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25. 追い詰められる(※sideウェイン)
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「結果はいつ出すつもりだ、ウェインよ。あの娘が嫁いできてから、どれだけの時間が経ったと思っているのだ」
「は、はい……。……申し訳ありません、父上」
国王である父の私室に呼び出され、青筋を立てて俺を睨みつける父を前に、俺は項垂れた。
さすがにもうまずい。分かっているのだ、俺だって。だけどどうにもならない。状況は悪くなる一方だ。
ステイシーの帰国を祝うパーティーの席がよほど楽しかったのか、あれ以来イルゼは、またパーティーを開きたい、私の主催でパーティーを開くわ、などと言い張り、俺と大喧嘩になる毎日だ。
『馬鹿かお前は!!いい加減にしろ!!一体何を祝うパーティーを開く気だ!誰がお前の主催するパーティーなんかに来ると思う?!俺たちが今社交界でどんな目で見られているのか分かっていないのか!!』
『はぁぁ?!何よそれ!!どんな目で見られてるって、私は王太子妃なのよ?!変な目で見てくるヤツが悪いのよ!そんなヤツがいたら、不敬罪で投獄すればいいんだわ!どうせそういう連中は私に嫉妬してるだけなんだから。そんなことより私の気持ちを大事にしてよね!』
『……っ!!お、お前……っ!勉強はどうなってるんだ!王妃教育は?!調子に乗るのも大概にしろ!!お前が勉強を放棄し続ければ、もう俺たちに居場所はなくなるんだぞ!この王宮から、二人して追い出されるぞ!!』
俺がどんなに口酸っぱく説教しても、イルゼは今や鼻で笑うだけだった。
『ふん、何よそれ。そんなわけないでしょう。私たちは王族なのよ?!勉強サボったぐらいで追い出されるはずがないわ』
『お前が人前に出られるようなマナーさえ身についていないせいで、公務もまともに行うことができないんだ!父上も母上もご立腹だ……。このままでは、本当に見捨てられる……!やれ!!今すぐ!!』
『きゃぁっ!!痛い……っ!は、離してよ!離して!!』
『うるさい!!講義室に籠もって出てくるな!!』
『離して!!……離しなさいよ!!』
『俺を支える王太子妃となるために、時間を惜しんで励むと言っていただろうが!!』
『そんなこともう忘れたわ!!』
あんなに愛に満ちた結婚生活を夢見ていたのに、今の俺たちは醜い喧嘩を繰り返すばかりの、ただの不仲な夫婦だった。最近では互いに憎しみを隠しきれずに人前でも怒りをぶつけてしまうため、使用人たちにもますます呆れられている。皆がそれを隠そうともしない目で、俺たちを見る。
このままではまずい。本当に父上から見放されてしまう……!
「申し訳ないでは済まされないぞ、ウェイン。お前たち夫婦には外交をさせられないどころか、今や国中の笑いものだ。あれだけ言ったはずだ。下位貴族の娘に王太子妃など務まらんと。ブリューワー公爵令嬢でさえ、並々ならぬ苦労を重ねてああまでなったのだと。それを……何なんだあれは。お前の選んだ娘は」
「ち……、父上……」
「王族としての仕事を一切放棄し、何も学ばず浪費を続けるばかりの人間を置いておくわけにはいかない。……夫婦でこの王宮から去れ、ウェインよ。お前に王位は継がせられぬ」
「っ!!おっ!お待ちください父上!!大丈夫です!!俺に……、わ、私にはちゃんと考えがございます!もうしばらく……、あと少しだけ、どうか時間を下さい父上!!」
「無駄な言い逃れはよせ、愚息よ」
「いえ!いえ!!本当です!!どうか父上……!!数日、……あ、あと数日だけお待ちを……っ!!」
完全に俺を捨てると決めた父は、俺の言葉などまるで相手にしていないようだった。失望と軽蔑を隠そうともせずに俺を見据えていた。
父の前を辞して、俺は急いで準備をした。もうイルゼは駄目だ。
……彼女に……助けを求めるしかない……!!
「目立たぬ馬車を用意しろ!すぐに出かける」
侍従に命じ、俺は最後の望みをかけて王宮を後にした。
「は、はい……。……申し訳ありません、父上」
国王である父の私室に呼び出され、青筋を立てて俺を睨みつける父を前に、俺は項垂れた。
さすがにもうまずい。分かっているのだ、俺だって。だけどどうにもならない。状況は悪くなる一方だ。
ステイシーの帰国を祝うパーティーの席がよほど楽しかったのか、あれ以来イルゼは、またパーティーを開きたい、私の主催でパーティーを開くわ、などと言い張り、俺と大喧嘩になる毎日だ。
『馬鹿かお前は!!いい加減にしろ!!一体何を祝うパーティーを開く気だ!誰がお前の主催するパーティーなんかに来ると思う?!俺たちが今社交界でどんな目で見られているのか分かっていないのか!!』
『はぁぁ?!何よそれ!!どんな目で見られてるって、私は王太子妃なのよ?!変な目で見てくるヤツが悪いのよ!そんなヤツがいたら、不敬罪で投獄すればいいんだわ!どうせそういう連中は私に嫉妬してるだけなんだから。そんなことより私の気持ちを大事にしてよね!』
『……っ!!お、お前……っ!勉強はどうなってるんだ!王妃教育は?!調子に乗るのも大概にしろ!!お前が勉強を放棄し続ければ、もう俺たちに居場所はなくなるんだぞ!この王宮から、二人して追い出されるぞ!!』
俺がどんなに口酸っぱく説教しても、イルゼは今や鼻で笑うだけだった。
『ふん、何よそれ。そんなわけないでしょう。私たちは王族なのよ?!勉強サボったぐらいで追い出されるはずがないわ』
『お前が人前に出られるようなマナーさえ身についていないせいで、公務もまともに行うことができないんだ!父上も母上もご立腹だ……。このままでは、本当に見捨てられる……!やれ!!今すぐ!!』
『きゃぁっ!!痛い……っ!は、離してよ!離して!!』
『うるさい!!講義室に籠もって出てくるな!!』
『離して!!……離しなさいよ!!』
『俺を支える王太子妃となるために、時間を惜しんで励むと言っていただろうが!!』
『そんなこともう忘れたわ!!』
あんなに愛に満ちた結婚生活を夢見ていたのに、今の俺たちは醜い喧嘩を繰り返すばかりの、ただの不仲な夫婦だった。最近では互いに憎しみを隠しきれずに人前でも怒りをぶつけてしまうため、使用人たちにもますます呆れられている。皆がそれを隠そうともしない目で、俺たちを見る。
このままではまずい。本当に父上から見放されてしまう……!
「申し訳ないでは済まされないぞ、ウェイン。お前たち夫婦には外交をさせられないどころか、今や国中の笑いものだ。あれだけ言ったはずだ。下位貴族の娘に王太子妃など務まらんと。ブリューワー公爵令嬢でさえ、並々ならぬ苦労を重ねてああまでなったのだと。それを……何なんだあれは。お前の選んだ娘は」
「ち……、父上……」
「王族としての仕事を一切放棄し、何も学ばず浪費を続けるばかりの人間を置いておくわけにはいかない。……夫婦でこの王宮から去れ、ウェインよ。お前に王位は継がせられぬ」
「っ!!おっ!お待ちください父上!!大丈夫です!!俺に……、わ、私にはちゃんと考えがございます!もうしばらく……、あと少しだけ、どうか時間を下さい父上!!」
「無駄な言い逃れはよせ、愚息よ」
「いえ!いえ!!本当です!!どうか父上……!!数日、……あ、あと数日だけお待ちを……っ!!」
完全に俺を捨てると決めた父は、俺の言葉などまるで相手にしていないようだった。失望と軽蔑を隠そうともせずに俺を見据えていた。
父の前を辞して、俺は急いで準備をした。もうイルゼは駄目だ。
……彼女に……助けを求めるしかない……!!
「目立たぬ馬車を用意しろ!すぐに出かける」
侍従に命じ、俺は最後の望みをかけて王宮を後にした。
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