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18. 義妹の告げ口
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「……は?」
義妹の突拍子もない言葉に、私の口から呆けた声が漏れた。ラウル様が、浮気……?
あまりの馬鹿馬鹿しさに、開いた口が塞がらない。
「……一体何を言い出すの? あなた。今のラウル様の態度が冷たく感じたのは、あなたが……、」
「違うってば! そうじゃないの。あのね、あたしも半信半疑だったから、お義姉さまの心を乱すようなことは安易に言えないと思って黙っていたんだけどね……、ほら、覚えてる? お義姉さまたちの結婚式の少し前に、あたしの友人宅のお茶会に一緒に行ったでしょ? あそこであたしの友人をお義姉さまに何人か紹介したじゃない。その中で、ちょっとオドオドした感じの、暗い子がいたの覚えてる? ……ほら、そばかすがある、赤毛の」
「……。分かるわよ」
サリアの言葉を聞いていた私の脳内に、一人の気弱そうな令嬢の顔が浮かんできた。
『あ、あの……、は、初めまして……。……』
『……初めまして。オールディス侯爵家のティファナですわ。どうぞよろしくね』
挨拶を交わしたけれど、その子は名乗ることさえしなかった。けれどその様子からとても緊張しているのだろうと思い、その無作法を責める気にもならなかったのだけど。
サリアは言葉を続ける。
「ロージエっていう子なんだけどね。あのね、実はあの子、ラウル様と同じところでお仕事してるらしいのよ。王宮の文官として」
「……。……え? あの子が……?」
嘘でしょう? まさか。
なんて言ったらあまりにも失礼だから口には出さなかった。だけど、初対面のあの子の印象からするとあまりにも意外だった。王宮勤めで、しかも文官の仕事をしているなんて、信じられない。
別に若い女性が王宮内で責任ある仕事に全く就いていないわけじゃない。男性の人数とは比べ物にもならないけれど、女性だって能力のある人は何人も働いている。けれど、正直あの子のあの雰囲気が、王宮の文官とはあまりにも程遠い印象だったのだ。
「意外でしょ?」
サリアは私の心を見透かしたようにそう言った。
「……ええ、まぁ」
「あんなに愚鈍で気の弱い子なのにね。意外にも頭はいいのよ。バリバリ働いてるみたい。あたしもお義姉さまに紹介した時点では全然知らなくて。あの子ったら、あの時お義姉さまのそばを離れた後、あたしにこっそり言ってきたのよ。実はね、私あなたのお義姉さまの旦那様と同じ職場で働いてるのよって。ホントにビックリしたわ。……でね、続けてこう言ったの。実は私とラウル様って、愛しあってるのよ、って」
「……。馬鹿馬鹿しい……。くだらないわ。そんなはずないでしょう。その子の妄言よ」
冷静を装ってそう答えつつも、私の心臓は痛いほど大きく脈打っていた。馬鹿馬鹿しい。そう。もしも私とラウル様の仲が結婚直前のあの穏やかで優しい関係のままだったら、確実にそう鼻で笑い飛ばしていられた。
けれどラウル様は今、理由も分からぬままに突然私に冷たくなってしまっている。もしかして、と、その可能性が頭をよぎらなかったわけじゃない。……もしかして、他の女性に心を奪われてしまっているんじゃないかって。
膨れ上がる私の不安に追い打ちをかけるかのように、サリアは言う。
「あの子、ロージエがね、あたしにコソコソと耳打ちしてきたの。あんたのお義姉さまって大したことないわねって。婚約者の心なんかすぐに奪えちゃったわよって。高位貴族の令嬢だからって澄ましかえって上品ぶってるけど、ラウル様はあんな女はお嫌いなのよ。だって言ってくれたもの。君みたいに素直に甘えて頼ってくれる子の方が断然可愛げがあっていいって。私の心はもう君だけのものだよって。……そう言ったの。だからあたし思いっきり怒ってやったわ! くだらない冗談は止めて! って。お義姉さまとラウル様は信頼しあっている素敵な夫婦なのよ。間違ってもラウル様にちょっかい出そうとしないでよ! って」
「…………」
「ね、お義姉さま。あたしはそう信じてたから、きっぱりロージエを怒ったのよ。だけど……、さっきのラウル様の態度、どう見てもおかしいわ。あの目、大切な女性に向ける目じゃないもの。大嫌いな女に向ける目よ。お義姉さまがラウル様に嫌われちゃったのなら、やっぱりロージエが原因なのかもしれないわ。ロージエがお義姉さまのことを、ラウル様に悪く言ってるのかもしれない……。あの二人ね、よく執務室に二人きりで残って残業したりしてるんですって。でも、本当にしてるのはお仕事じゃなくて……、……やだ。ここから先はあたしの口からはとても言えないわ。ロージエったら、本当に下品なんだから……」
恥じらうそぶりを見せるサリア。その一言一言が私の心に鋭く突き刺さる。くだらない。そんなはずがない。そう思う一方で、サリアの言葉を完全には否定できない自分もいた。
『……残念だったな。私はもう騙されない。君の淑女然とした姿にも、その姑息な涙にも。……私は、自分の信じると決めた人を信じるのみだ。信じるに値する人だけをな』
信じると決めた人。
ラウル様の仰るそれが、私以外の誰かを指しているのは間違いない。
サリアは私に容赦なく追い打ちをかける。
「ね、ちゃんと話さなきゃダメよお義姉さま! このままじゃ下級貴族の下品な娘にラウル様を盗られちゃうわよ! あ、あの子男爵家の娘なんだけどね。……ラウル様を問いただして。よその身分の低い令嬢と恋仲になってるのなら許さないわよって。このまま黙ってウジウジ見守ってたら、ラウル様、ロージエと結婚するって言い出すかもよ!? いいの? お義姉さま。またお義父さまを失望させる結果になるかもよ!」
(─────っ!)
「……もういいから。帰ってちょうだい、サリア」
一人になって、冷静に考えたかった。今は心が乱れすぎている。この子の言うことを全て真に受けるわけにはいかない。頭の中で一度状況を整理して、ちゃんと考えなくちゃ……。
けれどサリアは目を丸くすると、さも当然のように言い放った。
「あら、あたし今夜はここに泊めてもらうわよ。もうクタクタだし、今からオールディス侯爵邸に帰ってたんじゃ真夜中になっちゃうわ。……うふふっ。楽しみだなぁ。お義姉さまと一緒に夕食を食べるの、久しぶりよねっ。ラウル様も戻ってこられるといいのだけど」
キャッキャとはしゃぐサリアを見て、絶望するしかなかった。まさか明日の朝までこの子の相手をしなくてはいけないなんて。ラウル様もあんなに不愉快そうにしているっていうのに。どうしよう。
(……もういい。とにかく、この子が帰ってからゆっくり考えよう。ひとまず明日までは我慢するしかないわ……)
早くラウル様にサリアの無作法を謝りたい。私が留守にしていたことも。そして誤解を解かなくては。私が呼び寄せて放置していたわけじゃなくて、サリアが連絡もなく勝手にやって来たこと、今後は絶対にさせないようにすること、それから……、今度こそ、ちゃんと話し合いたい。私たちのこと。ラウル様の態度がこうまで変わってしまった理由を、ちゃんと聞きたい。
その夜はサリアと二人で食事をすることになった。
サリアには、私からもラウル様のお部屋からも一番遠い客間を準備して、そこに泊まらせた。
そしてその夜、ラウル様は帰ってこなかった。
義妹の突拍子もない言葉に、私の口から呆けた声が漏れた。ラウル様が、浮気……?
あまりの馬鹿馬鹿しさに、開いた口が塞がらない。
「……一体何を言い出すの? あなた。今のラウル様の態度が冷たく感じたのは、あなたが……、」
「違うってば! そうじゃないの。あのね、あたしも半信半疑だったから、お義姉さまの心を乱すようなことは安易に言えないと思って黙っていたんだけどね……、ほら、覚えてる? お義姉さまたちの結婚式の少し前に、あたしの友人宅のお茶会に一緒に行ったでしょ? あそこであたしの友人をお義姉さまに何人か紹介したじゃない。その中で、ちょっとオドオドした感じの、暗い子がいたの覚えてる? ……ほら、そばかすがある、赤毛の」
「……。分かるわよ」
サリアの言葉を聞いていた私の脳内に、一人の気弱そうな令嬢の顔が浮かんできた。
『あ、あの……、は、初めまして……。……』
『……初めまして。オールディス侯爵家のティファナですわ。どうぞよろしくね』
挨拶を交わしたけれど、その子は名乗ることさえしなかった。けれどその様子からとても緊張しているのだろうと思い、その無作法を責める気にもならなかったのだけど。
サリアは言葉を続ける。
「ロージエっていう子なんだけどね。あのね、実はあの子、ラウル様と同じところでお仕事してるらしいのよ。王宮の文官として」
「……。……え? あの子が……?」
嘘でしょう? まさか。
なんて言ったらあまりにも失礼だから口には出さなかった。だけど、初対面のあの子の印象からするとあまりにも意外だった。王宮勤めで、しかも文官の仕事をしているなんて、信じられない。
別に若い女性が王宮内で責任ある仕事に全く就いていないわけじゃない。男性の人数とは比べ物にもならないけれど、女性だって能力のある人は何人も働いている。けれど、正直あの子のあの雰囲気が、王宮の文官とはあまりにも程遠い印象だったのだ。
「意外でしょ?」
サリアは私の心を見透かしたようにそう言った。
「……ええ、まぁ」
「あんなに愚鈍で気の弱い子なのにね。意外にも頭はいいのよ。バリバリ働いてるみたい。あたしもお義姉さまに紹介した時点では全然知らなくて。あの子ったら、あの時お義姉さまのそばを離れた後、あたしにこっそり言ってきたのよ。実はね、私あなたのお義姉さまの旦那様と同じ職場で働いてるのよって。ホントにビックリしたわ。……でね、続けてこう言ったの。実は私とラウル様って、愛しあってるのよ、って」
「……。馬鹿馬鹿しい……。くだらないわ。そんなはずないでしょう。その子の妄言よ」
冷静を装ってそう答えつつも、私の心臓は痛いほど大きく脈打っていた。馬鹿馬鹿しい。そう。もしも私とラウル様の仲が結婚直前のあの穏やかで優しい関係のままだったら、確実にそう鼻で笑い飛ばしていられた。
けれどラウル様は今、理由も分からぬままに突然私に冷たくなってしまっている。もしかして、と、その可能性が頭をよぎらなかったわけじゃない。……もしかして、他の女性に心を奪われてしまっているんじゃないかって。
膨れ上がる私の不安に追い打ちをかけるかのように、サリアは言う。
「あの子、ロージエがね、あたしにコソコソと耳打ちしてきたの。あんたのお義姉さまって大したことないわねって。婚約者の心なんかすぐに奪えちゃったわよって。高位貴族の令嬢だからって澄ましかえって上品ぶってるけど、ラウル様はあんな女はお嫌いなのよ。だって言ってくれたもの。君みたいに素直に甘えて頼ってくれる子の方が断然可愛げがあっていいって。私の心はもう君だけのものだよって。……そう言ったの。だからあたし思いっきり怒ってやったわ! くだらない冗談は止めて! って。お義姉さまとラウル様は信頼しあっている素敵な夫婦なのよ。間違ってもラウル様にちょっかい出そうとしないでよ! って」
「…………」
「ね、お義姉さま。あたしはそう信じてたから、きっぱりロージエを怒ったのよ。だけど……、さっきのラウル様の態度、どう見てもおかしいわ。あの目、大切な女性に向ける目じゃないもの。大嫌いな女に向ける目よ。お義姉さまがラウル様に嫌われちゃったのなら、やっぱりロージエが原因なのかもしれないわ。ロージエがお義姉さまのことを、ラウル様に悪く言ってるのかもしれない……。あの二人ね、よく執務室に二人きりで残って残業したりしてるんですって。でも、本当にしてるのはお仕事じゃなくて……、……やだ。ここから先はあたしの口からはとても言えないわ。ロージエったら、本当に下品なんだから……」
恥じらうそぶりを見せるサリア。その一言一言が私の心に鋭く突き刺さる。くだらない。そんなはずがない。そう思う一方で、サリアの言葉を完全には否定できない自分もいた。
『……残念だったな。私はもう騙されない。君の淑女然とした姿にも、その姑息な涙にも。……私は、自分の信じると決めた人を信じるのみだ。信じるに値する人だけをな』
信じると決めた人。
ラウル様の仰るそれが、私以外の誰かを指しているのは間違いない。
サリアは私に容赦なく追い打ちをかける。
「ね、ちゃんと話さなきゃダメよお義姉さま! このままじゃ下級貴族の下品な娘にラウル様を盗られちゃうわよ! あ、あの子男爵家の娘なんだけどね。……ラウル様を問いただして。よその身分の低い令嬢と恋仲になってるのなら許さないわよって。このまま黙ってウジウジ見守ってたら、ラウル様、ロージエと結婚するって言い出すかもよ!? いいの? お義姉さま。またお義父さまを失望させる結果になるかもよ!」
(─────っ!)
「……もういいから。帰ってちょうだい、サリア」
一人になって、冷静に考えたかった。今は心が乱れすぎている。この子の言うことを全て真に受けるわけにはいかない。頭の中で一度状況を整理して、ちゃんと考えなくちゃ……。
けれどサリアは目を丸くすると、さも当然のように言い放った。
「あら、あたし今夜はここに泊めてもらうわよ。もうクタクタだし、今からオールディス侯爵邸に帰ってたんじゃ真夜中になっちゃうわ。……うふふっ。楽しみだなぁ。お義姉さまと一緒に夕食を食べるの、久しぶりよねっ。ラウル様も戻ってこられるといいのだけど」
キャッキャとはしゃぐサリアを見て、絶望するしかなかった。まさか明日の朝までこの子の相手をしなくてはいけないなんて。ラウル様もあんなに不愉快そうにしているっていうのに。どうしよう。
(……もういい。とにかく、この子が帰ってからゆっくり考えよう。ひとまず明日までは我慢するしかないわ……)
早くラウル様にサリアの無作法を謝りたい。私が留守にしていたことも。そして誤解を解かなくては。私が呼び寄せて放置していたわけじゃなくて、サリアが連絡もなく勝手にやって来たこと、今後は絶対にさせないようにすること、それから……、今度こそ、ちゃんと話し合いたい。私たちのこと。ラウル様の態度がこうまで変わってしまった理由を、ちゃんと聞きたい。
その夜はサリアと二人で食事をすることになった。
サリアには、私からもラウル様のお部屋からも一番遠い客間を準備して、そこに泊まらせた。
そしてその夜、ラウル様は帰ってこなかった。
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