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第60話 世界樹へ

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Jは十分になった持ち金で目の前にある素材屋で素材を買う。
「いらっしゃい。ここは素材屋だ。いいもの揃ってるよ。」
恰幅のいい店主がJの対応にあたる。
『ドラゴンの鱗を56枚、キマイラの筋線を99本、ゴブリンの爪を16枚、スライムの体液を……』
Jは必要な素材を購入し、金貨を払う。金の心配は必要ない。
「毎度ありがとうよ!」
Jは続いて隣にある武器屋に立ち寄る。細身の店主が対応に当たる。
「やあ、ここは武器屋だ。強い武器揃ってるよ。」
『アサルトナイフ、ウィップロープ、黒鋼の大盾をくれ。』
Jは代金として金貨30枚を店主に渡し武器を購入する。続いてさらに隣の防具屋を通り過ぎ鍛冶屋に向かう。
「おう、よく来たな。武具、防具の強化なら任シェロ。」
Jは鍛冶屋店主にパイルバンカー、タラサのグレネードランチャー、先ほど購入したアサルトナイフ、黒鋼の大盾を手渡しし、メニュー画面を開き強化対象を選ぶ。グレネードランチャーはタラサがドールハウスから出てきて鍛冶屋の設備を使って弄っている。
――パイルバンカーの静音性と装填速度のスピードアップ、装弾数の増加。グレネードランチャーの争点速度上昇、装弾数増加、射程距離を延長。アサルトナイフの攻撃力を増強。黒鋼の大盾の防御力を上昇、軽さを軽減して強度を最大に。これが最終武装だ。
――やっぱり服は着ないのね。
――ああ、ダメージは戦闘不能後のリジェネで回復させる。俺さえやられなければゲームオーバーにならないからな。
Jは鍛冶屋に代金を払い反対側にある教会に向かって走る。
Jは教会へ入ると神父に先ほどのダンジョンで手に入れた『細剣:カーススパーダ』
を渡し、呪いを解いてくれるように頼んだ。神父は何やら真言を唱えた後、カーススパーダの刀身を指でなぞる。すると指でなぞった部分が光り輝き、漆黒だった刀身が白銀へと
変貌する。Jはカーススパーダを失い、『細剣:レリジョンスパーダ』を入手した。
Jはメニュー画面を開き、パーティーメンバーにそれぞれ武器を装備させる。
――Jはパイルバンカーを装備しなおし、タラサには強化グレネードランチャー、マウガンには『巨大剣:龍断頭の大直剣』と『黒鋼の大盾』、シェロには『強化アサルトナイフ』、ウィレナには『細剣:レリジョンスパーダ』を装備させた。
――これ以降装備のアップグレードはしない。この装備でラスボスまで走る。
強力な武器を手に下着姿の一行は世界樹へと向かう。
Jは世界樹のふもとにある関所に向かい、道を塞いでいる兵士に話しかける。すると兵士は槍を門の前に構え、ここから先は通さないとジェスチャーを行った。
「ここから先は世界樹。死と隣り合わせの危険地帯だ。強者でなければ死ぬだけだ。君にその資格はあるのか?」
『ああ、試してみるか?』
『金ならある』
『今はない』
『俺たちの仲じゃないか。通してくれよ。』
Jは2番目の選択肢を選んだ。
『金ならある』
「そうか、それだけの金を稼ぐとは、中々の強者とみた。いいだろう。通るがよい。」
――下着姿なのにね。
ウィレナ、タラサ、シェロ、マウガンはドールハウスから出て世界樹を見上げる。
タラサは世界樹の幹を見上げながら口を開く。
「いつも遠くから見てたけれども、近くで見るとこんなにおっきいんだ……」
「ええ、私たちの世界の天井の落盤から防いでいるといわれている立派な樹よ。ティーア皇国からではこんなに近寄れないものね。」
「ティーア皇国で誕生する赤子は皇帝陛下に忠誠を誓うと共に世界樹のように立派に育つようにと願いを込める儀式があるのだ。」
「まさか僕が世界樹に登るだなんて夢にも思わなかったな。」
『さぁ行こう。』
Jたちは関所を抜け世界樹のふもとへ行く。世界樹は直径1km、天井までの高さは3kmで1kmごとに『下層』『中層』『上層』と呼び方が変わる。上に行くごとに世界樹に巣を作っているモンスターが変わっていき、より険しくなっていく。
Jはまずふもとの小屋に立ち寄る。そこにいる老人の登頂者に話しかけた。
「ヒヒヒ、此度の登頂者は老若男女、バラエティに富んだパーティメンバーじゃな。よし、これを持っていくがいい。」
老人はそういうと小屋の奥から背中に背負えるくらいに折りたたまれた梯子をJ達に渡す。
「これは選別じゃ、登頂者にはこれを渡すのが儂の役目でな。気を付けてお登り。くれぐれも落下するんじゃないよ?」
ウィレナは老人に礼を言う。
「ありがとうお爺さん。」
「いえいえ、あんたみたいな別嬪さんに礼を言われるほどの者でもないよ。儂はここで登頂者を見送ることが仕事だからね。あんたみたいな別嬪さんが落ちてきたときは儂が死体の処理をすることになるからね。ヒヒヒ……」
「なんか気味悪そうなじいちゃんだね」
タラサがJ達ににか聞こえないような声で話しかける。それに続きシェロが老人に答える。
「それではお爺さん。僕たちは世界樹を登ります。」
「ええ、いってらっしゃい。」
マウガンは会釈して外へ出る。ウィレナはタラサに手を引かれ退出し、シェロが後に続く。Jだけが残り、外に出ようとすると老人がJに対し意味深に語り掛ける。
「ヒヒヒ……儂は多くの登頂者を送り出してきた。そして何人も上層に到達することなく落下、もしくは魔物に食われてしまった。お主を見ているとどうも血が湧きたつ。落ちてくれるなよ?若造殿。」
Jはそのまま老人を一瞥し退室する。
Jにマウガンが話しかける。
「さて、ここからは戦闘以外では極力一人で登ったほうがよいでしょう。落下のリスクを避けるためにも皆でカルトゥムのドールハウスに入っておいた方がいい。」
「カルトゥム浮いてるもんね。」
「皆でカルトゥムのドールハウスに入ってそれで上まで行くのは出来ないの?」
「それは難しいと思いますぞ。世界樹には多くの飛翔モンスターが生息しています。飛行中に食われるのが関の山でしょう。」
「そうなのかい?それは残念だね。」
「そうだったんだ。アタシも知らなかった。」
「開発者が知らないって……」
『俺が登ろう、皆はドールハウスに入っていてくれ。』
「我らの命預けます。」
「落ちたら承知しないからね。」
「いざとなったら僕がJの代わりになるよ。」
「じゃ、よろしくね。J。」
ウィレナ、マウガン、タラサ、シェロがドールハウスに入る。
Jはカルトゥムを後ろに連れて世界樹に挑む。
先人たちが遺したロープを手すりに、世界樹に絡みつく蔦を反時計回りに回っていく。
――長い旅になりそうね。
――そうでもないさ。
Jは蔦に沿ってその上を走っていく。そうすると蔦が上に伸びて行き止まりになっている個所に出くわす。Jは背負っている折り畳み梯子を展開した。すると6メートルほどの梯子が出来上がり、それを蔦にかけ登る。再び緩やかな登りの蔦に着地すると、梯子を引き上げ折り畳み背中に背負う。Jは蔦に沿って左手に樹皮を見ながら世界樹を登り続ける。再度、蔦が途切れた行き止まりにぶち当たる。Jはシェロとドールハウスから入れ替わり、シェロに憑依する。J(シェロ)は樹皮に手をかけすいすいと壁をよじ登っていく。ボルダリングの要領で、手が掛けやすい飛び出た樹皮を選択し、指をかけ、しっかりと足を壁から飛び出た樹皮にのせ、主に下半身の力を利用して登っていく。やや右斜め上に進んでいくと、蔦の切れ目から世界樹内に穴が開いている個所にたどり着いた。Jはそのまま穴の中に入っていく。
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