22 / 124
第22話 遺跡ダンジョン
しおりを挟むごく普通の町。その町に、魂を悪魔に捧げた者がいると聞き、町は混乱に陥ったが、その者を町の者の手で裁くことで団結した。
そして、月が昇って日付が変わった時、町の人は誰が悪魔に魂を売った者なのか思い出した。
「あの子だ。」
金髪に青い瞳、笑顔が可愛らしいと評判だったスノー。しかし、その評判は作られたものだったのだ。
「俺たちが、あの罪人の娘を好きなはずがない。今まで、なぜあれを好きだったのか・・・答えは簡単だ。」
悪魔に魂を捧げたのは、スノー。それが町の決断で、すぐに町は動いた。男衆を集めて、町のはずれの小屋に向かう。
「こんな不気味な場所に住むやつを、今まで何の疑いもなく接していたとは。」
「それが悪魔の力だろう。」
「だが、気づかなかった罪が問われる。教会に知られる前に・・・いや、神父が来たということはもう知られているのか。」
「しかし、神父様は言っていた。この町のものの手で終わらせろと。なら、今からでも遅くはない。」
ぎらついた目で、男衆はスノーの家の扉を睨みつけた。そこからは何も言わず、一人の男が、工具を使って扉をこじ開ける。
むわっと異臭が外に漏れだして、男たちは顔をしかめた。
「さすが、悪魔・・・いや、魔女の小屋と言ったところか。」
「ものすごい匂いだ。この匂いは・・・」
ランプを持った男が、口を押えて先に進む。すると、声にならない声を上げた。
「これはっ・・・!?」
「どうした?なっ・・・」
男たちは、目の前に広がる光景を目にして、吐き気がした。その光景は、自分たちがなそうとしたことと変わらないというのに。
床に散らばる金髪、見開かれてむき出しになっている青い瞳。白い肌は、もう血の気など通っていない、青白く、その胸に赤い血が広がっていた。
それは、明らかに死んでいるスノーだ。
「あぁ、スノー・・・もう終わりだよ。」
スノーの死体の横で、心底残念そうに少年がつぶやく。
あまりの異様な光景に、頭に血が上っていた男衆も顔を青白くさせた。
「今、追いかけるよ。もっと、君を楽しみたかったけど。」
少年は握りしめていたナイフを持ち上げて、自分の胸に刃を向けた。
「何を・・・」
「やめるんだ!フォグ!」
少年の背後で、青白く光る青年が叫んだ。その青年に今更気づいた男衆は、声も出せずにその光景を見守った。
「スノー、愛しているよ。」
「フォグっ!」
青年の言葉など聞こえていないようで、少年は青年を振り返ることもなく、ナイフで自身の胸を貫いた。
それは、呪われたナイフ。少年の力でも、骨をたやすく突き破り、心臓までその刃を届かせた。絵に装飾されたどくろが、にたりと笑うのを、男衆は見てしまった。
男衆が気付いた時には、青年は姿を消していた。
そして、念のために確認した2つの体は、完全に死体だった。
町は、少年を英雄としてまつり、スノーを魔女としてさらすことにした。そうしなければ、罪に問われると思ったのだ。
丁重に葬られた少年と野ざらしにされ、見るも無残な姿となったスノーは、当然離れ離れとなり、共に墓に入ることはなかった。
それを、遠く見守っていた神父は、踵を返して笑った。
「ケタケタケタ!最高だな。最高だ。これからも楽しませてくれよ、かわいいおもちゃたち。」
新たな契約を果たした神父の姿をした悪魔は、そう上機嫌に笑って消えた。
悪魔と契約した魂は、悪魔に食われて輪廻の輪を外れる。しかし、2人の魂は別の世界へと転生し、命を繰り返すことになる。
これは、2人の呪われたゲームの序章だった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる