25 / 35
25. 追い詰められる(※sideウェイン)
しおりを挟む
「結果はいつ出すつもりだ、ウェインよ。あの娘が嫁いできてから、どれだけの時間が経ったと思っているのだ」
「は、はい……。……申し訳ありません、父上」
国王である父の私室に呼び出され、青筋を立てて俺を睨みつける父を前に、俺は項垂れた。
さすがにもうまずい。分かっているのだ、俺だって。だけどどうにもならない。状況は悪くなる一方だ。
ステイシーの帰国を祝うパーティーの席がよほど楽しかったのか、あれ以来イルゼは、またパーティーを開きたい、私の主催でパーティーを開くわ、などと言い張り、俺と大喧嘩になる毎日だ。
『馬鹿かお前は!!いい加減にしろ!!一体何を祝うパーティーを開く気だ!誰がお前の主催するパーティーなんかに来ると思う?!俺たちが今社交界でどんな目で見られているのか分かっていないのか!!』
『はぁぁ?!何よそれ!!どんな目で見られてるって、私は王太子妃なのよ?!変な目で見てくるヤツが悪いのよ!そんなヤツがいたら、不敬罪で投獄すればいいんだわ!どうせそういう連中は私に嫉妬してるだけなんだから。そんなことより私の気持ちを大事にしてよね!』
『……っ!!お、お前……っ!勉強はどうなってるんだ!王妃教育は?!調子に乗るのも大概にしろ!!お前が勉強を放棄し続ければ、もう俺たちに居場所はなくなるんだぞ!この王宮から、二人して追い出されるぞ!!』
俺がどんなに口酸っぱく説教しても、イルゼは今や鼻で笑うだけだった。
『ふん、何よそれ。そんなわけないでしょう。私たちは王族なのよ?!勉強サボったぐらいで追い出されるはずがないわ』
『お前が人前に出られるようなマナーさえ身についていないせいで、公務もまともに行うことができないんだ!父上も母上もご立腹だ……。このままでは、本当に見捨てられる……!やれ!!今すぐ!!』
『きゃぁっ!!痛い……っ!は、離してよ!離して!!』
『うるさい!!講義室に籠もって出てくるな!!』
『離して!!……離しなさいよ!!』
『俺を支える王太子妃となるために、時間を惜しんで励むと言っていただろうが!!』
『そんなこともう忘れたわ!!』
あんなに愛に満ちた結婚生活を夢見ていたのに、今の俺たちは醜い喧嘩を繰り返すばかりの、ただの不仲な夫婦だった。最近では互いに憎しみを隠しきれずに人前でも怒りをぶつけてしまうため、使用人たちにもますます呆れられている。皆がそれを隠そうともしない目で、俺たちを見る。
このままではまずい。本当に父上から見放されてしまう……!
「申し訳ないでは済まされないぞ、ウェイン。お前たち夫婦には外交をさせられないどころか、今や国中の笑いものだ。あれだけ言ったはずだ。下位貴族の娘に王太子妃など務まらんと。ブリューワー公爵令嬢でさえ、並々ならぬ苦労を重ねてああまでなったのだと。それを……何なんだあれは。お前の選んだ娘は」
「ち……、父上……」
「王族としての仕事を一切放棄し、何も学ばず浪費を続けるばかりの人間を置いておくわけにはいかない。……夫婦でこの王宮から去れ、ウェインよ。お前に王位は継がせられぬ」
「っ!!おっ!お待ちください父上!!大丈夫です!!俺に……、わ、私にはちゃんと考えがございます!もうしばらく……、あと少しだけ、どうか時間を下さい父上!!」
「無駄な言い逃れはよせ、愚息よ」
「いえ!いえ!!本当です!!どうか父上……!!数日、……あ、あと数日だけお待ちを……っ!!」
完全に俺を捨てると決めた父は、俺の言葉などまるで相手にしていないようだった。失望と軽蔑を隠そうともせずに俺を見据えていた。
父の前を辞して、俺は急いで準備をした。もうイルゼは駄目だ。
……彼女に……助けを求めるしかない……!!
「目立たぬ馬車を用意しろ!すぐに出かける」
侍従に命じ、俺は最後の望みをかけて王宮を後にした。
「は、はい……。……申し訳ありません、父上」
国王である父の私室に呼び出され、青筋を立てて俺を睨みつける父を前に、俺は項垂れた。
さすがにもうまずい。分かっているのだ、俺だって。だけどどうにもならない。状況は悪くなる一方だ。
ステイシーの帰国を祝うパーティーの席がよほど楽しかったのか、あれ以来イルゼは、またパーティーを開きたい、私の主催でパーティーを開くわ、などと言い張り、俺と大喧嘩になる毎日だ。
『馬鹿かお前は!!いい加減にしろ!!一体何を祝うパーティーを開く気だ!誰がお前の主催するパーティーなんかに来ると思う?!俺たちが今社交界でどんな目で見られているのか分かっていないのか!!』
『はぁぁ?!何よそれ!!どんな目で見られてるって、私は王太子妃なのよ?!変な目で見てくるヤツが悪いのよ!そんなヤツがいたら、不敬罪で投獄すればいいんだわ!どうせそういう連中は私に嫉妬してるだけなんだから。そんなことより私の気持ちを大事にしてよね!』
『……っ!!お、お前……っ!勉強はどうなってるんだ!王妃教育は?!調子に乗るのも大概にしろ!!お前が勉強を放棄し続ければ、もう俺たちに居場所はなくなるんだぞ!この王宮から、二人して追い出されるぞ!!』
俺がどんなに口酸っぱく説教しても、イルゼは今や鼻で笑うだけだった。
『ふん、何よそれ。そんなわけないでしょう。私たちは王族なのよ?!勉強サボったぐらいで追い出されるはずがないわ』
『お前が人前に出られるようなマナーさえ身についていないせいで、公務もまともに行うことができないんだ!父上も母上もご立腹だ……。このままでは、本当に見捨てられる……!やれ!!今すぐ!!』
『きゃぁっ!!痛い……っ!は、離してよ!離して!!』
『うるさい!!講義室に籠もって出てくるな!!』
『離して!!……離しなさいよ!!』
『俺を支える王太子妃となるために、時間を惜しんで励むと言っていただろうが!!』
『そんなこともう忘れたわ!!』
あんなに愛に満ちた結婚生活を夢見ていたのに、今の俺たちは醜い喧嘩を繰り返すばかりの、ただの不仲な夫婦だった。最近では互いに憎しみを隠しきれずに人前でも怒りをぶつけてしまうため、使用人たちにもますます呆れられている。皆がそれを隠そうともしない目で、俺たちを見る。
このままではまずい。本当に父上から見放されてしまう……!
「申し訳ないでは済まされないぞ、ウェイン。お前たち夫婦には外交をさせられないどころか、今や国中の笑いものだ。あれだけ言ったはずだ。下位貴族の娘に王太子妃など務まらんと。ブリューワー公爵令嬢でさえ、並々ならぬ苦労を重ねてああまでなったのだと。それを……何なんだあれは。お前の選んだ娘は」
「ち……、父上……」
「王族としての仕事を一切放棄し、何も学ばず浪費を続けるばかりの人間を置いておくわけにはいかない。……夫婦でこの王宮から去れ、ウェインよ。お前に王位は継がせられぬ」
「っ!!おっ!お待ちください父上!!大丈夫です!!俺に……、わ、私にはちゃんと考えがございます!もうしばらく……、あと少しだけ、どうか時間を下さい父上!!」
「無駄な言い逃れはよせ、愚息よ」
「いえ!いえ!!本当です!!どうか父上……!!数日、……あ、あと数日だけお待ちを……っ!!」
完全に俺を捨てると決めた父は、俺の言葉などまるで相手にしていないようだった。失望と軽蔑を隠そうともせずに俺を見据えていた。
父の前を辞して、俺は急いで準備をした。もうイルゼは駄目だ。
……彼女に……助けを求めるしかない……!!
「目立たぬ馬車を用意しろ!すぐに出かける」
侍従に命じ、俺は最後の望みをかけて王宮を後にした。
155
お気に入りに追加
4,042
あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。


【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします!
ユウ
恋愛
侯爵令嬢のアリスティアは婚約者に真実の愛を見つけたと告白され婚約を解消を求められる。
恋する相手は平民であり、正反対の可憐な美少女だった。
アリスティアには拒否権など無く、了承するのだが。
側近を婚約者に命じ、あげくの果てにはその少女を侯爵家の養女にするとまで言われてしまい、大切な家族まで侮辱され耐え切れずに修道院に入る事を決意したのだが…。
「ならば俺と永遠の愛を誓ってくれ」
意外な人物に結婚を申し込まれてしまう。
一方真実の愛を見つけた婚約者のティエゴだったが、思い込みの激しさからとんでもない誤解をしてしまうのだった。

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。
けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。
悪夢はそれで終わらなかった。
ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。
嵌められてしまった。
その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。
裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。
※他サイト様でも公開中です。
2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。
本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m

元平民の義妹は私の婚約者を狙っている
カレイ
恋愛
伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。
最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。
「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。
そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。
そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる