魔法適性ゼロと無能認定済みのわたしですが、『可視の魔眼』で最強の魔法少女を目指します!~妹と御三家令嬢がわたしを放そうとしない件について~

白藍まこと

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02 魔法を使ってみます!

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 教室にて。

 シャルがわたしの相手をしてくれないので一人着席します。

「おい、あれ見ろよ」

「うわ、ラピスじゃん……」

「ああいう意識が低い子と一緒になると影響受けるからな」

「ああ……ある程度の距離はとるようにしようぜ」

 聞こえてます、聞こえてますよ!クラスメイトのお二人さん!

 遠目でコソコソ話しているから聞こえてないと思ってるんでしょうけど、わたし自分の話には敏感なので分かっちゃうんですよね。

 それに皆が談笑している中、わたしひとりで席に着いていますし。自然と周りの音が良く聞こえます。

 気にしてないフリしてますけど、かなり寂しいんですけどこの状況……。

 ラピスってそんなに遠ざけられるのでしょうか?

 前途多難です……とほほ。




 しばらくすると入学式が始まるため大演習室へと移動になりました。

 壇上ではブラウンの髪をした背の高い少年が新入生代表として挨拶をしています。

「見て見て、あの方が今回成績首位でご入学されたギルバート・クリステンセン様よ」

 わたしは近くで世間話をしている女の子の話に耳を傾けます。

 話しかける勇気はありません。

「何でも次席との差は相当開いていたとの事。もう既にこの学年ではギルバート様が首席でご卒業されるのではとの噂よ」

 なんと、そんな凄い方なんですね。

 底辺のわたしとは対極じゃないですか……。

「それにあの整った容姿……完璧すぎて近寄りがたいわ」

「本当ね、あたし達のような凡人では、お声を掛ける事すらおこがましいわ」

 確かにギルバートという少年は鼻筋が通り、表情も爽やか。手足はすらっと長くて、モデルさんみたいでした。

 有り体に言っちゃうとイケメンってやつです。うん、いいですよねイケメン。

 目の保養、目の保養。

 わたしはギルバートさんの姿を目に焼き付けるのに夢中で、お話の方は全く耳に入ってきませんでした。

        ◇◇◇

 入学式を終え、教室に戻ると程なくして担任の先生が現れました。

「はーい、みんな注目。これから君たちの担任になりますクラウス・ヘルマンと言います。よろしくー」

 クラウス先生は割と若めな黒髪の男性で、ほどよく力が抜けている感じが印象的です。

 話しやすそう。怖い先生じゃなくてよかった。

「それじゃ、もうみんな入学式で疲れていると思うからホームルームもさっさと終わらせちゃおうか」

 やった……!

 わたし人が多い所、特に初対面の人ばかりだとかなり体力消耗しちゃうので助かりました。

 シャルも相手してくれないし、早く帰りましょう。

「じゃ悪いんだけど、今から全員の魔法適性だけ確認させてもらうから第三演習室に集合ね」

 と、思ったらまだやることありましたー!

 しかも魔法適性?なんですか、それ?




 というわけで第三演習室に集合しました。

 壁に魔法の威力を吸収する魔石が仕込まれていること以外は、至って簡素な作りのホールのような空間です。

「終わった人から各自帰っていいからね」

 ヘルマン先生はボードを持ちながらわたしたちを見回しています。

 ここにいる全員が何をしたらいいのか把握できず、ある男子の方が立ち上がりました。

「クラウス先生!これから何すればいいんですかー?」

「簡単だよ。今から二人ずつ名前を呼ぶから僕の前で片方が攻撃魔法を、受け手は防御魔法でそれを防いで欲しい」

 なんかいきなり実技試験っぽいですね……!?

「あ、攻撃魔法は得意属性で威力は最小でいいよ。これは試験じゃないから危険がないようにね」

「何のためにこんなことするんですか?」

「皆の成績は知っているけど実際の魔法を直接見たわけじゃないからね。攻撃と防御魔法を見せてくれれば大雑把にはなるけど、だいたいの適正はこっちで判断できるから」

 明日から実技訓練は始まるそうなので、事前に皆がどれくらいの魔法を使えるのか確認してきおきたいのだそうです……。

 いいですけど、全然気持ちの準備してなかったから緊張するなあ……。

 あまり目立たないように、順番は真ん中から後半にかけてがいいなあ……。

「それじゃまず、エメ・フラヴィニー」

「はっ……ひゃいっ!?」

 ――と思ってたのに、まさかのトップバッター!!

 イジワル!神様のイジワルですっ!!

「なんか変な返事だな、まあいいけど。……それと、リア・バルシュミューデ」

「はい」

 すっと立ち上がったのは赤髪をふわりと巻いている少女。

 あっ。あの方は今朝、校門でわたしがウロウロしているのを注意してきた人です。

 先生の前に集まると、リアさんはわたしの顔をじーっと見てきました。

「貴女、同じクラスでしたのね」

「え、ええ……ぐ、ぐぐっ、偶然ですね!」

 するとリアさんは大きな溜息を吐いて、先生の方に視線を向けてしまいました。

「クラウス先生、よろしいですか?」

「なんだ、バルシュミューデ」

「適性を見る分には構いませんが、私の相手がラピスというのには理由がありまして?」

「うん、バランス的に。傾向として成績下位の子は魔法の制御を苦手とする事が多い。事故が間違っても起きないようにするには君のような優秀な子の方が適任だろ?」

「まあ……そういうことでしたら」

 じ、次席……!?

 よく見ればリアさんの左胸にはステラのブローチが飾られています。

 まさかの成績2位と最下位の組み合わせなんですね……。

 イジワルです。

「エメさん……でしたわね。お先にどうぞ、私が防御致しますわ」

「え、ええ……分かりました」

 うう……周囲の視線が刺さります。

「おいおい、ステラとラピスがいきなりやり合うなんて、どういう展開だよ」

「ラピスの子、返り討ちに遭うんじゃない?」

「いや、最小威力って言ってんだからそれはないだろ」

「手違いってあるじゃん」

 クラスメイトさんの変な期待を裏切るようで申し訳ないんですけど……そんな展開は多分、起こりません。

 わたしはリアさんに向けて手をかざします。

 魔法を展開するための魔力を溜めていきます。

フレイム!!」

 ――ぽしゅっー。

 炎は秒で鎮火。

 手の平から放たれたのは、煙だけでした。

「……」

「……」

 ええ、感じますよ。

 皆さんの目が点になっていることを。

 特にリアさんが一番面を食らっていますね。

「ええっと……冗談、ですわよね?」

「……本気、です」

 そうなのです……わたし、まだ初級攻撃魔法すらうまく扱えないのです。

 たま~~~~に、成功しますけどね。マッチ棒くらいの火ですけど。

「おお、すげえなお前。魔法適性ゼロだな。どうやってこの学園に入学したの?」

 隣にいるヘルマン先生は素直に驚いていました。

 やめてください、そんな珍獣を見るような目でわたしを見ないで下さい。

「ぷっ……」

 と思っていたら、何やら笑いを堪えるような声が……?

「ぷぷっ、あははははっ!私、フレイムすらまともに展開できないお方は初めて見ましたわ!流石はラピス、抜群の説得力ですわ!」

 リアさんがお腹を抱えて笑っています……。

 ちょっとバカにされているような気もするけど、さっきの無言の間よりはマシかなぁ……。

「あ、あはは……そ、そうなんです。わたし、まだ魔法上手く使えなくて……」

「上手く使えない!?これはそんなレベルのお話じゃないでしょう!はっきり言って貴女、無能確定ですのよ!!」

「で、ですから、これから頑張って習得しようと……」

「悪いことは言いません、お辞めになった方がいいですわ。この年齢で初級魔法すら使えないのでは、魔法士になることは夢のまた夢。お時間を無駄にするだけでしてよ」

 む、ムチャクチャ言われてる……。

 でもステラのリアさんが言う事だから、説得力あるしなあ……。

 悔しいけど、言い返せない……。

「ちょっとリア・バルシュミューデ!!あんた言い過ぎじゃない!?」

 そんな間を割って入ってきたのは、我が愛しの妹シャルでした。
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