勇者だけど暗殺されそうになってます。In現代社会

ニャニャオ丸

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プロローグ的なもの。

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 魔王を倒すことが勇者の役割であるのならば、私は勇者だ。

 いや、勇者だったというべきかもしれない。

 なぜならば、かつて「砂漠の悪魔」と言われた男は恐怖に歪ませた眉間に銃弾を受けて倒れているからだ。

 異世界であれば話は別だろう。

 「世界の半分をやろう」と勧誘するものがいるらしい。もしくは「どちらかが死ぬ、その前に。盃をかわさないか」と最後の晩酌に誘われることもあった。

 また、別のパターンとして騙し討や道連れ、政治的勝利。HPの尽きるその時まで、薬草の苦さを噛みしめるものもいるらしい。

 だから、そう。

 便器の下にあるスペースで恐怖に震えていた「悪の枢軸」は魔王だったのか。

「作戦名ブレイバーズ」

 世界各国への無差別非正規戦の黒幕。その世界の敵となった男の暗殺任務。

 しかし、彼が魔王でなかったならば。そう、俺は「魔王」を打ち倒すものではない。勇者ではない。

 魔王は堂々としたものである。

 その経験則が地響きを立てて崩れる。身体がグラグラとするようだ。



★★★

 オスプレイのキャビンの中にはチームの中の3人が足を延ばしている。

「しかし、私の能力は……」
「どしたん、アサルト。あいかわらず暗いなー。お手柄首やないの」

「いつものことじゃないの。それにアーチャー。あなたと違って彼は繊細なのよ、ね」

「そうなん、自分は繊細でないってか。そやけど、もう作戦も終わり。やから、守秘義務も終わりやないの。だから、パーっとな。こうして苦楽をともにした仲間、腹を割りたいんよ。具体的にいえば俺の可愛いすぎる娘の写真を早く見せたいんだよ。そう絶対褒めるから、誰もが絶対褒めるはずだから。な、見たいだろ、な」

「だから本業の情報局の真似事かしら。それにあなたに子供はいないでしょ、87%の確率でね」

「おいおい、同業者かよ。なんてな。俺はしがない猟師だよ。東京には外来種の害獣が多いんだよ」

「貴方が猟師なら、害獣の眉間には穴があきそうね。けど奇遇ね。私も東京よ。外資系の販売コンサルタントをしてるの」

「あの情報処理能力を使ったコンサルなら引く手あまただろうな。どうや、うちの猟友会でも仕事してみないか」

「なに言ってるの。外来種の気持ちを知りたいのかしら。どうせ今回みたいに問答無用の作戦なんじゃないの」

「いや。それだけじゃなくて。元飼い主の気持ちとかもね」

「考えとくわね」

「調べとくの間違いやろ。まぁ、期待しないでまってるよ。敵対だけは勘弁な」

 本当に勘弁してほしいものだ。

 日本から3人参加してるスペシャリスト。二人はおそらくスパイとか、そういう人種だろう。

 一般人の俺だけが、このピリピリした2人の会話についていけない。まぁ、いつものことだ。

 しかしそれは、かっこをつけて寡黙ぶっているわけではない。愛想が悪いわけではけしてないのだ。

 けれど、今回の会話はなんとなく意味が掴める。俺が染まってしまったのか、彼らが作戦成功に浮かれているのかはわからない。

 細かい固有名詞はわからないけど……つまり、ヘッドハンティングってやつだろう。

 なぜ裏切りは絶位NGな職種の人に勧誘をしているのか。それには理由がある。

 一週間後。私達は死ぬ。

 証人保護プログラムとかいうやつらしい。組織犯罪の証人が、報復から逃れるために新しい戸籍が作られるとかいったか。

 文字通りのリセットをすることになるので、悪名だけでなく功績も失うことになる。
 魔王派の残党に狙われるとはいえ、本来は任意で行われる制度のはずだ。

 だが、今回は強制だ。確かに理屈は理解できる。

 メンツだ。

 魔王に対する完全勝利。そのためには報復で勇者たちが殺されるのはとてもマズイらしい。そして敵に殺されるくらいならば事故でしんでほしい。

 なるほど理解はした。納得もした。したが、喜んで身を投げ出せるわけではない。愚痴の1つや2つ言いたくなるのだ。

 __ホントにやってらんないよ。参加も強制、後始末も強制。今まで積み上げてきたキャリアがパーになるんだよな……。

 異世界帰りなのだ、一般的には立派なキャリアをもぅているわけではない。しかし、自分で積み上げてきたものには強い想い入れがある。

 中学で長期の休学、そしてそのまま社会人となった学歴。インチキ霊能力者とトレジャーハンターのキャリア。

 死んだことになり失くなるのはやはり惜しいものだ。

 来週にひかえる死因は事故死。帰国して身支度した後、アメリカで行われる合同記念訓練でヘリコプターが墜落する予定だ。

 だから今後の身の振り方を相談しているのだろう。文字通り第二の人生を。

 だがいつも思うが、もう少しはっきりとはなしてはくれないものだろうか。今後の相談なら俺も混ぜてほしいのだ。

 やはり作戦参加者とはいえ、出身部門が異なると壁があるのだろうか。

 ……なんの能力なのかって。あれだ。「あそこらへんに人の気配がします」って感じの特殊技能で通している。

 異世界はファンタジーだった。スキルとジョブのゲームのようなシステムがあった。

 魔力の回復が僅かな現代で使えるのは基礎能力だけ。

 それを説明するのにちょうどよかったのがこれだ。

 おれの幽霊ゴーストが話しかけてくれる……みたいなことを言いいながら人の入っている部屋を当てるマジシャン。そんな人が流行っていたので便乗したのだ。

 そして、能力を使いながらトレジャーハンティングに精を出したのだ。

__思い返すと最近の事のように感じられる。あの魔王討伐の冒険に戻りたい。

 インチキ霊能力者としての活動の頃思っていたことだ。それはきっと、世異世界の冒険に比べて現実世界が色あせて見えたのだろう。

 しかし帰還後は、生活が落ち着くと退屈な日常に心が折れそうになる。そしてスリルを求めるために危険なことワクワクすることに首を突っ込みながら迷走している。

 この作戦参加は事実上の強制だった。しかし、逃げようと思えば方法はいくらでもあったのだ。

 異世界に召喚
 ↓
 魔王討伐……(5年かかった)
 ↓
 帰還……(したが、1年たっていた。)
 ↓
 中卒
 ↓
 インチキ霊能力者
 ↓
 トレジャーハンター
 ↓
 勇者、再び!


 こんなにもスリルを求めてしまうのは、帰還後の生活に満足できていなかったからなのだろう。

 しかし、その時の自分の選択は仕方がないと諦められる。

 それもこれも、異世界での副業サブクラスが移籍探索者であったからだ。

 使える魔法は探索魔法だけ。その中で魔力の負担が小さい基本能力がマップなのだ。

 この能力でどうしろというのだろう。

 これが回復師ヒーラーの『診断』や、商人の『品質鑑定』、魔法使いの『思考加速』であったならば、他にも道があったのではないかと何度も思うものだ。



★★★

「そろそろ種子島宇宙センターの上空です」

 機長が声をかける。

 キャビンには窓がない。そのため現在地は機長の声だけが頼りなのだ。しかし私は違う。だからわかったのだ。マップ越しにみえる現在位置が公海の上だということに。

「あら、アサシン。急に操縦席に乗り込もうとしてどうしたのよ。悩みがあるなら聞きましょうか」

 そういった彼女の声は途中からかすれていた。なぜならコックピットに人はいなかったからだ。窓越しに、海に向かうパラシュートの花が咲いているのが見える。

 そして次の瞬間。

 日本からの参加者ののるオスプレイは爆発四散したのだ。
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