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18. 招待状
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王妃陛下から、パーティーの招待状が届いた。
ステイシー王女が約半年間の留学から戻ってこられたようだ。ささやかながらその帰国祝いを行うので、ぜひ集まって欲しいという内容だった。
(ささやかといっても、本当に“ささやか”ではないだろうし、こちらもそれなりの恰好で行かなくてはね。……それに……)
あの日以来、おそらく久しぶりに再会することになるのだろう。ウェイン王太子殿下と。
ウェイン殿下には、弟君と妹君がおられる。ステイシー王女は、三人兄妹の一番下の妹君だ。見聞を広めるためという理由で、隣国へおよそ半年間留学なさっていた。無事の帰国を祝うパーティーとして私にも招待状が届いたということは、他の高位貴族たちも軒並み呼ばれているのだろう。
(私はあなた様のご子息から婚約破棄された立場なのですけどね……)
できることなら、行きたくない。まあでも王妃陛下から招かれたのであれば、よほどの事情でもない限りお断りするというのは有り得ない。腹をくくって、ここは行くしかないのだろう。
……あの日以来、初めてウェイン殿下のお顔を見ることになるのだ。
「……はぁ……」
ウェイン殿下。
もう私にはジェレミー様がいる。あの方を愛しているし、あの方のおそばで生きていくのだと心を決めたから、それが揺らぐことは決してないけれど。
(やっぱり、ウェイン殿下のお顔を見るのは辛い……)
結婚して王太子妃となられたイルゼ・バトリー子爵令嬢と、きっと睦まじく日々を過ごしておられるのだろう。両陛下やその他の周囲の人々、皆が認め見守ってくれていた私との婚約を白紙に戻してまで、結婚なさった相手だ。さぞ深く愛しあっておられるのだろう。貴族学園にいた頃、あの人、イルゼ嬢に出会ってから、殿下はずっと夢中だったようだから。
(幸せなんだろうな。きっと、私のことなど完全に忘れて、そばにいる可愛い人を大切にされていることでしょうね)
お二人のそのお姿を、間近で見ることになるのだ。それに、パーティー会場に集まった皆が、私に興味津々のはずだ。どんな顔をしてこの場に参加しているのか。ウェイン殿下と王太子妃の二人を見て、どれほど辛い思いをしているだろうか、と。心配してくれるにしても、ただの好奇心であるにしても、そんな場で注目を浴びるのは辛い。
「はは。そんなこと、気にすることないよフィオレンサ。大丈夫、私と一緒に行こう。片時も君のそばを離れないから、心配しないで」
「ジェレミー様……」
後日会った時に、自分も招待されていると言ったジェレミー様は、私を迎えに来て会場である王宮の広間までエスコートしてくれると言う。
「よろしいのですか?私はとても、ありがたいけれど……」
「当たり前だろう。まだ正式に婚約しているわけではないけれど、もう私たちは恋人同士だよ。結婚前提のね。こっちだって仲の良さをたっぷりと見せつけて、ウェイン殿下を牽制したいよ。フィオレンサはもう私のものなのだから、今さら取り戻せないぞとね」
「まぁ、ふふ。ジェレミー様ったら……」
そんなことしなくても、あちらはもう私には全く興味がないのに。
「……。」
『騙されるものか、悪女め。か弱いふりをして、最後までよく足掻いたものだ。もういい。諦めて俺の決断を受け入れろ。お前が王妃になれる日など永久にやって来ない。用件は以上だ。去れ』
ふいにまた、あの日の殿下の冷たい言葉と刺すような視線が頭をよぎった。胸がギュッと締めつけられるような痛みを覚える。最後の会話は私の中で深い心の傷となって残り、いまだに克服できず私を苦しめ続けている。
「当日は準備をして屋敷で待っていておくれ。君は何も心配しなくていいんだからね。分かった?」
「……ええ、ジェレミー様。ありがとう」
目の前の愛に満ちた温かい瞳を見つめ返すと、気持ちが楽になる。私はどれほどこの方に救われていることだろう。
大切にしなくては。
ステイシー王女が約半年間の留学から戻ってこられたようだ。ささやかながらその帰国祝いを行うので、ぜひ集まって欲しいという内容だった。
(ささやかといっても、本当に“ささやか”ではないだろうし、こちらもそれなりの恰好で行かなくてはね。……それに……)
あの日以来、おそらく久しぶりに再会することになるのだろう。ウェイン王太子殿下と。
ウェイン殿下には、弟君と妹君がおられる。ステイシー王女は、三人兄妹の一番下の妹君だ。見聞を広めるためという理由で、隣国へおよそ半年間留学なさっていた。無事の帰国を祝うパーティーとして私にも招待状が届いたということは、他の高位貴族たちも軒並み呼ばれているのだろう。
(私はあなた様のご子息から婚約破棄された立場なのですけどね……)
できることなら、行きたくない。まあでも王妃陛下から招かれたのであれば、よほどの事情でもない限りお断りするというのは有り得ない。腹をくくって、ここは行くしかないのだろう。
……あの日以来、初めてウェイン殿下のお顔を見ることになるのだ。
「……はぁ……」
ウェイン殿下。
もう私にはジェレミー様がいる。あの方を愛しているし、あの方のおそばで生きていくのだと心を決めたから、それが揺らぐことは決してないけれど。
(やっぱり、ウェイン殿下のお顔を見るのは辛い……)
結婚して王太子妃となられたイルゼ・バトリー子爵令嬢と、きっと睦まじく日々を過ごしておられるのだろう。両陛下やその他の周囲の人々、皆が認め見守ってくれていた私との婚約を白紙に戻してまで、結婚なさった相手だ。さぞ深く愛しあっておられるのだろう。貴族学園にいた頃、あの人、イルゼ嬢に出会ってから、殿下はずっと夢中だったようだから。
(幸せなんだろうな。きっと、私のことなど完全に忘れて、そばにいる可愛い人を大切にされていることでしょうね)
お二人のそのお姿を、間近で見ることになるのだ。それに、パーティー会場に集まった皆が、私に興味津々のはずだ。どんな顔をしてこの場に参加しているのか。ウェイン殿下と王太子妃の二人を見て、どれほど辛い思いをしているだろうか、と。心配してくれるにしても、ただの好奇心であるにしても、そんな場で注目を浴びるのは辛い。
「はは。そんなこと、気にすることないよフィオレンサ。大丈夫、私と一緒に行こう。片時も君のそばを離れないから、心配しないで」
「ジェレミー様……」
後日会った時に、自分も招待されていると言ったジェレミー様は、私を迎えに来て会場である王宮の広間までエスコートしてくれると言う。
「よろしいのですか?私はとても、ありがたいけれど……」
「当たり前だろう。まだ正式に婚約しているわけではないけれど、もう私たちは恋人同士だよ。結婚前提のね。こっちだって仲の良さをたっぷりと見せつけて、ウェイン殿下を牽制したいよ。フィオレンサはもう私のものなのだから、今さら取り戻せないぞとね」
「まぁ、ふふ。ジェレミー様ったら……」
そんなことしなくても、あちらはもう私には全く興味がないのに。
「……。」
『騙されるものか、悪女め。か弱いふりをして、最後までよく足掻いたものだ。もういい。諦めて俺の決断を受け入れろ。お前が王妃になれる日など永久にやって来ない。用件は以上だ。去れ』
ふいにまた、あの日の殿下の冷たい言葉と刺すような視線が頭をよぎった。胸がギュッと締めつけられるような痛みを覚える。最後の会話は私の中で深い心の傷となって残り、いまだに克服できず私を苦しめ続けている。
「当日は準備をして屋敷で待っていておくれ。君は何も心配しなくていいんだからね。分かった?」
「……ええ、ジェレミー様。ありがとう」
目の前の愛に満ちた温かい瞳を見つめ返すと、気持ちが楽になる。私はどれほどこの方に救われていることだろう。
大切にしなくては。
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