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第43話 ウィレナとの再会

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「さぁJ,シェロ外に出ようよ。こんなところいつまでも居たくない。」
タラサはJとシェロを引き連れて外に出る。キャナリはJが背負って転ばないように歩いていく。崩壊した館の扉をギギギッと開けると、荒れ果てた街道を走ってJ達に近寄ってくる大人が一人。
「う……うん……っ」
キャナリが目を覚まし、薄くぼんやりした視界から近づいてきた人物を一瞥すると。
「お父さん!」
キャナリはJの背中から飛び降り近づいてきた父に走って向かい、互いに抱きしめ合った。
「キャナリ!心配かけたね!もう大丈夫だ!」
その姿を見てタラサはじんわりと瞳に涙を潤ませて二人の光景を見る。その姿に自分と既にいない父親を重ね合わせているようだった。
――ちなみにキャナリを助けないで後で来るとキャナリにもモンスターが乗り移って暴走している。
――感動が台無しね。
「Jさんたちもありがとうございます!マオスに囚われているときにはどうしようかと思いましたが……!」
「うん!タラサお姉ちゃん!お父さんを助けてくれてありがとう!これ、お屋敷で拾ったの!あげるね!」
キャナリはタラサに掌に乗る程度のドリル状の落果遺物を渡した。
「ありがとう!これ、アタシのロケットに使えそう!」
ロケットのパーツを手に入れた。
「少ないですがこちらもどうぞ、街の住民からの気持ちです。」
金貨8枚を手に入れた。
「タラサお姉ちゃん、また会おうね!」
キャナリとエンテに手を振られJたちはテルティウムの街を後にする。
Jはすぐさまワープホールを入り口で使い、王都の鍛冶屋前に移動する。
――ウィレナの処刑まであと3日だ。これからウィレナ救出に向かう。
――ようやくなのね。
Jは憑依アイテムを使いシェロと入れ替わる。J(シェロ)とタラサをドールハウスに入れ、城門の横へと移動する。城門には左右に一人ずつ警備兵が立っており、周囲を警戒している。その左右には剪定された茂みがあり、Jはそこにしゃがんではいりこんだ。そして警備兵が反対側を向いた瞬間に茂みから外に出て、開いている城門に入り込んだ。
――今見られてなかった?
――シェロの憑依時の固有スキルで、しゃがんでいるときは敵に認識されにくくなるんだ。
そして見つかる直前にアラートが鳴るから、それが鳴ってから隠れても問題ない。つまり、シェロ操作時ではほとんど見つからないって考えていい。更にシェロは鍵開けのスキルでほとんどの鍵を開錠できるから、城内のギミックをほとんど無視できる。
――だからシェロを先に仲間に加えたのね。
――ああ、行くぞ。それに今仲間にしておかないと、後で仲間にするまでに時間がかかってしまうからな。
――それはどういうこと?
――後で分かるよ。
Jはシェロの体を操作して場内に潜入していく、生垣に身を隠しながら巡回している兵士をスルーしていくが、時折堂々と、兵士の正面をしゃがみ状態で横切っていくが見つからない。後ろを浮遊しているカルトゥムにも気づいていないようだった。
Jはそのまま城の中庭を左手に進み、城の裏庭方面へ移動していく、そして城の側面まで移動し、Jは扉の鍵を鍵開けスキルを駆使し、ピッキングのように細い金具を背中の何もない空間から取り出し、鍵穴に挿し込み幾度か上下させると鍵がガチャリと開いた。
Jはそのまま扉の先、王城地下へと続く階段を下りていき、階段を下りた先にある扉を開けた。扉の先は、石づくりの牢屋が左右に続いており、中の住人はどれも年老いた老人のようだった。老人たちはJたちを見ても一言も声を上げず、ただ黙ってこちらを一瞥している。
――ラトロ監獄とはえらい違いね。
――あそこは強盗や殺人、窃盗とかの犯罪者が多いが、ここに捕まっているのは政治犯や政争に巻き込まれたり敗れた人たちだ。だから、それなりの知能を持っておとなしくしている。
――だから姫もここにいるのね。
Jが左へ先へ進んでいくと、他の牢屋より大きな牢で、天窓からの明かりが一人の女を照らしている。女の両手は壁にから鎖で繋がれており、その両足にはボーリング玉ほどの鉄の球が鎖で繋がれており、逃げられないようになっている。その姿はJと別れた時と同じ下着姿のままだった。その女が捕らえられている牢屋の鍵を開け、中に入る。
『ウィレナ姫』
Jは女の名前を口に出して呼ぶ。
「え……誰……?」
声もおぼろげにウィレナは返事をする。
ずいぶん衰弱しているようだが、それは肉体的な面よりも精神的に参っているようだった。
『俺だ、Jだ。助けに来た。』
「J……?ずいぶん見た目が違うようだけど……」
――そりゃそうよね
JはタラサとJ(シェロ)をドールハウスから出し、憑依を解除した。
「J……!」
ウィレナはJの姿を見て涙を流す。
だが、その顔はすぐにうつむき、Jを拒否する。
「王都での噂は聞いてる?私、この国の姫じゃなかったの。偽物だったのよ。そんな私を助けても何の見返りも払えないんだから。」
『俺はお前の直属の家来だからな。俺はこの国の姫に仕えたんじゃない。ウィレナ、あんたに仕えたんだ。だから助けに来た。』 
「J……ありがとう……!」
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