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第102話 ディープラーニング

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「どっちの川から流れてきたのかしら……?」
ウィレナはJに問いかける。
――一度クリアした調査パートだ
メインクエスト:右と左の川を調査せよ
『馬車と一緒に落ちたのなら何か痕跡が残っているはずだ。それを探してみよう。』
Jは河原にある流れ着いた木材に近づき腰を落として調べる。馬車の車輪の一部のようだ。そこからあたりを見回すと右手の川の方に木材が点々と散らばっている。そっちの木材も調べてみると乗っていた馬車の意匠が施された梁が落ちている。
『どうやらこっちから流されてきたらしい』
「そう、なら進みましょう。」
 Jたちは全力ダッシュで右の川に進む。河川敷に沿って進んでいくと川の反対側に洞窟が見える。入り口にはゴブリンが複数匹徘徊している。
――もう巨人の小鎚は持ってるからこの洞窟は無視する。
――このままレーヴェリオンの城に言ったらどうなるの?
――バリアがあって通れない。
――そうだったわね。
Jたちは洞窟を右手に見ながら川岸を遡上していく。しばらくすると、ウィレナが話しかけてきた。
「だいぶ歩いてきたわね……」
――イベントスキップ。
Jが移動するとそこから3メートルほど離れた先の位置をキープしつつウィレナが移動する行動に変更する。
――以前だとここで「ウォールトワイスランニング」を行って移動したけど、今回もバグ技使うの?
――いいや、もうバグ技よりも素の移動速度の方が早いから、使わない。このまま全力ダッシュで村まで向かう。
Jは川上に向かって走り始めた。ウィレナと流れ着いた場所から大分遡上している。坂道も急勾配になってきている。村へと続く道まであと少しだ。と言う状況の中、Jはその川岸を滑るように登り始めた。全力ダッシュで移動をしているとようやく馬車で通った道にたどり着く。
「見て、立札があるわ。」
『左:タール渓谷 右:ジマリ村』
「村まであと少しだと思うわ。馬車の速度から考えると歩いて4分の1日ほどかしら。」
Jとウィレナはジマリ村へ全力ダッシュを進める。道中、野良野盗が現れたりもするが、二人の移動速度に追い付けずすぐに振り払うことが出来た。
――「ウォールトワイスランニング」よりちょっと遅い気がするんだけど。
――安定を取って通常移動しているんだ。今まで完璧に成功させていたけど、失敗すると無駄に時間を食ってしまうからな。
ジマリ村に到着すると住民が駆け寄ってくる。
――イベントスキップ
サイロにてJが囚われウィレナが攫われる。Jの手足は拘束されていない。扉は頑丈で叩いてもびくともしない。
 Jはサイロのサイロの壁のレンガの隙間に指を掛けた。
クライミングのようにサイロの壁を上っていく。先ほど食事はしていたため体力ゲージは最大だ。飼料の取り出し口は板が打ち付けられており外すことが出来ない。一番上の詰め込み口から外に出る必要がある。
レンガがはがれて凹凸が見えている場所を探りながら上へ登っていく。そして詰め込み口まで到達しそこから外へ出る。外には牧草を投げ入れるための足場が組まれており、Jはその足場を伝って下に降りていく。
しばらく走ると村長の家にたどり着いた。村長の部屋は2階にあるため、Jは近くに生えている木を登り、枝を伝って窓からの侵入を試みる。村長の部屋に入ると1階から物音がする。
「どうぞどうぞ!兵士の皆さん!この肉は1頭の牛からほんの少ししか取れない貴重な肉にございま」
――イベントスキップ
 Jは村を後にする。
――この後は通常ルートならタラサを仲間にするんだが、魔族ルートは基本的に味方キャラを仲間にしない。
――なぜ?
――イベントを進めると味方キャラが全員的になるからだ。その分敵も増えて時間がかかる。それに1週目で味方だったキャラを惨殺するところを見たくないだろ?
――そうね。見たくないわ。
――だから仲間にするのはウィレナだけだ。
――ウィレナは殺すの?
――いや、ウィレナは殺す必要はない。
――よかった。この後はどこに移動するの?いきなり王城?
――ああ、レーヴェリオンの城にカチコミをかける。その前に城とは反対側の「デシモ村」に行く途中と村でフラグメントと馬を手に入れる。
Jはジマリ森林を迂回して北東へ移動する。道中は最初の村の周辺というだけあって魔物の数も少なく、エンカウント率も低い。Jは特に苦戦する様子もなく敵を全力ダッシュでスルーし続け、森の丘上の起伏やいりくねって露出した木の幹を乗り越え、森の中を進む。しばらく進むと、森の中央に巨大な樹木が現れ、その幹の洞に蔦が絡まり、隙間から光が漏れている。Jはその樹木に近づき、ハンマーで蔦を薙ぎ払った。すると中からフラグメントが現れ、Jはそれに触る。
 Jの目の前が暗転し、明転する。すると映像記録が視界に流れ出した。
高校の教室らしき部屋で月音と日葉がこちらを見ている。月音はどうやらヌルのプログラミングをしているようだ。日葉は月音のプログラミングを監修しているみたいだった。日葉は視野外からやってきた一人の生徒に声をかける。
「おはろん勝湖。」
月音は気づいて勝湖と呼ばれた生徒に挨拶をする。
「おはよう白鳥さん。」
「おはよー日葉、沖兎さん。今日もヘルツちゃん作ってるの?」
「そだよー。ちょっとずつだけど喋れるようになってるんだ。」
「すごいわね。ちょっと話させてもらえる?」
「いいよ。ディープラーニングはたくさんした方がいいしね。」
「天ぷらにんにく?」
「ディープラーニング!」
「ふふふっやっぱり二人とも面白いわね。」
「いやぁ褒められると照れるでございますよ。」
「日葉、褒められてないから。」
白鳥勝湖と呼ばれた生徒がこちらに向かって話しかける。
「こんにちは、ヘルツちゃん。私は白鳥勝湖。」
「こんにちは、私はヘルツ。白鳥さん。初めまして。」
「すごい!本当に返事した!」
勝湖は目を丸くした。同級生がAIを作っているなど考えてもみなかったのだろう。半信半疑での話しかけだったが、予想外の返答に少し戸惑っているようだ。そんな面食らった顔をしている。そんな勝湖に日葉が話しかける。
「ふふーん。どうだ!すごいっしょ!」
その後、3人でこちらに話しかける楽しい会話が続いた。
 Jの目の前が再び明転し、ジマリ森林の巨木のが目の前に映し出された。
――あの勝湖って言う子、どこかで会った記憶があるんだが……
――知ってるわ。
――なんだって?
――そういうの「ナンパ」って言うんでしょ。
――いや、そういう意味じゃない。気のせいかな……まぁいいか、次のフラグメントまで行こう。
Jは巨木を回り込み先に進む。森の丘上の起伏やいりくねって露出した木の幹を乗り越え、森の中を進む。そして数十秒全力ダッシュを行うと、森を抜け開けた広場にやって来た。
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