学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

文字の大きさ
上 下
20 / 80
第4章 千夜

20 思いと行動は一致する

しおりを挟む

「それで、ほんっとうに千夜姉ちやねえとは何もなかったのね?」

 ぐいっと顔を近づけて迫力満点にわたしに圧をかけてくるのは華凛かりんさんです。

 誤解を解こうと追いかけて、事細かに事情を説明して今に至ります。

「本当です、信じて下さい。そもそもわたしが力づくで千夜さんをどうこう出来るわけないじゃないですか」

 それは肉体的にも精神的にも、どちらの意味を含めても。

「そっ、そっか……うん、そうだよね。なんだ、早とちりしちゃったじゃん……」

「本当に申し訳ありません」

 ですが、これで誤解が解けて一安心です。

「ん~……仮にエッチな事があったとしても『ありました』なんて普通は言いませんけどねぇ?」

 なのに、日和ひよりさんが簡単に許してくれません!

「やっぱりそうだよねっ!?」

 そして感化される華凛さん!

 せっかくまとまりそうだったのに!

「日和さんも実際に見たから分かってるじゃないですかっ!何もなかったですよね!?」

「ええ、ですからわたしがお邪魔してしまったから、お止めになったのかもしれませんよね?」

明莉あかりいぃぃぃぃっ!!」

 嗚呼っ、華凛さんが憤怒の表情にっ。

 なんで日和さんは涼しい顔で焚きつけて来るんでしょうかっ。

「大事なのはあかちゃんが何をしようとしたか、です。その心が千夜ちゃんを求めていたのでしたら、それはエッチな行為になるんですよ?」

「実際にしていなくてもですか!?」

「はい、思うことが罪です」

 ギルティ!

 重たすぎるっ!

 日和さん、優しい顔をしているのに言っていることが怖いです。
 
 ……も、もしかして怒ってます?

 いやいや、日和さんに限ってさすがにそれはないですよね……。

「でも思ってることなんて証明できないじゃないですか」

「出来ませんね」

「じゃあわたしの身の潔白はどう証明したら……」

「罪を全て証明できるのなら、冤罪なんてこの世の中からとっくに消えていると思いませんか?」

 やっぱり怖いよぉ!

 千夜さんも怖いですけど、千夜さんはもっとストレートに言ってくれます。

 ですが日和さんは優しい雰囲気で、すごい角度から迫ってくるので恐ろしいですっ。

「そうよ!そもそも一日で二回も千夜ねえと一緒なのがおかしいのよ!有罪よっ!」

 華凛さんは完全に日和さん側に……。

 結局、わたしの話は全く聞き入れられてもらえません。

「まあまあ……二人とも冷静になってくださいよ。そもそもわたしを相手に千夜さんが応じるわけないじゃないですか」

「なんでそう言い切れるのよ」

 むしろ、なんでそこに引っかかるんですかねぇ……。

「だって、わたしですよ?わたし相手にそんな気持ちなりますか?なるわけないですよね、お二人とも自分の立場になって考えてみてくださいよ」

「「……」」

 え、なんで黙るんですか。

「そ、そんな変なこと言わないでよっ!なんか反応に困るじゃんっ!」

「え……」

 反応に困りますか……?

 “確かに、明莉あかりとかないわー”とか“そもそも女の子同士だしね”とかで済む話だと思ったんですけど……。

「いけない子ですね。無自覚に人の気持ちをたぶらかして」

「ええ……?」

 あ、あれかな。

 そもそもわたしみたいな子とする想像なんかさせないでよ、ってことかな。

 そうか、それなら納得。

 わたしなんかそもそも相手にすることはないっていうのは大前提での話しだったのか。

 なんて恥ずかしい思い違いをしていたのだろう。

「とにかく、千夜ねえに変なことしたらダメだからね!」

「あ、はい……」

 もちろん、そんなつもりはありませんが。

「あら、そしたらわたしにはどうしますあかちゃん?」

「え」

「日和ねえもダメに決まってるでしょうが!」

 わたしが答える前に火を噴く華凛さん。

「あらあら……じゃあ華凛ちゃんにしますか?」

「え」

 そんなの絶対に華凛さんに怒られますよ。

「あ、あたしは……その……」

 モジモジし始める華凛さん。

 態度が急変しすぎてついて行けません。

「うふふ……自分が明ちゃんにされるのはいいんですねぇ?」

 な、なんですって……?

「ちっ、ちがうからっ!これは姉を庇う妹心だからっ!我が身を犠牲にしてるだけだからっ!」

「あ、わたしは犠牲扱いなんですね……」

 分かってはいることなんですけど、面と向かって言われると傷つきますね。

「あ、ちがっ……」

「華凛ちゃんは本当は望んでいるんですよね?」

「ああ、もうっ、それもちがうのっ!!」

 は、話しがグチャグチャだぁ……。

 その日の夜は大変賑やかに更けていくのでした。


        ◇◇◇


 翌朝、朝食の時間になってテーブルに着く。

「あれ……千夜さんは?」

 無人の席を見て、思わず尋ねます。

「まだ来てませんね。お部屋かと」

「珍しいですね」

 いつも早めに起きている千夜さんが一番最後だなんて、わたしが来てからは初めてのことでした。

「あー、この時期だからねぇ」

 ですが華凛さんは、さして珍しいことではないような口ぶりです。

「この時期?」

「昨日、千夜ねえが言ってたじゃん。中間考査が近いって」

「はい、言ってました。それで勉強を教えてもらったんですし」

「だから、この時期になると千夜ねえは勉強に追い込み掛けるの」

「えっ……じゃあ、あの後も千夜さんは自分の勉強をしてたってことですか?」

「だと思うよ」

 うはぁ……千夜さんはストイックだなぁ……。

「でも、それなら何だか申し訳ないですね」

 わたしに時間を使ってもらったのは嬉しいですけど、それで睡眠不足になってしまうのは申し訳ない。

 そうと知っていたらもっと早く終えてもらうようにも言えたのですが……。

「余計なお世話よ」

「へっ!?」

 いつの間にか千夜さんはリビングに下りてきていました。

 その表情には寝不足の気だるさなど微塵も垣間見せず、凛とした佇まいで席に着きます。

「貴女に心配されるようなギリギリの成績じゃないんだから、心配するなら自分のことを心配なさい」

 ごもっともとしか言えませんが……。

「それでも睡眠不足はやはり良くないですし……」

「なら私が教えなくてもいいように勉学に励むことね」

 うぅ……それはその通りですねぇ。

「うふふ……」

 そのやり取りを見て、微笑むのは日和さんです。

「何よ、日和」

「いいえ。ただ、千夜ちゃんがあんなに手取り足取り教えてあげるのは今まで華凛ちゃんくらいだったのに、明ちゃんにもしっかり教えていたなと思いまして」

「……日和も、あの子に勉強を教えるよう言って来たじゃない」

「でも、それを良しとしたのは千夜ちゃんですよ?色々言いつつ、気にかけているのでしょう?」

「……」

 無言になった千夜さんは、じっとわたしのことを見つめてきます。

「勘違いはしないことね」

 そのままぷいっと顔を逸らすのでした。

 うおお……こ、これはどっちなんでしょう……。

 反応に困ります……。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。

白藍まこと
恋愛
 百合ゲー【Fleur de lis】  舞台は令嬢の集うヴェリテ女学院、そこは正しく男子禁制 乙女の花園。  まだ何者でもない主人公が、葛藤を抱く可憐なヒロイン達に寄り添っていく物語。  少女はかくあるべし、あたしの理想の世界がそこにはあった。  ただの一人を除いて。  ――楪柚稀(ゆずりは ゆずき)  彼女は、主人公とヒロインの間を切り裂くために登場する“悪女”だった。  あまりに登場回数が頻回で、セリフは辛辣そのもの。  最終的にはどのルートでも学院を追放されてしまうのだが、どうしても彼女だけは好きになれなかった。  そんなあたしが目を覚ますと、楪柚稀に転生していたのである。  うん、学院追放だけはマジで無理。  これは破滅エンドを回避しつつ、百合を見守るあたしの奮闘の物語……のはず。  ※他サイトでも掲載中です。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

処理中です...