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最終話. 愛を胸に、前へ
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その日、コーデリア様と久しぶりのお喋りを楽しんだ後公務に戻った私は、いつものように夜まで仕事に明け暮れた。
部屋に戻り、一度湯浴みを済ませてから夫婦の寝室に入る。
「今日もお疲れ様、アリア。……おいで」
エルドがベッドサイドに腰かけ、私を呼び寄せる。……この瞬間が一日の中で一番ときめいて、一番幸せ。
浮き立つ気持ちを抑えながら、私はエルドのそばに一歩一歩近付く。
手を広げて迎えてくれたエルドは満足そうに微笑み、私を抱きしめ膝の上に乗せてくれた。
片手で私の腰を抱き寄せながら、もう片方の手で愛おしそうに私の髪を撫で、横髪をそっと耳にかける。
片時も目を離さずに私を見つめながら、エルドが低く甘い声で問いかける。
「どうだった?プレストン辺境伯夫人との再会は」
「ふふ、すごく楽しかったわ。侯爵もコーデリア様も、引き受けてくださって本当によかった。ありがたいわ」
「そうだね。今は優秀な人物が一人でも多く欲しいところだ。……この話は、今はもう止めておこうかな」
そう言うとエルドは私の頬を撫で、私の額に自分の額をそっと押し当てた。今にも唇が触れ合う距離で、愛しい人がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「この時間だけは、君に仕事のことを忘れさせたいからね。君を癒やすための、……そして俺の想いを伝えるためだけの時間だ」
「エルド……。……あっ……」
たくましい腕に軽々と抱きかかえられ、優しくベッドの真ん中に降ろされる。そのまま覆いかぶさってきたエルドの唇が私の唇に重なり、私はうっとりと目を閉じた。鼓動が高鳴り、体が一気に熱くなる。気恥ずかしさと喜びで胸がいっぱいになる、幸せなこの瞬間。
少し体を離したエルドが、私の顔をじっと見つめながら髪を撫で、噛みしめるように言う。
「……本当に夢みたいだ。こうして君をこの腕の中に抱いていられるなんて」
「……エルドったら……。毎晩そう言うのね」
「ああ、そうだよ。毎晩この幸せを得られたことに感謝しているんだ。俺がどれだけ君に恋い焦がれていたか、叶わぬ想いだと自制しながらも、どれほどこの時を渇望していたか……」
「……私も同じよ、エルド。私だって……」
それ以上は恥ずかしくて言葉にならない。だけどエルドは心から嬉しそうに微笑んで、一層強く私を抱きしめた。耳元や首筋に何度もキスを繰り返しながら、望む言葉を与えてくれる。
「愛してるよ、アリア。俺には生涯君だけだ。……もう決して、君を離さない」
毎夜繰り返されるその甘い囁きが、私の身も心も優しく溶かしていく。指と指を絡め合い唇を重ねるうちに、次第に互いの息が上がっていく。
私を求めるエルドの熱に応えながら、二人だけの世界に私はうっとりと身を委ねた──────
「……。…………ん……、」
明るい日差しと、小鳥の囀り。
気持ちの良いまどろみから次第に意識が覚醒していく。それでもまだぼんやりしながら少し目を開けると、目の前に肘をついたまま私をジッと見つめているエルドの姿があった。
「おはよう、アリア」
「ん……、おはよう……」
エルド、まだ裸のままだ……。たくましい二の腕をぼんやりと見つめながらそんなことを考え、ハッとする。わ、私も裸のままじゃないの……っ!!
少し露わになっていた肩口まで、慌ててブランケットを引き上げる。エルドは可笑しそうに笑いながら言った。
「そんなに慌てることないだろう」
「だ、だって……!」
「毎晩のようにこうして肌を合わせているというのに」
「っ!!」
「君の美しさは夕べもたっぷり堪能したよ。隅から隅まで。それに、寝顔も……。まるで女神みたいだった」
「な……っ!!ま、また、そういうことを……っ」
この上なく優しい目で私を見つめながらエルドがしみじみとそんなことを言うものだから、すっかり目が覚めてしまった。恥ずかしくて全身が火照る。
「……はぁ。可愛いな本当。すぐにそんな顔をしては俺を煽ってくるんだから。このまま君をこの腕の中に閉じ込めて、もう一度愛を交わしたくなる」
「っ!!ダッ……ダメよそんな……っ!だって……っ、」
「ふ……。分かってるよ、もちろん。朝が来れば俺たちには山ほどの仕事が待っている。切り替えないとな。全てはこの国のため。……そうだろう?」
「……ええ」
どんなに幸せな夜を過ごそうとも、決して日常を怠惰に過ごしそこに留まろうとはしない。しっかりと自制し、この国の民のために働く責務を理解した上で私の隣に立っていてくれる。エルドは今や立派なこの国の主導者だ。
身支度を整え、忙しない朝食をとりながら互いの今日一日の予定について事務的に言葉を交わす。
「俺はこれから伯爵領の視察に行ってくるよ。領民たちの間でトラブルが絶えないと領主から相談があった」
「分かったわ。よろしくねエルド」
「ああ。君は午前中に大臣たちとの会議だったね」
「ええ。来月から運用する新法案について最終調整よ」
「分かった。頑張っておいで」
「……ありがとう。あなたも気を付けて」
気遣いの滲む彼の言葉に、思わず顔が綻ぶ。視線を交わしたエルドもまた、ほんの少し微笑んでいた。
王宮を後にするエルドの背中を見送り、朝の会議に出席するため廊下を歩く。私の前後にはいつものとおり、リネットたち侍女と数人の護衛騎士。すれ違う使用人たちが、深々と頭を垂れ挨拶をしてくれる。廊下にずらりと並ぶ大きな窓からは、一日の始まりを告げる朝の日差しが燦々と降り注いでいる。
私がこれから先歩んでいく長い道のりには、まだまだ数え切れないほどの困難や、乗り越えなくてはならない大きな課題が立ち塞がってくるだろう。
だけど、どんな時でも私は決して一人じゃない。私を信じついてきてくれるこんなにも頼もしい人たちが、私を見守り、支えようとしてくれる人たちが、……そして、大きな愛で私を支え、隣に並んで立っていてくれる人がいる。
大丈夫。心折れることはない。この愛を胸に、私はどんな時でも前に進んでいける。
これは私自身が選んだ道。この命尽きるその日まで、私はこの国と民のために生きていく。
「アリア女王陛下、お着きになりました」
衛兵の声とともに、会議室の扉が開く。すでに集まっていた大臣たちが一斉にこちらを見た。
しっかりと前を見据えたまま、私は一歩ずつ中へと足を進めた。
ーーーーーー end ーーーーーー
長くなりましたが、最後までお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました。
たぶん明日にはエルド視点の後日談も上げます。(ただのイチャイチャ話ですが、お楽しみいただけたら嬉しいです)
部屋に戻り、一度湯浴みを済ませてから夫婦の寝室に入る。
「今日もお疲れ様、アリア。……おいで」
エルドがベッドサイドに腰かけ、私を呼び寄せる。……この瞬間が一日の中で一番ときめいて、一番幸せ。
浮き立つ気持ちを抑えながら、私はエルドのそばに一歩一歩近付く。
手を広げて迎えてくれたエルドは満足そうに微笑み、私を抱きしめ膝の上に乗せてくれた。
片手で私の腰を抱き寄せながら、もう片方の手で愛おしそうに私の髪を撫で、横髪をそっと耳にかける。
片時も目を離さずに私を見つめながら、エルドが低く甘い声で問いかける。
「どうだった?プレストン辺境伯夫人との再会は」
「ふふ、すごく楽しかったわ。侯爵もコーデリア様も、引き受けてくださって本当によかった。ありがたいわ」
「そうだね。今は優秀な人物が一人でも多く欲しいところだ。……この話は、今はもう止めておこうかな」
そう言うとエルドは私の頬を撫で、私の額に自分の額をそっと押し当てた。今にも唇が触れ合う距離で、愛しい人がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「この時間だけは、君に仕事のことを忘れさせたいからね。君を癒やすための、……そして俺の想いを伝えるためだけの時間だ」
「エルド……。……あっ……」
たくましい腕に軽々と抱きかかえられ、優しくベッドの真ん中に降ろされる。そのまま覆いかぶさってきたエルドの唇が私の唇に重なり、私はうっとりと目を閉じた。鼓動が高鳴り、体が一気に熱くなる。気恥ずかしさと喜びで胸がいっぱいになる、幸せなこの瞬間。
少し体を離したエルドが、私の顔をじっと見つめながら髪を撫で、噛みしめるように言う。
「……本当に夢みたいだ。こうして君をこの腕の中に抱いていられるなんて」
「……エルドったら……。毎晩そう言うのね」
「ああ、そうだよ。毎晩この幸せを得られたことに感謝しているんだ。俺がどれだけ君に恋い焦がれていたか、叶わぬ想いだと自制しながらも、どれほどこの時を渇望していたか……」
「……私も同じよ、エルド。私だって……」
それ以上は恥ずかしくて言葉にならない。だけどエルドは心から嬉しそうに微笑んで、一層強く私を抱きしめた。耳元や首筋に何度もキスを繰り返しながら、望む言葉を与えてくれる。
「愛してるよ、アリア。俺には生涯君だけだ。……もう決して、君を離さない」
毎夜繰り返されるその甘い囁きが、私の身も心も優しく溶かしていく。指と指を絡め合い唇を重ねるうちに、次第に互いの息が上がっていく。
私を求めるエルドの熱に応えながら、二人だけの世界に私はうっとりと身を委ねた──────
「……。…………ん……、」
明るい日差しと、小鳥の囀り。
気持ちの良いまどろみから次第に意識が覚醒していく。それでもまだぼんやりしながら少し目を開けると、目の前に肘をついたまま私をジッと見つめているエルドの姿があった。
「おはよう、アリア」
「ん……、おはよう……」
エルド、まだ裸のままだ……。たくましい二の腕をぼんやりと見つめながらそんなことを考え、ハッとする。わ、私も裸のままじゃないの……っ!!
少し露わになっていた肩口まで、慌ててブランケットを引き上げる。エルドは可笑しそうに笑いながら言った。
「そんなに慌てることないだろう」
「だ、だって……!」
「毎晩のようにこうして肌を合わせているというのに」
「っ!!」
「君の美しさは夕べもたっぷり堪能したよ。隅から隅まで。それに、寝顔も……。まるで女神みたいだった」
「な……っ!!ま、また、そういうことを……っ」
この上なく優しい目で私を見つめながらエルドがしみじみとそんなことを言うものだから、すっかり目が覚めてしまった。恥ずかしくて全身が火照る。
「……はぁ。可愛いな本当。すぐにそんな顔をしては俺を煽ってくるんだから。このまま君をこの腕の中に閉じ込めて、もう一度愛を交わしたくなる」
「っ!!ダッ……ダメよそんな……っ!だって……っ、」
「ふ……。分かってるよ、もちろん。朝が来れば俺たちには山ほどの仕事が待っている。切り替えないとな。全てはこの国のため。……そうだろう?」
「……ええ」
どんなに幸せな夜を過ごそうとも、決して日常を怠惰に過ごしそこに留まろうとはしない。しっかりと自制し、この国の民のために働く責務を理解した上で私の隣に立っていてくれる。エルドは今や立派なこの国の主導者だ。
身支度を整え、忙しない朝食をとりながら互いの今日一日の予定について事務的に言葉を交わす。
「俺はこれから伯爵領の視察に行ってくるよ。領民たちの間でトラブルが絶えないと領主から相談があった」
「分かったわ。よろしくねエルド」
「ああ。君は午前中に大臣たちとの会議だったね」
「ええ。来月から運用する新法案について最終調整よ」
「分かった。頑張っておいで」
「……ありがとう。あなたも気を付けて」
気遣いの滲む彼の言葉に、思わず顔が綻ぶ。視線を交わしたエルドもまた、ほんの少し微笑んでいた。
王宮を後にするエルドの背中を見送り、朝の会議に出席するため廊下を歩く。私の前後にはいつものとおり、リネットたち侍女と数人の護衛騎士。すれ違う使用人たちが、深々と頭を垂れ挨拶をしてくれる。廊下にずらりと並ぶ大きな窓からは、一日の始まりを告げる朝の日差しが燦々と降り注いでいる。
私がこれから先歩んでいく長い道のりには、まだまだ数え切れないほどの困難や、乗り越えなくてはならない大きな課題が立ち塞がってくるだろう。
だけど、どんな時でも私は決して一人じゃない。私を信じついてきてくれるこんなにも頼もしい人たちが、私を見守り、支えようとしてくれる人たちが、……そして、大きな愛で私を支え、隣に並んで立っていてくれる人がいる。
大丈夫。心折れることはない。この愛を胸に、私はどんな時でも前に進んでいける。
これは私自身が選んだ道。この命尽きるその日まで、私はこの国と民のために生きていく。
「アリア女王陛下、お着きになりました」
衛兵の声とともに、会議室の扉が開く。すでに集まっていた大臣たちが一斉にこちらを見た。
しっかりと前を見据えたまま、私は一歩ずつ中へと足を進めた。
ーーーーーー end ーーーーーー
長くなりましたが、最後までお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました。
たぶん明日にはエルド視点の後日談も上げます。(ただのイチャイチャ話ですが、お楽しみいただけたら嬉しいです)
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