魔法適性ゼロと無能認定済みのわたしですが、『可視の魔眼』で最強の魔法少女を目指します!~妹と御三家令嬢がわたしを放そうとしない件について~

白藍まこと

文字の大きさ
上 下
8 / 93

08 友達を作りたいです!

しおりを挟む
「ん~……」

 お昼休みです。

 ぼっちには一番ツラい時間がやってきてしまいました。

 皆さんご友人と学食に行かれたり、教室で一緒にお弁当を食べたりしています。

 こ、これは声を掛けるチャンスでもあるのです……!

 やってみるしかありません。

 大人数の所は気が引けますので、まずは少人数の所から……。

 周囲を見てみます。

 前方。

「はっ!ラピスがこっちを見ている!?」

「な、なにが目的だ!?」

「べ、弁当の中身じゃないかっ!!」

「ま、マジか……くそっ、卵焼きくらいなら……!」

 ……うん。

 この男の子二人組はダメですので、視線を逸らしましょう。

 真横。

「……」

 おっ、セシルさんはまだご飯を食べていない様子。

 これなら声を掛けやすいです。

「せ、セシルさん……?」

 ――ひくっ

「な、なに……?」

 セシルさんはちょっとだけわたしに慣れてきてくれたのか、以前ほどはビクビクしないようになってくれました。

 それでも警戒心はかなり強そうですが……。

 ですが打ち解けるのに食事を共にするのはもってこいです。

 断られるのは怖いですが、ここで勇気を振り絞らなければ先に進めません。

「ごはんまだのようでしたら、一緒に……」

「食べない」

「え」

 即答で心臓が止まります。

「私、昼食はとらない」

 なるほど、ご飯自体を食べないという意味でしたか。

 そんなパターンがあるんですねえ……。

 ご飯を食べないと力が出ないわたしには考えつかない発想でした。

「そうなんですか、セシルさん細いですもんね。ダイエットですか?」

「いや……食欲、ないだけ」

 突然の敗北感!

 くうぅーー!

 言ってみたい、言ってみたいです。そんなセリフ!!

 わたしなんてついつい食べ過ぎちゃってシャルには止められるし、体重が増えるのは止まらないしで大変なんですよ。

 小食で自然と痩せて可愛いなんて、女の子として最強じゃないですか。

 ズルですよ、ズルっ。

「……で、ですがご飯はちゃんと食べた方がいいんじゃないですか?ほらわたしたち育ち盛りですから、健康にも良くないと聞きますよ?」

 ああっ……!

 悪い、悪いわたしが出ちゃってます!

 食べないセシルさんが羨ましくて、わたし側ダークサイドに引きずり込もうとしてしまいますっ!

「でも食べたくないから……」

「そんなに細いんですから、もうちょっと食べた方が……」

 ――ビクビク

「わ、私を太らせてどうしたいの……?」

 あ、まずいです。

 深追いしすぎました。

 せっかく慣れてきてくれたセシルさんが怯え始めています。

「いえ、どうもするつもりは……」

「肥えた私を、食べる気……?」

「そんなわけないですよね!?」

 セシルさんは恐怖によって正常な判断能力が欠如していますっ!

「おい、今ラピスがセシル様を食べるって……どういう意味だ?」

「そりゃお前……大人の意味に決まってるだろ!」

「は?大人……?」

「そんなことも知らないのかっ!……ごにょごにょっ」

「な、なんだって!?……だがまて。それって映画じゃ大人の男女がやる行為じゃなかったか!?」

「世の中広いんだよ」

「……オレにはまだまだ知らない世界があるんだな……」

 なんか前の男の子二人は意味が分からないことを話し始めていますし……。

 居づらくなってしまいました……。

 結局わたしは空気に耐えられず、教室から出て行くことにしました。

        ◇◇◇

「さて、どうしましょうか……」

 教室を後にしてみましたが、お腹は空いています。

 学食に一人ではハードルが高いですし、他にどこで……。

「あっ、中庭がありましたねっ!」

 そうです。昼食は中庭でも食べていいと聞いたことがあります。

 それに友達を作るのは何もクラスメイトだけにこだわる必要はありません。

 何となくですが、中庭には穏やかな人が集まる気もします。

 そこで親睦を深めるのもアリですねっ!

 わたしは軽い足取りで中庭へと向かいました。




 ――ひゅ~~~~……。

「……さむいです」

 考えてみれば季節は春が始まったばかり。

 まだまだ肌寒い日々が続きます。

 それなのに屋外である中庭でご飯を食べようだなんて方は一人もいませんでした。

 景色は中央に据えられた木と、芝生が広がります。

 貸し切りです。

「あはは……ま、まあいいや。ここなら落ち着いて食べられそうです……」

 一人で隅っこのベンチに座ってお弁当を広げます。

 シャルがいつも用意してくれているものです。

「いただきます」

 ――ぱくぱく

 うん、こんな時でもシャルの作ってくれるお弁当は美味しいです。

 寂しいわたしの心を癒してくれます。

 お弁当はすぐに食べ終わりました。

「さて……すぐに教室戻るのも気まずいですね」

 どうせなら授業が始まるギリギリに戻りたいものです。

 時間を潰しましょう。

「あ、そうだ。誰もいないのですから魔法の練習をしましょう」

 今日は実技の授業はないので、座学で学んだ魔法理論を実践してみましょう。

 人より遅れているわたしは、こういう所で努力しないと……!

 中庭で火は危ないので、水魔法の練習をしてみることに。

 魔法に集中します……。

アクア!!」

 ――じわり

 手の平が湿りました……それだけ。

「うええんっ、やはりわたしには魔法の才能がぁ……」

 うずくまって頭を抱えます。

「――あれ、先約がいるなんて珍しいな」

 と思えば、背後から男の子の声が!?

 どこかで聞いたことのある声でしたが……。

「えっ、うそっ、ギルバート君!?」

 振り替えるとそこには主席のギルバート君がいたのです!

「ごめんね、いきなり声掛けて。ここいつも誰もいないから思わず声掛けちゃったよ」

「い、いえ!とんでもないですっ!」

 うわあ、こんな近くにギルバート君が……。

 しかし、見れば見るほど整った顔立ちですね。直視するには眩しすぎます。

「それでエメさんは、ここで何してたの?」

「――ッ!?」

 わたしの背筋が震えます。

 その反応に驚いたのか、ギルバート君が目を丸くします。

「え、どうかした……?」

「いま、わたしのこと何と仰いました……?」

「“ここで何を……”」

「その前です」

「え……?“それでエメさん”かな……?」

 きゃーーーーーっ!!

 名前!名前ですっ!

 わたしのことをラピス呼びしない人がいましたっ!!

 しかも主席でイケメンのギルバート君がですよっ!?

「ありがとうございます!わたし、とっても嬉しいです……!」

 わたしはギルバート君の手を握り、ぶんぶん回して感激した気持ち表現します。

「え!?ご、ごめんっ。話が見えないんだけど……」

「名前で呼んでもらえたことです……ううっ……」

「な、泣くほどなんだ……」

 あ、まずいです。ギルバート君が引いています。

 感情を抑えないと……。

 手を放します。

「でも、わたしみたいな子をどうして知ってくれているんですか?」

「ここ難関なのに姉妹揃って入学なんて珍しいからさ。噂になってるよ」

「いえ、それは妹がステラで凄いからですよ……。わたしはラピスなので名前をあまり呼ばれないくらいですから……あはは」

 恐らくステラのシャルが有名で、その姉がラピスという逆転現象があって際立ってしまっているのでしょう。

「ああ……なるほどね。ここは実力主義みたいな所があるから、そういうの気にする人もいるもんね」

「ギルバート君は気にならないのですか?」

「そりゃ切磋琢磨する仲間なんだから、そんなこと意識しないよ」

 な、なんて素敵なお方なのでしょう……!

 主席なのですから一番そういったことを気にされていると思っていましたが、本物は考え方が違いますね……!

 わたしがいかに狭い視野に囚われているか思い知らされてしまいますっ。

「それで、魔法練習してたんでしょ?」

「あ、はい。未熟なのでこういう時に練習をと思いまして」

「手伝おうか?」

「……はい?」

 あれ、幻聴が聞こえました?

「あはは、おかしいですね。主席のギルバート君がわたしなんかの魔法の練習を手伝ってくれるなんて、そんな都合いいことが……」

「ん?いいよ、僕も今ヒマだし」

「え?」

「え?」

 お互いフリーズします。

 あ、いや、これはわたしのせいですね。

「え、いいんですか……?」

「うん、いいよ。僕で教えれることがあればだけど」

 か、神……!

 ここに神が降臨しました……!

「ぜ、是非お願いしますっ!」

 わたしは出来る限りのお辞儀をします。

「ああ、やめてよ。そんな大したこと出来るか分かんないし……」

 くうっ!実力があおりでしょうに、どれだけ謙虚なんですかっ……!

 ……あれ?ちょっと待ってください。

 もしかしてですけど。

 ギルバート君なら、わたしの友達になってくれるんじゃありませんかっ!?

 こんなに心の広い方なら受け入れてくれるような気がします。

 今こそ千載一遇の好機!

「あ、あのですね、ギルバート君よかったらなんですけど……」

 ――コンコン

 ん?大事な話をしようとしたタイミングで何やらノックのような音が。

 音のする方へ反射的に振り返ると……。

「え、シャル!?」

 なんとシャルが、窓からこちらを覗いていたのです。

 教室は4階にあるため、かなり上から見下ろされています。

 シャルは親指を立てて、ぐいっぐいっと自身の後方を指していました。

 ……あ、なるほど!

 ギルバード君と友達になるのを“グッジョブ”と応援してくれているんですねっ!?

 ――グッ!

 わたしも満面の笑顔で親指を立てて返します。

 ――ブチッ!!

 え、あれ……なんでシャルは鬼の形相になるんでしょうか。

 カラカラとシャルは窓を開け始めました。

「こっちに来いって言ってんのよ!!」

 降り注ぐ怒声。お姉ちゃんビックリです。

 でもシャル、それはあんまりだよぉ……。

 せっかく友達第一号になってくれるかもしれない人が目の前にいるのにぃ……。

「あ、後でねー?」

 わたしも声大きめで返事をします。

「今!今、来なさいっ!!」

「今はだめー。ギルバート君に魔法教えてもらうの―」

「ああっ!もうっ!!」

 あ、あれ……シャル……?

 窓の淵に足掛けてない……?

「あっ、あぶないよー。シャル、寒いんだから窓閉めなよー」

「うっさい!今そっち行くから!!」

 え、ウソでしょ……?

 シャルが窓から身を投げ出してるんですけど……そこ4階だよっ!?

 ――ドガーーーーンッ!!

「しゃ、シャルっ!?」

 当たり前ですが、重力に従い急降下。

 爆音と同時に粉塵が舞い上がります。

 あんな所から落ちてくるなんて、何考えてるのあの子!?

 わたしはシャルが落ちた場所目掛けて走り出します。

 視界を奪う粉塵を振り払い、進んでいくと……。

 ――ガシッ!

「え?」

 手首を掴まれました。

「行くわよ、このバカっ!」

 そこにはピンピンしたままのシャルが……。

「え、それより大丈夫……?」

「当たり前でしょ!音と粉がすごいのは風魔法で衝撃を殺したから!」

 ああ、さすがはシャル。器用な子です。

「や、ちょっと待ってよ。今ギルバート君が友達になってくれるかも……」

「そいつはダメなのっ!」

「で、でも……」

「でもじゃない!言う事聞かないと、もうお弁当作らないから!!」

「ええ……」

 お姉ちゃんは、妹の勢いに完全に押し負けてしまいます。

 シャルになされるがまま、ギルバート君の横を通ります。

「悪いわね、こいつに用があるから借りてくわ」

 ちょっと、ちょっと、何その口調!?

「ご、ごめんなさい……ちょっと妹がわたしに急用みたいで……」

「うん、全然大丈夫。また何かあったら声掛けてよ」

 ああ、本当にいい人ですね。ギルバート君。

 魔法教えてもらいたかったなぁ……。

「ちっ、なにあれ。あんなウソくさい笑顔振りまかないで欲しいわね」

 というか、シャルの異様な怒気が収まりません……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。

白藍まこと
恋愛
 百合ゲー【Fleur de lis】  舞台は令嬢の集うヴェリテ女学院、そこは正しく男子禁制 乙女の花園。  まだ何者でもない主人公が、葛藤を抱く可憐なヒロイン達に寄り添っていく物語。  少女はかくあるべし、あたしの理想の世界がそこにはあった。  ただの一人を除いて。  ――楪柚稀(ゆずりは ゆずき)  彼女は、主人公とヒロインの間を切り裂くために登場する“悪女”だった。  あまりに登場回数が頻回で、セリフは辛辣そのもの。  最終的にはどのルートでも学院を追放されてしまうのだが、どうしても彼女だけは好きになれなかった。  そんなあたしが目を覚ますと、楪柚稀に転生していたのである。  うん、学院追放だけはマジで無理。  これは破滅エンドを回避しつつ、百合を見守るあたしの奮闘の物語……のはず。  ※他サイトでも掲載中です。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

処理中です...