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78 魔獣との戦い方について!
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「あ、ありがとうございます……」
わたしは助けてもらったお礼をしようと頭を下げます。
ですが、冒険者のジークヴァルトさんがこちらをじろりと睨みます。
「デーモンウルフの鳴き声が聞こえると思ったら、アホみたいに魔法ぶっ放しやがって……死にたいのか?」
なんだかあんまりな物言いに、こちらは首を傾げるしかありません。
「どういうことですか?後ろから襲われてしまったのは油断した結果だとは思っていますが……」
「アホか、魔獣は魔力を嗅ぎ取る。強力な魔法で消費した魔力分、奴らはこっちに向かってくるんだよ」
「そうなのですか?」
皆さん知ってました?
と、確認しようと思って振り返ってみると全員わたしから視線を反らして明後日を見ていました。
特にリアさんが一番体を反転させていました。
……知らなかったようですね。
「常識だ。魔獣の生息する地域では、なるべく嗅ぎ取られない最小の魔法か、相手の数を無効化するほどの大魔術を展開するかの二択が魔法士のやり方だろうが」
「へえ……」
「へえって……お前ら何を学園で習って来たんだ」
「そこまではまだ知らなかったですね。この後に習うんでしょうか?」
「待て……お前ら卒業を控えた学生じゃないのか?」
この時期は国家資格である魔法士の合否も分かり、内定も決まっている学生がほとんどで、こうして実力を磨きに現れる生徒もちらほらいるんだとか。
「一年生ですよ?」
「……マジか」
ジークヴァルトさんは天を仰いでいました。
「ほんとにガキじゃねえか……」
「ええ、まだ年端も行かぬ少女ですわ!それに大人気なくギルドで声を荒げ、浅ましくもマウントを取ってこられたのはどちら様でしたか!?」
リアさんはここぞとばかりにジークヴァルトさんに口撃を仕掛けています……。
「……うるせえよ。ガキならガキらしく大人しくてりゃいいんだよ、死にたくないならさっさと元いた所へ帰れ」
お二人とも一歩も引きません。
バチバチしていても仕方ありませんので、わたしが間に入りましょう。
「ちなみにジークヴァルトさんは、さっき魔術を使いましたよね?それも魔獣にバレないようにするためってことですか?」
わたしのその質問にジークヴァルトさんは驚いたように目を瞬かせます。
「お前……よく分かったな」
「ええ、その、わたしも覚えがありますので」
というか魔眼で見ましたので。
ジークヴァルトさんはわたしの使う加速と似たような魔術でデーモンウルフに近づき、体を剣で貫いていました。
「魔術くらいの体内だけで生成する魔力なら気付かれないからな」
「なるほど、それは勉強になりました」
「? ああ……魔法士が知ったところで意味もないと思うが」
ジークヴァルトさんはわたしの返事の意味が理解できなかったそうで、首を傾げています。
「エメさん、どこまでも本気にする必要はありませんわよ。冒険者のほとんどは魔法が使えない“魔術士”と呼ばれる方がほとんどですわ。ですから、彼らには火力がありません。デーモンウルフに代表されるような低級魔獣の相手が関の山ですの」
ちなみに、“魔術士”は戦力としては心許なく、普通の職業には過ぎたる力なので“魔法士”のような育成機関も資格もありません。
あくまで魔術を使っている者の総称ということです。
「ガアアアア!!」
と、話している所で再びデーモンウルフが十体ほど現れました!
「おい!どっかの誰だか知らねえがさっきの爆発みたいな魔法のせいで、異常にデーモンウルフが集まって来たじゃねえか!!」
「失礼ですわねっ!それでしたら、また私が焼き尽くせばいいだけの話でしょう!?」
「だから、それだとデーモンウルフが集まってくる一方だろうがっ!」
「……ぐっ!それでしたら貴方がどうにかして下さいますの?Aランク冒険者様!」
「あんな数、俺一人で相手できるわけねえだろ!?」
「ふふっ、豪語していても結局は魔術士・冒険者などその程度。いいでしょう、そこで指を咥えて見てくださいまし。この私が全部焼き払って差し上げます!」
「お前話聞いてたか!?また振り出しに戻ってるぞ!!」
「後で襲ってくる魔獣も全部焼き払ってしまえばいいだけでしょう!?」
リアさんが狂暴なことを言い始めました!!
「まあまあ、お二人とも落ち着いて。ここはわたしに任せてください!」
「は?お前何言って……」
「エメさん、お待ちになって!」
わたしは話を聞くより先にアクセラレーションで迫りくるデーモンウルフを迎撃。
魔眼で魔力を可視化し、魔獣が進むであろう方向を見定めるとその先に魔術で強化した拳を振り下ろします。
「えいっ!」
――ドンッ!!
「ブガアアアッ!?」
「拳!?」
ジークヴァルトさんは意外な所に驚いている様でした。
おかげさまで一発で叩き潰せましたので、この程度であれば残り九発くらいはどうってことありません。
いかに群れてると言えど、魔獣は魔獣。
連携的な攻撃を仕掛けてくるわけではありませんし、魔眼の力を使えばまず攻撃は当たりません。
淡々と、残りも倒すことが出来そうです。
「……お前、やっぱり魔法士じゃねえだろ」
デーモンウルフを全て倒し終えて戻るとジークヴァルトさんに問い詰められました。
「いえ、正真正銘アルマン魔法学園の生徒ですけど……」
「いや、お前の身のこなしはどう見ても魔術士のそれだった。それも俺なんかより遥かに洗練されている……」
どうやらジークヴァルトさんの魔術は【加速】だけで【力の強化】までには至っていないそうです。そのため敵を倒すのに武器を使用しているんだとか。
そもそも力を強化する魔術を見たのは初めてだそうです。
「貴方とエメさんが同レベルなわけがありませんでしょう、口にはお気をつけないな」
「ああっ!?」
「いやいや!二人とも!もう敵はいませんからっ!」
二人の怒りを鎮めます。
それに、さっきから後ろのお三方は全然助けてくれませんよね……。
「じゃ、じゃあ、相当成績がいいんだろ?アルマンと言えば魔法士の学園でも最難関。そこのトップともなれば冒険者じゃさすがにキツイんだろうな……」
「え、わたしビリですよ?」
「は……?」
「最下位、ビリです」
「……マジ?」
「マジです」
ずーん、とジークヴァルトさんが肩を落としていました。
「なるほど……最近の魔法士は魔術もあそこまで上手く扱えるのか……俺達もそのうち失業かな」
「そんなわけありませんでしょう。エメさんは特別ですわ、学園内でも魔術を扱うのなんて彼女くらいです」
「そ、そうなのか!?」
ちょっと安心した様子のジークヴァルトさんでした。
「ちなみにですけど、トップと言えば学園第二位なのがリアさんですよ?」
「分かりまして?」
えっへんと、胸を反らすリアさん。
「ああ?お前が?この嬢ちゃんがビリで、お前が二位?……アルマンって採点基準が狂ってるんじゃねえか?」
「さっ、エメさん?ここに物の真贋が分からぬ阿保がおりますので、私の魔法で理解させてもよろしくて?」
「ああ!リアさんダメですよ!詠唱早く止めて下さい!!」
わたしは助けてもらったお礼をしようと頭を下げます。
ですが、冒険者のジークヴァルトさんがこちらをじろりと睨みます。
「デーモンウルフの鳴き声が聞こえると思ったら、アホみたいに魔法ぶっ放しやがって……死にたいのか?」
なんだかあんまりな物言いに、こちらは首を傾げるしかありません。
「どういうことですか?後ろから襲われてしまったのは油断した結果だとは思っていますが……」
「アホか、魔獣は魔力を嗅ぎ取る。強力な魔法で消費した魔力分、奴らはこっちに向かってくるんだよ」
「そうなのですか?」
皆さん知ってました?
と、確認しようと思って振り返ってみると全員わたしから視線を反らして明後日を見ていました。
特にリアさんが一番体を反転させていました。
……知らなかったようですね。
「常識だ。魔獣の生息する地域では、なるべく嗅ぎ取られない最小の魔法か、相手の数を無効化するほどの大魔術を展開するかの二択が魔法士のやり方だろうが」
「へえ……」
「へえって……お前ら何を学園で習って来たんだ」
「そこまではまだ知らなかったですね。この後に習うんでしょうか?」
「待て……お前ら卒業を控えた学生じゃないのか?」
この時期は国家資格である魔法士の合否も分かり、内定も決まっている学生がほとんどで、こうして実力を磨きに現れる生徒もちらほらいるんだとか。
「一年生ですよ?」
「……マジか」
ジークヴァルトさんは天を仰いでいました。
「ほんとにガキじゃねえか……」
「ええ、まだ年端も行かぬ少女ですわ!それに大人気なくギルドで声を荒げ、浅ましくもマウントを取ってこられたのはどちら様でしたか!?」
リアさんはここぞとばかりにジークヴァルトさんに口撃を仕掛けています……。
「……うるせえよ。ガキならガキらしく大人しくてりゃいいんだよ、死にたくないならさっさと元いた所へ帰れ」
お二人とも一歩も引きません。
バチバチしていても仕方ありませんので、わたしが間に入りましょう。
「ちなみにジークヴァルトさんは、さっき魔術を使いましたよね?それも魔獣にバレないようにするためってことですか?」
わたしのその質問にジークヴァルトさんは驚いたように目を瞬かせます。
「お前……よく分かったな」
「ええ、その、わたしも覚えがありますので」
というか魔眼で見ましたので。
ジークヴァルトさんはわたしの使う加速と似たような魔術でデーモンウルフに近づき、体を剣で貫いていました。
「魔術くらいの体内だけで生成する魔力なら気付かれないからな」
「なるほど、それは勉強になりました」
「? ああ……魔法士が知ったところで意味もないと思うが」
ジークヴァルトさんはわたしの返事の意味が理解できなかったそうで、首を傾げています。
「エメさん、どこまでも本気にする必要はありませんわよ。冒険者のほとんどは魔法が使えない“魔術士”と呼ばれる方がほとんどですわ。ですから、彼らには火力がありません。デーモンウルフに代表されるような低級魔獣の相手が関の山ですの」
ちなみに、“魔術士”は戦力としては心許なく、普通の職業には過ぎたる力なので“魔法士”のような育成機関も資格もありません。
あくまで魔術を使っている者の総称ということです。
「ガアアアア!!」
と、話している所で再びデーモンウルフが十体ほど現れました!
「おい!どっかの誰だか知らねえがさっきの爆発みたいな魔法のせいで、異常にデーモンウルフが集まって来たじゃねえか!!」
「失礼ですわねっ!それでしたら、また私が焼き尽くせばいいだけの話でしょう!?」
「だから、それだとデーモンウルフが集まってくる一方だろうがっ!」
「……ぐっ!それでしたら貴方がどうにかして下さいますの?Aランク冒険者様!」
「あんな数、俺一人で相手できるわけねえだろ!?」
「ふふっ、豪語していても結局は魔術士・冒険者などその程度。いいでしょう、そこで指を咥えて見てくださいまし。この私が全部焼き払って差し上げます!」
「お前話聞いてたか!?また振り出しに戻ってるぞ!!」
「後で襲ってくる魔獣も全部焼き払ってしまえばいいだけでしょう!?」
リアさんが狂暴なことを言い始めました!!
「まあまあ、お二人とも落ち着いて。ここはわたしに任せてください!」
「は?お前何言って……」
「エメさん、お待ちになって!」
わたしは話を聞くより先にアクセラレーションで迫りくるデーモンウルフを迎撃。
魔眼で魔力を可視化し、魔獣が進むであろう方向を見定めるとその先に魔術で強化した拳を振り下ろします。
「えいっ!」
――ドンッ!!
「ブガアアアッ!?」
「拳!?」
ジークヴァルトさんは意外な所に驚いている様でした。
おかげさまで一発で叩き潰せましたので、この程度であれば残り九発くらいはどうってことありません。
いかに群れてると言えど、魔獣は魔獣。
連携的な攻撃を仕掛けてくるわけではありませんし、魔眼の力を使えばまず攻撃は当たりません。
淡々と、残りも倒すことが出来そうです。
「……お前、やっぱり魔法士じゃねえだろ」
デーモンウルフを全て倒し終えて戻るとジークヴァルトさんに問い詰められました。
「いえ、正真正銘アルマン魔法学園の生徒ですけど……」
「いや、お前の身のこなしはどう見ても魔術士のそれだった。それも俺なんかより遥かに洗練されている……」
どうやらジークヴァルトさんの魔術は【加速】だけで【力の強化】までには至っていないそうです。そのため敵を倒すのに武器を使用しているんだとか。
そもそも力を強化する魔術を見たのは初めてだそうです。
「貴方とエメさんが同レベルなわけがありませんでしょう、口にはお気をつけないな」
「ああっ!?」
「いやいや!二人とも!もう敵はいませんからっ!」
二人の怒りを鎮めます。
それに、さっきから後ろのお三方は全然助けてくれませんよね……。
「じゃ、じゃあ、相当成績がいいんだろ?アルマンと言えば魔法士の学園でも最難関。そこのトップともなれば冒険者じゃさすがにキツイんだろうな……」
「え、わたしビリですよ?」
「は……?」
「最下位、ビリです」
「……マジ?」
「マジです」
ずーん、とジークヴァルトさんが肩を落としていました。
「なるほど……最近の魔法士は魔術もあそこまで上手く扱えるのか……俺達もそのうち失業かな」
「そんなわけありませんでしょう。エメさんは特別ですわ、学園内でも魔術を扱うのなんて彼女くらいです」
「そ、そうなのか!?」
ちょっと安心した様子のジークヴァルトさんでした。
「ちなみにですけど、トップと言えば学園第二位なのがリアさんですよ?」
「分かりまして?」
えっへんと、胸を反らすリアさん。
「ああ?お前が?この嬢ちゃんがビリで、お前が二位?……アルマンって採点基準が狂ってるんじゃねえか?」
「さっ、エメさん?ここに物の真贋が分からぬ阿保がおりますので、私の魔法で理解させてもよろしくて?」
「ああ!リアさんダメですよ!詠唱早く止めて下さい!!」
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