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プロローグ

03 悪役令嬢を演じてみます

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「お呼びでしょうか、ロゼお嬢様」

「ええ、ちょっと話があるの」

 悪役令嬢として生きていく覚悟が決めたので、さっそく問題のシャルロットを呼び出した。

「何なりとお申し付けください」

「そうね。はっきりと答えて欲しいのだけど、使用人の中でわたしの評判ってどんな感じ?」

 とにかく、身内からの評判は絶対に落とさなければならない。

 人の口に戸は立てられない。

 こういう所から巡り巡って噂話は外へと流れていくのだから。

「そんな、私ごときがお嬢様の事を語るだなんて……」

 口ごもるシャルロット。

 まあ、わたしが前世の記憶を取り戻したのはつい先日。

 それまでは以前のロゼだったのだから評判は良くはないだろう。

 シャルロットも怯えていたのだし、そこは間違いないはずだ。

「遠慮はいらないわ、今は真実が必要なの。それを貴女に求めている意味、分かるわね?」

 なんかそれっぽい信用の言葉も含めてみる。

 シャルロットは目を大きく見開き、何か受け取っている。

「はい、分かりました。正直に申し上げます。お嬢様は“天の使い”と思われておいでです」

「……ん?」

 天の使い?

 天使ってこと?

 は?

「シャルロット、わたしは正直に答えてと言ったのよ」

 まさかこんな純度100パーセントの嘘をついてくるとは思わなかった。

 どうしたシャルロット。

「はい、僭越ながら正直に申し上げました。嘘偽りはありません」

 シャルロットは恐ろしいくらい澄んだ瞳をしている。

 え、嘘じゃないの……?

 いや、でもそんなはずは……。

「使用人がわたしを天使だって……?」

「はい、素直に打ち明けるのが気恥ずかしくて躊躇ってしまいましたが、それが私の真実です」

「うん……?」

 なんか、返事が微妙にズレているように聞こえるのは気のせいか?

「それ、あなた個人の話?」

「はい、使用人の評判ですよね?」

 ……いや、シャルロットも使用人だけどさ。

 なんであんた個人の話なのさ。

 口ごもってたのも“天の使いだと思ってる事を打ち明けるのが恥ずかしい”の方だったのか。

 まぎらわしい反応をする子だ。

「いえ、今はあなた個人の話じゃなくて。もっと全体的な、他の使用人達の話よ」

「そ、そうでしたか……し、失礼しましたっ」

 顔を赤らめて恥ずかしそうにするシャルロット。

 まあ、そうだよね。

 “主人を天使だと思ってます”ってカミングアウト、普通じゃないもんね。

 わたしもどう受け取っていいか分からなくて反応に困ってるもん。

 とりあえず処理できないから、シャルロットの件は一旦放置しておく。

「それで、他の人たちはどうなのかしら?」

「そ、それがですね……」

 表情を曇らせるシャルロット。

「大変申し上げにくいのですが、あまり好意的な意見は多くはないかと……」

「そう、やっぱりね」

 うん、やはり使用人の間での評判は悪そうだ。

 ロゼ本人であるわたしにとっては悲しいことだが、一安心でもある。

 現段階でわたしはちゃんと悪役令嬢しているわけだ。

「ですが、ご安心下さい! 私がそんな評判を必ず変えてみせます! 今からでもお嬢様の神話を広めに……!」

 なんか後半、意味不明なことを言い出して回れ右をするシャルロット。

 待て待て待て、どこで何する気だ。

「ちょ、ちょっと待ちなさいシャルロット!」

「いえ、常々思っていたのです。お嬢様は誤解されています。こんなに聡明で神聖な御方が快く思われていないだなんて……見過ごすわけには参りません!」

 見過ごせ、見過ごせ。

 なんだ、この子ほんとにどうしちゃったんだ?

 わたし何かしたか?

 ちょっと髪のケアについて話しただけだよね?

 かなり薄い女子トークしかしてないぞ。

 なにが彼女をこうさせたんだ?

「いいの、シャルロット。わたしはそれでいいのっ」

「……ど、どういうことですか?」

 信じられないと言わんばかりに目を見開くシャルロット。

 もういいや、シャルロットに嫌われるのは諦めよう。

 幸いにして、彼女は原作において主要人物ではない。

 この際、一緒に悪評を広めるよう協力してもらって、本編が開始すれば原作通りにわたしのことを嫌っている演技をしてもらえば済む話。

 全く問題ないレベルの誤差のはずだ。

「わたしはこのまま悪評を積み重ねていくつもりってこと」

「ど、どうしてそんなことを……?」

 うーん。

 ここが乙女ゲームの世界だからよ、なんて言えないしなぁ。

 まあ、でも要約して説明するなら。

「人類存続のために必要なことなのよ」

 あれ、端折りすぎてなんか壮大な目的になってしまった。

 間違ってる部分は何一つないんだけど。

「やはりお嬢様は天の使い……いえ、女神の化身だったのですね……」

 あ、やべぇ。

 なんか、シャルロットの目がイッてしまった。


        ◇◇◇


「――というわけで、基本的にわたしは人前では横柄な態度をとるから。シャルロットは嫌々それに付き従うように演技なさい」

 これがヴァンリエッタ家の屋敷内での基本方針である。

「具体的にどうされるのですか?」

「そうねぇ……」

 とりあえず今まで積み重ねてきたロゼの悪癖に合わせるのがいいだろう。

「出された料理に文句でも言おうかしら」

 なんでもロゼは偏食家で美食家でこだわりが強いという、大曲者らしい。

 出された料理に文句をつけない事はほとんどないのだとか。

 口をつけないこともあるらしく、それに倣ってわたしも料理を下げてもらおう。

 食べ物を粗末にするのはもったいないので、後でシャルロットに持ってきてもらってちゃんと食べるけども。

「……それで良いのでしょうか?」

 しかし、今度はシャルロットが疑問を呈した。

「どういうこと?」

「お嬢様が御食事の際に苦言を呈されるのは使用人達の間では共通認識になっています。高貴な方には時折聞かれるお話でもありますので、お嬢様が望む“国内に響き渡るような悪行”とは言い難いような……」

 なるほど。

 ちょっと押しが弱いということか。

 でも、じゃあどうしたらいいのだろうか。

「そこで私から提案があります」

 シャルロットは人差し指を立てて、名案だと言わんばかりに瞳を輝かせる。

 おお、さっそくアイディアを提供してくれるなんて。

 案外、シャルロットを味方につけたのはファインプレイだったのじゃなかろうか?

「え、ほんと? どんなの?」

「はい、それでは――」






 夕食の時間。

 家族は不在。

 わたしオリジナル悪行お披露目としては、そちらの方が都合が良かった。

 食堂は縦の奥行が長く、ようやく席に着くと、執事や侍女、料理人などの使用人が端に並んでこちらの様子を無言で伺っている。

 子供一人の食事にどうして複数の大人が見守っているのか。

 非常に疑問だが、今はそれどころではない。

「ロゼお嬢様、夕食をお持ちしました」

 そこにシャルロットが料理を配膳しに来てくれる。

 手際のよい手つきで、お皿をわたしの前に置く。

「野菜のスープでございます」

 ああ……ほんとはやりたくないし、気が重いんだけど。

 やらなきゃなぁ……。

(お嬢様、もっと不愉快そうに顔を歪めてください)

 なんかシャルロットが小声で演技指導までしてくれる。

 なんで彼女の方がノリノリなんだろう。

 しかし、ここまで来たらやるしかないので、わたしは眉をひそめた。

「シャルロット、これは何かしら?」

 わたしの一言で食堂に緊張感が走る。

 大人たちがこれはまずいと息を飲んでいるのが、こちらからも感じ取れた。

「え……ですから、野菜のスープで……」

「わたしはお肉が入ったものが食べたいのだけれど」

「で、ですが……昨日はこちらを召し上がりたいと仰って……」

「シャルロット、今あなた……口答えしたの?」

 その一言で、この空間は完全に凍り付いた。

 わたしは立ち上がり、シャルロットを睨む。

「も、申し訳ありませんっ! そ、そんなつもりでは……」

ひざまずきなさい」

「え?」

「いいから跪きなさい」

「は……はい……」

 青ざめたシャルロットが、冷たく硬い床に跪く。

 改めて言うが、脚本はシャルロットである。

 わたしは全く口出しをしていない。

「主人に口答えする従者がどこにいるのかしらっ!!」

「きゃあっ」

 わたしはシャルロットを踏みつける。

 勢いよく足を振り下ろしたが、実際にはかなりのソフトタッチだ。

 しかし、そこをシャルロットの迫真の演技がカバーする。

 まるで本当に強く踏みつけたかのように体を捩じらせていた。

 なんでそういうの上手いんだよ。

「わたしは今を生きているの! 過去の話をして何の意味があるのかしらっ!」

「お、お許しくださいっ。どうかご慈悲を……」

「主人の料理すらまともに用意できないくせに、何を偉そうなことを言っているの!」

「い、いやぁああっ」

 追い打ちで何度か踏みつける。

 もちろん、超優しく。

 だがシャルロットの体は異様に跳ねる。

 ……大丈夫だよね? 本当に痛くないよね?

 こっちが心配になるくらいの反応だった。

「お、おい……アレまずくないか……?」

「ええ……さすがに今回ばかりはお嬢様のワガママが過ぎるわ……」

 使用人たちは動揺し、ロゼの悪行に顔を引き攣らせていた。

「あなた達も何を呆然としているの? 早く次の料理を用意なさい!」

『は、はい!』

 次の餌食にはなりたくないだろう、使用人たちは慌てて食堂を後にした。

 シャルロット脚本の寸劇は、効果抜群だった。

「ありがとうシャルロット、助かったわ」

 わたしはすぐに足をどける。

 最初はどうなることかと思ったけど、彼女のおかげで無事に悪役令嬢を遂行することが出来た。

「……シャルロット?」

 しかし、シャルロットは体を抱いたまま起き上がろうとしなかった。

「もしかして本当に痛かった!?」

 嘘……、かなり手加減してたつもりだったんだけど。

 てっきりシャルロットが合わせてくれていたとばかり……。

「お、お嬢様の足が……私の体に……」

「ん……?」

 なんかシャルロットがぶつぶつ呟いている。

「ふ、踏まれるのって……こんな感じなんですね……」

「……」

 なにこの人。

 なんか踏まれてたのに、恍惚とした表情を浮かべてるように見えるのは気のせいだろうか。

「ねえ、起きて欲しいんだけど」

「お待ちください、今この感触を忘れない内に……」

 え、ほんとなにしてんの?

「右足の方が踏み込みがお強いのですね、お嬢様……」

「……」

 そこからシャルロットが起き上がるまで、なぜか数分を要した。

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