」
「うん。分かってる分かってる」
……はぁ。なんだこの幸せは。あの恋い焦がれ続けたアリアと今、こうしてじゃれ合うような会話を交わしながら二人きりで湯浴みをしようとしているんだぞ。もうこれだけで、日々の仕事がどんなに過酷なものであったとしても耐えられる。
……チャポ……
小さく水音を立てながら、アリアがそっと俺の隣に入ってきた。その瞬間、まるで初心な少年のように俺の心臓が大きく跳ねた。ゆっくりと隣に視線を向けると……アリアは完全に俺に背を向けている。細く華奢な肩。長いピンクブロンドは器用にくるくると結い上げられ、真っ白なうなじが俺を誘っているように扇情的に映る。
たまらず俺は後ろからアリアを抱きしめ、膝の上に乗せた。
「あ……っ、エ、エルド……」
戸惑うアリアの肩口に、チュ、と唇を落とし、赤く染まったその耳元で静かに囁く。
「嬉しいよ。こうして湯浴みをしながら君のことを抱きしめてみたかったんだ。……ありがとう、アリア」
「……っ、……エルドったら……」
俺の言葉にピクリと反応したアリアは、やがて小さく息をつき、後ろから抱きしめている俺の手の上にそっと自分の手を重ねてきた。湯の中で触れ合うその滑らかな感触に、下腹が熱くなる。
……いかん。落ち着け。ここでがっついたら本気でアリアに嫌がられてしまうかもしれない。
「……嬉しいの?」
「……ん?」
チャプチャプと跳ねる水音に混じって、ふいにアリアが小さな声で呟く。俺は彼女の顔を覗き込むようにして聞き返した。
「……私とこうしているのが、嬉しい?」
「ああ、もちろん。さっき言っただろう。……幸せだよ」
「……ならよかった。あなたが幸せだと思ってくれているなら、私も嬉しい」
「……っ、」
はにかみながらそう言って笑う妻が、あまりにも可愛すぎて……
「……っ!んっ…、」
俺は彼女の体の向きを強引に変え、素早くその唇を奪った。
驚いて強張ったアリアの体からはすぐに力が抜け、俺の行為を受け入れるように、首に両手をまわしてくる。
囀るような水音の中、しばらく夢中になって口づけを交わしわずかに唇を離すと、俺は掠れる声で彼女に問うた。
「……アリア……、君も幸せかい?」
俺の言葉に一瞬そのアメジストの瞳を大きく見開いた後、アリアは満面の笑みで俺にコツンと額をくっつけた。
「もちろんよ。あなたと二人でこうしている時間が、私一番幸せなのよ。知っているでしょう?」
「……そうか」
よかった。
アリアのこの最高の笑顔が、こんなにそばで見られるなんて。
俺だけが今、アリアの笑顔を独占しているんだ。
長い間、苦しんでいる姿ばかりを見てきた。傷つけられ、冷遇され、軽んじられ、嘲笑され……。
それでもアリアは孤独の中、必死に足を踏ん張って前を見続けていた。
その姿をそばで見守りながら、俺がどれほどもどかしかったか。
どれほど助けてあげたいと、この地獄のような環境からどこか遠くへ連れ出してやりたいと望んだことか……。
「……エ、エルド……。ちょっと、苦しい……」
「っ!……すまない、つい……」
いつの間にか、俺はアリアの細い体を思いきり腕の中に抱きしめていた。……こんなことをしていたらアリアがのぼせてしまう。
……それに……、
「……そろそろ出よう、アリア」
「えっ?もういいの?エルド。あんなに一緒に入りたがっていたくせに」
クスクス笑うアリアに、正直に言った。
「うん。……もうこれ以上、我慢できそうにない」
早く抱きたいのだと暗に伝えると、察したアリアの顔が真っ赤になった。
「……おいで。湯浴みはどうせまた明日の朝するさ」
「…………はい……」
照れて俯いてしまった可愛い妻の手を引いて、俺は浴室を出た。アリアはもう抵抗しなかった。
二人きりで過ごす、至福の時。神秘的な色味を放ちながら真っ白なシーツの上に広がる、愛しい人の艷やかな髪。
寝室の窓から見える大きな月は、あの夜のように青く美しく輝いていた。
ーーーーー end ーーーーー
お読みいただきありがとうございましたー!(*^^*)
しばらくすると、ようやくアリアが入ってきた気配がした。
「……まだ振り返らないで」
「うん。分かってる分かってる」
……はぁ。なんだこの幸せは。あの恋い焦がれ続けたアリアと今、こうしてじゃれ合うような会話を交わしながら二人きりで湯浴みをしようとしているんだぞ。もうこれだけで、日々の仕事がどんなに過酷なものであったとしても耐えられる。
……チャポ……
小さく水音を立てながら、アリアがそっと俺の隣に入ってきた。その瞬間、まるで初心な少年のように俺の心臓が大きく跳ねた。ゆっくりと隣に視線を向けると……アリアは完全に俺に背を向けている。細く華奢な肩。長いピンクブロンドは器用にくるくると結い上げられ、真っ白なうなじが俺を誘っているように扇情的に映る。
たまらず俺は後ろからアリアを抱きしめ、膝の上に乗せた。
「あ……っ、エ、エルド……」
戸惑うアリアの肩口に、チュ、と唇を落とし、赤く染まったその耳元で静かに囁く。
「嬉しいよ。こうして湯浴みをしながら君のことを抱きしめてみたかったんだ。……ありがとう、アリア」
「……っ、……エルドったら……」
俺の言葉にピクリと反応したアリアは、やがて小さく息をつき、後ろから抱きしめている俺の手の上にそっと自分の手を重ねてきた。湯の中で触れ合うその滑らかな感触に、下腹が熱くなる。
……いかん。落ち着け。ここでがっついたら本気でアリアに嫌がられてしまうかもしれない。
「……嬉しいの?」
「……ん?」
チャプチャプと跳ねる水音に混じって、ふいにアリアが小さな声で呟く。俺は彼女の顔を覗き込むようにして聞き返した。
「……私とこうしているのが、嬉しい?」
「ああ、もちろん。さっき言っただろう。……幸せだよ」
「……ならよかった。あなたが幸せだと思ってくれているなら、私も嬉しい」
「……っ、」
はにかみながらそう言って笑う妻が、あまりにも可愛すぎて……
「……っ!んっ…、」
俺は彼女の体の向きを強引に変え、素早くその唇を奪った。
驚いて強張ったアリアの体からはすぐに力が抜け、俺の行為を受け入れるように、首に両手をまわしてくる。
囀るような水音の中、しばらく夢中になって口づけを交わしわずかに唇を離すと、俺は掠れる声で彼女に問うた。
「……アリア……、君も幸せかい?」
俺の言葉に一瞬そのアメジストの瞳を大きく見開いた後、アリアは満面の笑みで俺にコツンと額をくっつけた。
「もちろんよ。あなたと二人でこうしている時間が、私一番幸せなのよ。知っているでしょう?」
「……そうか」
よかった。
アリアのこの最高の笑顔が、こんなにそばで見られるなんて。
俺だけが今、アリアの笑顔を独占しているんだ。
長い間、苦しんでいる姿ばかりを見てきた。傷つけられ、冷遇され、軽んじられ、嘲笑され……。
それでもアリアは孤独の中、必死に足を踏ん張って前を見続けていた。
その姿をそばで見守りながら、俺がどれほどもどかしかったか。
どれほど助けてあげたいと、この地獄のような環境からどこか遠くへ連れ出してやりたいと望んだことか……。
「……エ、エルド……。ちょっと、苦しい……」
「っ!……すまない、つい……」
いつの間にか、俺はアリアの細い体を思いきり腕の中に抱きしめていた。……こんなことをしていたらアリアがのぼせてしまう。
……それに……、
「……そろそろ出よう、アリア」
「えっ?もういいの?エルド。あんなに一緒に入りたがっていたくせに」
クスクス笑うアリアに、正直に言った。
「うん。……もうこれ以上、我慢できそうにない」
早く抱きたいのだと暗に伝えると、察したアリアの顔が真っ赤になった。
「……おいで。湯浴みはどうせまた明日の朝するさ」
「…………はい……」
照れて俯いてしまった可愛い妻の手を引いて、俺は浴室を出た。アリアはもう抵抗しなかった。
二人きりで過ごす、至福の時。神秘的な色味を放ちながら真っ白なシーツの上に広がる、愛しい人の艷やかな髪。
寝室の窓から見える大きな月は、あの夜のように青く美しく輝いていた。
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