67 / 93
67 どこかで噂をされています!
しおりを挟む時間を少し巻き戻して……。
【ミミア視点】
――はあ。最近エメちゃん構ってくれなくてつまんないなぁ。
頬杖をつきながら、思わずそんな感慨にふけってしまう。
ゲオルグからの一件以降、エメちゃんとはあまり絡めてない。
ゲヘナの事を気にしているエメちゃんを見て、“リアちゃんなら何か情報を持っているのでは?”とアドバイスしたまでは良かった。
でもエメちゃんはその機を最後にミミアとあまりコンタクトを取らなくなった。
恐らく、リアちゃんから情報を聞き出したのだ。
『ねーねー、リアちゃんから何か聞けたぁ?』
『いえ、一切分かりませんでした!』
と、尋ねてみるもエメちゃんは知らぬ存ぜぬの一点張り。
そうまでして頑なに話そうとしない辺りが何かを掴んでいる証拠なんだけど、そこまで気が回らないのはエメちゃんのご愛敬だ。
かと言って、ムリに聞くわけもにもいかない。
なら、お堅いことは抜きにして遊んじゃえ!と思って休み時間にエメちゃんに近づこうとするんだけど――。
『……』
むわっと周囲に魔力を放つ子が一人。
(うう、セシルちゃん、露骨すぎだって……)
人の気配を感じ取ると、即座に魔力を練り上げ始めるエメちゃんのお隣さん。
そうなのだ。セシルちゃんはいつの間にかエメちゃんに近づこうとする者に明らかな敵意を覗かせるようになっていた。
ミミアにはバレバレなんだけど、ほとんどの人には感じ取れないくらい微量な魔力だからスルーされてるんだよねぇ。
「はあ……」
とまあ、そういうわけで休み時間はこうして頬杖ついて溜め息を吐くばかりになってしまうのだ。
全く、セシルちゃんはお隣なのを良いことに地の利を生かして幅を利かせすぎだ。
もうちょっとミミアに譲ってくれてもいいと思う。
とか考えながら、ちらちらと後ろの状況を察知する。
(あ、セシルちゃん席を立ったな……?)
お手洗いにでも行ったのだろう、エメちゃんから離れていくのが分かった。
ラッキー、この隙にエメちゃんとの親睦を―――
「エメさん、今お時間よろしいかしら?」
――って、先越されたぁ……とほほ……。
偶然なんだろうけど、入れ替わるように話しかけたのはリアちゃんだった。
しかも、明らかにエメちゃんを遊びに誘おうとしている。
セシルちゃんはともかく、リアちゃんまで……?
いやいや、まさかねぇ。さすがにないか。
とか思っていたら、いつの間にかセシルちゃんを睨みつけて炎をまき散らしていた。
いやいや!危なすぎるから!
思わず燃えている彼女の肩に手を掛けた。
◇◇◇
「それで、私の邪魔をしたばかりか廊下にまで連れ出して……何の用ですの?」
目の前には、闘志に溢れた魔力を全開にしているリアちゃんが仁王立ちしている。
とんでもない威圧感、誰かこの危ない子を止めて欲しい。
「うーんとね……リアちゃんがどうしてあんなにセシルちゃんに敵意を剥き出しにしているのか分からなくてね?危ないじゃん?」
「そんな事を気にしていましたの、下らない理由ですわね」
あっさりと一蹴するリアちゃん。
うん、そうだね。きっとたまたま虫の居所が悪かったんだね。
エメちゃんに対する思いで爆発したとか、そんな理由なんかじゃないよね。
良かった良かった、安心安心。これ以上ライバルが増えるわけ――
「愛のためですわ。それ以外の理由はありませんの」
――あったんだね……!!
しかも全く躊躇いないよ!?リアちゃんストレート過ぎない!?
「あ、愛って……誰への!?」
「はぁ……?それを分かっていて止めたのではなくて?」
いや、薄々感づいてはいるけどね……!
「もうよろしいかしら、そんなことも分からず止めに来たお間抜けさんと話すことはございませんの」
「待って待って!行こうとしないで!わかった、エメちゃんのことなんでしょ!?」
するとリアちゃんは……
――ぽっ
という音が聞こえてきそうな程、分かりやすく頬を染めた。
「……分かっているのなら、改めて聞かないで頂きたいですわ」
いやいや!反応は可愛いけど、言ってることは滅茶苦茶じゃない!?
分かってないならマヌケ扱いで、分かっているなら聞くなって、どうしたらいいの!?
「え、エメちゃんが好きということでいいのね?」
「……そういうことになりますわね」
というか、なんでエメちゃんの名前出した途端に照れてるの?さっきまで愛とか真顔で言ってたよね!
ミミア、この子のポイント分かんない!!
「お分かりになったのなら、その手をお放しなさい」
「放したらどうするの?」
「愛の障壁を焼却しに行きますわ」
なんて、短絡的思考!?
ていうか、愛の障壁ってなに!?ツッコむべき!?
「いやいや、リアちゃん!それよりさ、エメちゃんが何をしようとしているかの方を気にするべきなんじゃない?」
ぴくり、とリアちゃんは眉間に皺を寄せると大人しくなった。
「エメさんが何をしようとしているか……?」
「そそ、休みが全くないなんておかしいじゃん。きっと何か理由があるんだよ、それを知るべきじゃない?」
「その理由は……確かに気になりますが」
よしよし、ミミアとしてはエメちゃんにどんなゲヘナの情報を教えたのか気になっていたのだ。
その情報を聞き出し、エメちゃんの行動理由を明らかにしていこう。
「まずさ、エメちゃんここ最近かなりゲヘナのことを気にしていたよね?リアちゃん何か教えたりしてない?」
「……お教えしましたが、その内容は貴女には言えませんわ」
リアちゃんは口をつぐむ。
おいそれと拡散していい情報ではないから、当然の反応だと思う。
「でも、それを解き明かさないとエメちゃんとの愛は実らないかもよ?」
ダメ元で言ってみる。
「……フェルスにゲヘナの本拠地があるかも、とはお伝えしましたわ」
ちょろいなぁ……!
愛は盲目って言うけど、それってリアちゃんの為の言葉かな!?
「随分とまた遠い場所だね」
うろ覚えだけど、フェルスはここから結構離れた場所だったと思う。
「それはともかく、エメさんは放課後も用事があるらしいのですが、そこにセシルさんも姿を現しているそうですの。この私を差し置いて……憎たらしいったらありませんわ!」
嫉妬心がダダ漏れのリアちゃん……。
なんか段々、可愛く見えてきたかも……。
「ゲヘナに関してはミミアにも聞いてきたくらいだから相当気になっていると思うの。放課後の件もそれに関わっているんじゃないかな?」
「……だとしても、エメさんが答えて下さらないのですから確かめようがありませんわ」
「でもさ、セシルちゃんは何しているか知ってるんだよね?」
「そういう口振りでしたわね」
……セシルちゃんはゲオルグの件とも、ゲヘナの件にも関わっていない。
にも関わらず放課後のエメちゃんに会っているということは、第三者の介在が容易な空間である可能性が高い。
「うん、なら確かめたらいいんじゃない?」
「ですから、その方法がないから困っているのであって……」
「跡をつけたらいいんじゃない?」
リアちゃんは一瞬目を丸くして――
「なるほど、それは盲点でしたわ。ですが貴女最低ですわね」
納得しているようなのに、なぜか罵倒された。
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
檸檬色に染まる泉
鈴懸 嶺
青春
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性”
女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。
雑誌で見つけたたった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が……
手なんか届かくはずがなかった憧れの女性が……
いま……私の目の前ににいる。
奇跡的な出会いを果たしてしまった私の人生は、大きく動き出す……
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる