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67 どこかで噂をされています!

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 時間を少し巻き戻して……。

【ミミア視点】

 ――はあ。最近エメちゃん構ってくれなくてつまんないなぁ。

 頬杖をつきながら、思わずそんな感慨にふけってしまう。

 ゲオルグからの一件以降、エメちゃんとはあまり絡めてない。

 ゲヘナの事を気にしているエメちゃんを見て、“リアちゃんなら何か情報を持っているのでは?”とアドバイスしたまでは良かった。

 でもエメちゃんはその機を最後にミミアとあまりコンタクトを取らなくなった。

 恐らく、リアちゃんから情報を聞き出したのだ。

『ねーねー、リアちゃんから何か聞けたぁ?』

『いえ、一切分かりませんでした!』 

 と、尋ねてみるもエメちゃんは知らぬ存ぜぬの一点張り。

 そうまでして頑なに話そうとしない辺りが何かを掴んでいる証拠なんだけど、そこまで気が回らないのはエメちゃんのご愛敬だ。

 かと言って、ムリに聞くわけもにもいかない。

 なら、お堅いことは抜きにして遊んじゃえ!と思って休み時間にエメちゃんに近づこうとするんだけど――。

『……』

 むわっと周囲に魔力を放つ子が一人。

(うう、セシルちゃん、露骨すぎだって……)

 人の気配を感じ取ると、即座に魔力を練り上げ始めるエメちゃんのお隣さん。

 そうなのだ。セシルちゃんはいつの間にかエメちゃんに近づこうとする者に明らかな敵意を覗かせるようになっていた。

 ミミアにはバレバレなんだけど、ほとんどの人には感じ取れないくらい微量な魔力だからスルーされてるんだよねぇ。

「はあ……」

 とまあ、そういうわけで休み時間はこうして頬杖ついて溜め息を吐くばかりになってしまうのだ。

 全く、セシルちゃんはお隣なのを良いことに地の利を生かして幅を利かせすぎだ。

 もうちょっとミミアに譲ってくれてもいいと思う。

 とか考えながら、ちらちらと後ろの状況を察知する。

(あ、セシルちゃん席を立ったな……?)

 お手洗いにでも行ったのだろう、エメちゃんから離れていくのが分かった。

 ラッキー、この隙にエメちゃんとの親睦を―――

「エメさん、今お時間よろしいかしら?」

 ――って、先越されたぁ……とほほ……。

 偶然なんだろうけど、入れ替わるように話しかけたのはリアちゃんだった。

 しかも、明らかにエメちゃんを遊びに誘おうとしている。

 セシルちゃんはともかく、リアちゃんまで……?

 いやいや、まさかねぇ。さすがにないか。

 とか思っていたら、いつの間にかセシルちゃんを睨みつけて炎をまき散らしていた。

 いやいや!危なすぎるから!

 思わず燃えている彼女の肩に手を掛けた。

        ◇◇◇

「それで、私の邪魔をしたばかりか廊下にまで連れ出して……何の用ですの?」

 目の前には、闘志に溢れた魔力を全開にしているリアちゃんが仁王立ちしている。

 とんでもない威圧感、誰かこの危ない子を止めて欲しい。

「うーんとね……リアちゃんがどうしてあんなにセシルちゃんに敵意を剥き出しにしているのか分からなくてね?危ないじゃん?」

「そんな事を気にしていましたの、下らない理由ですわね」

 あっさりと一蹴するリアちゃん。

 うん、そうだね。きっとたまたま虫の居所が悪かったんだね。
 
 エメちゃんに対する思いで爆発したとか、そんな理由なんかじゃないよね。

 良かった良かった、安心安心。これ以上ライバルが増えるわけ――

「愛のためですわ。それ以外の理由はありませんの」

 ――あったんだね……!!

 しかも全く躊躇いないよ!?リアちゃんストレート過ぎない!?

「あ、愛って……誰への!?」

「はぁ……?それを分かっていて止めたのではなくて?」

 いや、薄々感づいてはいるけどね……!

「もうよろしいかしら、そんなことも分からず止めに来たお間抜けさんと話すことはございませんの」

「待って待って!行こうとしないで!わかった、エメちゃんのことなんでしょ!?」

 するとリアちゃんは……

 ――ぽっ

 という音が聞こえてきそうな程、分かりやすく頬を染めた。

「……分かっているのなら、改めて聞かないで頂きたいですわ」

 いやいや!反応は可愛いけど、言ってることは滅茶苦茶じゃない!?

 分かってないならマヌケ扱いで、分かっているなら聞くなって、どうしたらいいの!?

「え、エメちゃんが好きということでいいのね?」

「……そういうことになりますわね」

 というか、なんでエメちゃんの名前出した途端に照れてるの?さっきまで愛とか真顔で言ってたよね!

 ミミア、この子のポイント分かんない!!

「お分かりになったのなら、その手をお放しなさい」

「放したらどうするの?」

「愛の障壁を焼却しに行きますわ」

 なんて、短絡的思考!?

 ていうか、愛の障壁ってなに!?ツッコむべき!?

「いやいや、リアちゃん!それよりさ、エメちゃんが何をしようとしているかの方を気にするべきなんじゃない?」

 ぴくり、とリアちゃんは眉間に皺を寄せると大人しくなった。

「エメさんが何をしようとしているか……?」

「そそ、休みが全くないなんておかしいじゃん。きっと何か理由があるんだよ、それを知るべきじゃない?」

「その理由は……確かに気になりますが」

 よしよし、ミミアとしてはエメちゃんにどんなゲヘナの情報を教えたのか気になっていたのだ。

 その情報を聞き出し、エメちゃんの行動理由を明らかにしていこう。

「まずさ、エメちゃんここ最近かなりゲヘナのことを気にしていたよね?リアちゃん何か教えたりしてない?」

「……お教えしましたが、その内容は貴女には言えませんわ」

 リアちゃんは口をつぐむ。

 おいそれと拡散していい情報ではないから、当然の反応だと思う。

「でも、それを解き明かさないとエメちゃんとの愛は実らないかもよ?」

 ダメ元で言ってみる。

「……フェルスにゲヘナの本拠地があるかも、とはお伝えしましたわ」

 ちょろいなぁ……!

 愛は盲目って言うけど、それってリアちゃんの為の言葉かな!?

「随分とまた遠い場所だね」

 うろ覚えだけど、フェルスはここから結構離れた場所だったと思う。

「それはともかく、エメさんは放課後も用事があるらしいのですが、そこにセシルさんも姿を現しているそうですの。この私を差し置いて……憎たらしいったらありませんわ!」

 嫉妬心がダダ漏れのリアちゃん……。

 なんか段々、可愛く見えてきたかも……。

「ゲヘナに関してはミミアにも聞いてきたくらいだから相当気になっていると思うの。放課後の件もそれに関わっているんじゃないかな?」

「……だとしても、エメさんが答えて下さらないのですから確かめようがありませんわ」

「でもさ、セシルちゃんは何しているか知ってるんだよね?」

「そういう口振りでしたわね」

 ……セシルちゃんはゲオルグの件とも、ゲヘナの件にも関わっていない。

 にも関わらず放課後のエメちゃんに会っているということは、第三者の介在が容易な空間である可能性が高い。

「うん、なら確かめたらいいんじゃない?」

「ですから、その方法がないから困っているのであって……」

「跡をつけたらいいんじゃない?」

 リアちゃんは一瞬目を丸くして――

「なるほど、それは盲点でしたわ。ですが貴女最低ですわね」

 納得しているようなのに、なぜか罵倒された。

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