魔法適性ゼロと無能認定済みのわたしですが、『可視の魔眼』で最強の魔法少女を目指します!~妹と御三家令嬢がわたしを放そうとしない件について~

白藍まこと

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46 秘密は持つべきじゃないかもです!

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「ゲオルグさんが魔法士として機能しない……?」

 分かるようで分からず、オウム返しをしてしまいます。

「ええ。どういうわけか彼は魔力をコントロールする経路が機能異常をきたしていまして、魔法が使えない体になっていたのです」

「どうしてそんなことが起きるのですか?」

「分かりません。彼は完全に隔離し、結界も張っていました。それが破られた形跡はないので自分で行ったとしか考えられませんが……」

 セリーヌさんのその説明の仕方には違和感がありました。

「セリーヌさん、自分でやったかどうかはゲオルグさん本人の口から聞けなかったのですか?」

 大事な部分をセリーヌさんはぼかしていたのです。その証拠に返事に間が空きます。

「貴女、会長のお立場で全てをお答えられるとお思い……!?」

 モニカさんがもう見てられないと言わんばかりに横槍を入れてきます。

 怖いです。

「いいんですよ、モニカ」

「ですが、会長……!」

「エメさんはゲオルグが起こした事件の当事者です。知る権利がありますよ」

「……会長がそう仰るのなら」

 モニカさんが身を引きます。

 批判的な眼光はそのままなので、緊張感は漂ったままですが……。

「これから話す事は他言無用とお約束できますね?」

 改めての確認。

 ここまで来て、引き返すことは出来ません。

 コクリ、とわたしとミミアちゃんは頷きます。

「ゲオルグは記憶も失っていたのです。最初は演技かと疑いましたが、何度調べても結果は同じ、どうやら本当に記憶がないのです。お陰様でゲヘナの事は聞けず、魔獣の搬入ルートも分からず終い。完全にしてやられましたよ」

 肩をすくめるセリーヌさん。

「ゲオルグさんはそこまでして隠そうとしたって事ですか?」

「そう考えるのが妥当でしょう。魔族には記憶を操作する魔法があると聞いたことがあります。ゲヘナにいた彼ならそれを扱えたのかもしれません」

「……そこまでするんですね」

 正直、ゲオルグさんは何をしたかったのかが全く分からなくなりました。

「ですが、仮にですよ――」

 けれどセリーヌさんは言葉を続けます。

「――これが第三者の行為だとしたら恐ろしいことです。この学園には、結界への侵入が可能で、魔族の魔法を扱う者がいる事になりますから」

 ぞくり、と身震いをしてしまいます。

 確かにゲオルグさんのような人が一人だけとは限りません。

 ゲヘナに所属している生徒や、それ以外でも何やら良からぬことを考えている人がいるのだとしたら……。

「会長、そこまでにすべきです」

 モニカさんがセリーヌさんの発言を止めに入ります。

「おっといけない、つい話し過ぎてしまいましたね。今のはあくまで私の妄想です、証拠も何もありませんから。ちょっと心配性な生徒会長の戯言だと聞き流してください」

 にこっと笑みを浮かべるセリーヌさん。

 その微笑みに、どうわたしは返していいのか分かりませんでした。

 お話はそれで終わりでした。




「何だか怖い話だったね。二人とも気を付けるんだよ」

「ありがとうございます!クロード様!」

 ミミアちゃんは見送ってくれたクロードさんに明るく返事をして、わたしたちは生徒会室を後にします。

「結局、ゲオルグは自分でケジメをつけたってことだよね?それならミミアたちがどうこう言う問題じゃなかったんだよ」

「そう……ですよね」

 十中八九そうなのですから、これ以上言うべきことはありません。

 ただどうしてか腑に落ちない自分と妙な胸騒ぎを覚えていたのは、きっと思っていたよりも暗い話だったからなのでしょう。

 やはり、魔族が絡む話には良いことはないのだと再認識させられたのです。

        ◇◇◇

「エメ、何かあったの?」

 教室に戻り席に着くなり、わたしの様子を見ていたセシルさんが尋ねてきました。

「あ、えっとですね。ついさっき生徒会室に行ってまして……」

「それで?」

「それでですね……」

『これから話す事は他言無用とお約束できますね?』

 セリーヌさんの台詞が頭の中で反芻します。

 そうでした。この事は他の人にお話しできないのです。

「いえ、何でもありませんでした」

「……何でもないのに生徒会室に行くことなんてある?」

 ……ないですよね。普通。

「ま、まあその……。セシルさんが知るべきような事じゃありませんでしたよ?聞くだけ時間の無駄だと思います」

「それは私が決めること」

 お、おや……?

 セシルさんにしては珍しく一歩も引こうとしません。

 しかも、何てことはないわたしの話題なのに。

「エメ、教室に戻ってきてから表情暗かった」

「え、えっ、そうでしたか?」

「うん。だから気になる、教えて」

 ずいっ、と隣の席に座るセシルさんが体を寄せて来ます。

 いつもクールフェイスなセシルさんですが、今の表情はどこか鬼気迫るものがありました。

 ど、どうしてこんな時にセシルさんが前のめりに……!?

 今じゃなければ構ってもらえて絶対嬉しいはずなのにっ!!

「ご、ごめんなさい……。これは言えない事なのです」

 セシルさんにそんな表情を見せられては、もう中途半端なことは言えません。

「私にも?」

「はい……。セシルさんにも」

 心苦しいですが、はっきりと伝える他ありません。

「そう、なんだ……」

 ――ガクリ

 そんな音が聞こえて来そうなほど、セシルさんは分かりやすく肩を落とします。

 や、やめてください……!そんな悲しそうな表情しないで下さい……!

「エメは、私のことは聞いて来るのに、自分のことは教えてくれないんだ」

 ――グサアアァァッ!!

 ハートが弓矢で刺されたような気分です。

 セシルさんがあんな寂しそうな顔で、切なそうな言葉を口走るなんて……!

 今までには絶対になかった反応です!い、いいっ、一体何が……!?

「い、いえ……これはセシルさんだけじゃなくて……他の人にも言えないことですので。決して区別とかしてるわけじゃ……」

「でも、ミミアと一緒に行ったんでしょ?」

「あ、いや、その……」

 はわわわわわわっ……!!

 な、なぜそれを……!?

 見てたんですか!?

 いつも我関せずなセシルさんが、わたしの事をちゃんと見ていたんですか……!?

「ミミアはいいんだね」

 二度目のグサアアァァッ!!

 ミミアちゃんは当事者だから知ってるだけですのに……!!

 でも言えないので説明もできません……!

 ジレンマがわたしの頭をおかしくしそうです。

「ち、違うんです……あれはたまたま……偶然の成せる技と言いますか……」

「偶然ミミアに秘密を共有することになったの?」

「あ、はい……そういうことなんです」

 もう絶対にこれ以上は話せないのが口惜しいです。 

「エメは私のことを特別に大切にしてくれてるのかと思ってたけど――」

「いえ、それは勿論……!」

「――エメは誰とでも秘密を共有できる人、特別をたくさん作れる人なんだ。だから私だけが特別じゃないんだね。勝手な勘違いをしていただけだった、ごめん」

 いいいいいいいやあああああああああああああああ!!!!

 セシルさんがさっきまであんなに心を開いてくれていたのにぃぃぃぃ!!

 ――バタン、バタン、バタン、バタン!!

 セシルさんの心の扉が何重にも閉じていく音が聞こえてくるじゃありませんかっ!!

 いえ、そんな音ないので聞こえないはずなんですけどねっ!?

 でも分かっちゃうんですよね!!

「違うんです!聞いてくださいセシルさん……!」

 離れていくセシルさんの心を掴もうと手を伸ばします。

 ――バチン!!

「あ、いたっ!」

 弾かれます。

 なぜなら、目の前には岩が壁となって出現していたからです。

 ……防御魔法じゃないですか、これ。

「せ、セシルさん……?」

「……」

 気付けば、360°完全に防御魔法で覆われていました。

 隣の席がまるで岩石そのものになっています。

「セシルさん!何で隠れるんですか!?」

「……」

「セシルさんっ!返事をしてください!」

「……私は岩、人間は話し掛けないで」

 そこまで心を閉じなくても良くないですか!?
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