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第三部【後編】
27 対異能戦4
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照の顔面が飛散した血飛沫で真っ赤に染まる。
照は何もしていない。もとより彼の異能は人を操ることであり、対象者の力量を超える力は出すことができず、ましてや身体を捻じ切るなどそんな芸当ができる訳がないのだ。室長が異能を発動させた形跡はない。これは別の誰かの異能によるもの―――。
そしてまた、兵士たちが捻じり殺される前に《アブソリュート・エンペラー》が解除されたことに照は気付いていた。
答えは一つ、再びデバイスによって異能が封じられたのだ。
「よう、動くなよルーキー」
マークに銃口を向ける照の後頭部に銃口が突き付けられた。飄々としたこの声にはもちろん聞き覚えがある。
「デバイスが一つとは限らねぇぜ。敵も一人とは限らねぇ……、勉強になったか?」
西寺直人は嘲るように口を歪めた。
「直人さん……、なにもこんな惨たらしい殺し方しなくてもよかったんじゃないですか?」
照が零した皮肉を直人は鼻で笑い返す。
「お前がそれを言うか? 俺は別に悪意がある訳じゃあねぇんだ。俺の《チャイルドプレイ》はじゃじゃ馬でな。制御が効かないんだよ。ほとんど0か1、オンかオフしかない。本当はお前も捻り潰してやりてぇんだが、そうもいかねぇ……、全くストレスが溜まるぜ。いやはや、それにしても室長、ひどい有様ですねぇ。なんとか間に合ってよかった。まさかこんなに早くこの場所を探り当てるなんてコイツを舐めてましたわ」
後頭部に銃口を押し付けられたままマークは勝利を確信したように口角を上げ、薄く笑みを浮かべた。
「ああ、八重山照の異能は唯一無二だからな……、生け捕りにできたことを神に感謝しなくては……」
「しかし、デバイス一つで最強から最弱に成り下がるなんてまるでアメリカンヒーローだな……。さあ、早くその銃を降ろして床に落とすんだ、ルーキー」
「ふ、くく……、くっくっく……」
直人を真似て照は嘲るように笑った。
「なんだ? なにか面白いことでも思い付いたか?」
「いやあ、滑稽だなと思いましてね」
「ふん、お前がか?」
「ええ……、そうですね。アナタの存在に気付かなかった自分に腹が立ちます。室長の忠告に従わなかった自分にもね。しかし、既にデバイスをギられていることにすら気付かないアナタの姿はホントに滑稽です」
視線を落とした直人は照の左手にデバイスが握られていることに気付いた。
「なんだとッ!?」
反射的にジーンズの右ポケットに直人が触れた瞬間、
「デバイスが二つとは限りませんよ」
照は体を反転させて発砲する。弾丸は直人の右の骨盤辺りを、ジーンズの右ポケットに入っているデバイスごと貫いた。
「ぐぅっ!」
直人は足を抑えながらよろめき倒れる。
「くッ!」
手錠がハメられた両手をマークが振り上げた直後、照は彼を制するように片手を高く上げた。
「動かない方がいい。いや……、〝動けるものなら動いてみろ〟の方が正しいかな?」
心拍を抑制され、動くことも呼吸することも禁じられた二人は目の前に君臨する少年を、引きつった顔で見上げていた。
少年は掲げていた手を降ろして胸に当て、恭しく頭を下げながら口元をニヤリと歪める。
「ようこそ、《アブソリュート・エンペラー》の領域へ。さあ……、皇帝主催の宴を始めましょう」
照は何もしていない。もとより彼の異能は人を操ることであり、対象者の力量を超える力は出すことができず、ましてや身体を捻じ切るなどそんな芸当ができる訳がないのだ。室長が異能を発動させた形跡はない。これは別の誰かの異能によるもの―――。
そしてまた、兵士たちが捻じり殺される前に《アブソリュート・エンペラー》が解除されたことに照は気付いていた。
答えは一つ、再びデバイスによって異能が封じられたのだ。
「よう、動くなよルーキー」
マークに銃口を向ける照の後頭部に銃口が突き付けられた。飄々としたこの声にはもちろん聞き覚えがある。
「デバイスが一つとは限らねぇぜ。敵も一人とは限らねぇ……、勉強になったか?」
西寺直人は嘲るように口を歪めた。
「直人さん……、なにもこんな惨たらしい殺し方しなくてもよかったんじゃないですか?」
照が零した皮肉を直人は鼻で笑い返す。
「お前がそれを言うか? 俺は別に悪意がある訳じゃあねぇんだ。俺の《チャイルドプレイ》はじゃじゃ馬でな。制御が効かないんだよ。ほとんど0か1、オンかオフしかない。本当はお前も捻り潰してやりてぇんだが、そうもいかねぇ……、全くストレスが溜まるぜ。いやはや、それにしても室長、ひどい有様ですねぇ。なんとか間に合ってよかった。まさかこんなに早くこの場所を探り当てるなんてコイツを舐めてましたわ」
後頭部に銃口を押し付けられたままマークは勝利を確信したように口角を上げ、薄く笑みを浮かべた。
「ああ、八重山照の異能は唯一無二だからな……、生け捕りにできたことを神に感謝しなくては……」
「しかし、デバイス一つで最強から最弱に成り下がるなんてまるでアメリカンヒーローだな……。さあ、早くその銃を降ろして床に落とすんだ、ルーキー」
「ふ、くく……、くっくっく……」
直人を真似て照は嘲るように笑った。
「なんだ? なにか面白いことでも思い付いたか?」
「いやあ、滑稽だなと思いましてね」
「ふん、お前がか?」
「ええ……、そうですね。アナタの存在に気付かなかった自分に腹が立ちます。室長の忠告に従わなかった自分にもね。しかし、既にデバイスをギられていることにすら気付かないアナタの姿はホントに滑稽です」
視線を落とした直人は照の左手にデバイスが握られていることに気付いた。
「なんだとッ!?」
反射的にジーンズの右ポケットに直人が触れた瞬間、
「デバイスが二つとは限りませんよ」
照は体を反転させて発砲する。弾丸は直人の右の骨盤辺りを、ジーンズの右ポケットに入っているデバイスごと貫いた。
「ぐぅっ!」
直人は足を抑えながらよろめき倒れる。
「くッ!」
手錠がハメられた両手をマークが振り上げた直後、照は彼を制するように片手を高く上げた。
「動かない方がいい。いや……、〝動けるものなら動いてみろ〟の方が正しいかな?」
心拍を抑制され、動くことも呼吸することも禁じられた二人は目の前に君臨する少年を、引きつった顔で見上げていた。
少年は掲げていた手を降ろして胸に当て、恭しく頭を下げながら口元をニヤリと歪める。
「ようこそ、《アブソリュート・エンペラー》の領域へ。さあ……、皇帝主催の宴を始めましょう」
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